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DXプロジェクトの「PoC(概念実証)」を成功させるには?

レンテックインサイト編集部

DXプロジェクトの実効性の判断や、コストの検証、問題の発見などに際して欠かせないプロセス「PoC(Proof of Concept:概念実証)」。結果次第でプロジェクトの進退が大きく左右されるため、やり方のポイントを押さえておきたいと考えるDX推進者は多いでしょう。 本記事では、PoCを実施するにあたって注意すべきポイントを、プロトタイピングとの違いや「PoC貧乏」という概念をご紹介しつつ解説してまいります。

PoCとは? プロトタイピングとの違いは?

多くのDXプロジェクトにおいて、PoCは“新システム・技術の導入において描いたゴールが達成されるかを、用意したモデルケースを通して検証する”ために実施されます。「それでは、プロトタイピング(試作品による検証)とどう違うのか?」と疑問を抱いた方もいらっしゃるでしょう。 両者の違いは、検証したいと考える対象の具体性にあります。 PoCは“概念”実証であり、要件や技術の実現性が未確定な段階で企画の方向性を決定づけるために行われる場合もあります。一方、プロトタイピングは試作品を作って効果を検証することに主眼が置かれており、要件定義や技術の実現可能性検証は完了していることを前提とします。ただし、ITシステムの導入では、実質的に「PoC=プロトタイピング」となる場合も多々あります。 PoCを行うことで机上検証だけでは気づけない問題をあぶりだせるだけでなく、新システム・技術導入のイメージを実行者やその関係者が具体化しやすくなり、スムーズな導入にも寄与します。

「PoC貧乏」が発生する原因とその回避法

PoCにおいて重要なのが“なぜ行うのか”というPoC自体の目的の定義です。皆さんは「PoC貧乏」という言葉をご存じでしょうか? PoCを実行しデータを取得してレポートを確認したところでパタリとプロジェクトがストップし、またPoCを……と無限ループに陥ることでPoCのためのコストばかりがかさむ状態を指した言葉です。 ──なぜ「PoC貧乏」は発生してしまうのでしょうか? その背景には下記のような理由があると考えられます。

  • 本格導入に踏み切るための指標が明確に定められていない
  • DXプロジェクトに対する本気度が社内で一致していない
  • PoCの対象や実行方法に問題がある

このように、PoCの前段階における定義が不十分なことが「PoC貧乏」の大きな原因となります。先に述べた通り、PoCは要件定義や技術の実現性が決まっていない状態で実施される場合もあります。しかしそのような場合でも、PoCを通してどのような効果を得たいのか、何のためにPoCを行うのかについてプロジェクトチームで共有しておくことは不可欠です。 また、ベンダーによりPoCのフェーズまでは無料で提供されるため、「とりあえずPoCまで」と気軽に実行され、ベンダー側の「PoC貧乏」が発生するケースもあるようです。PoCが無料といっても、社内の人的コストは常に発生しており、PoC疲れやDXの停滞に直結するため、その状態も早急に改善されるべきでしょう。 PoCは「実用化」の前段階であるという点を強く意識し、なるべく定量的な指標を設けて結果を次のフェーズに繋げられる準備を講じましょう。また、ユーザビリティなど定性的なポイントの検証においても、なるべく具体的なイメージを言葉や図にしておくことが推奨されます。 ただし、“PoCの回数を増やすこと=悪”ではありません。むしろ、PoCはその目的や検証内容に応じてさまざまなケースで比較し、さらに条件を変えてPDCAサイクルを回すことで価値を発揮します。大切なのは、DXプロジェクトの成功に近づくという大きな目標とPoCの目的が一致していることなのです。

「価値」を検証するPoV、「ビジネス」に着目するPoB

PoCに関連してDX領域で注目を集めるワードに「PoV(Proof of Value:価値実証)」があります。PoVは導入するシステムの「価値」により重きを置いた検証であり、評価指標もそれに応じて設けられます。手段を限定した上で実現可能性や得られる効果、かかるコストなどに着目するPoCとは異なり、PoVは施策を通して“やりたいこと”に着目し、配置変更などほかの手段とも比較した上でその必要性を検討します。 いわば従来のPoCにもあった“実際の価値”という本質的な部分の検証を切り出し体系化したのがPoVの概念といえるでしょう。PoCの前後でPoVを実施することで、より広い視点から施策を捉え、企業にとっての真の価値実現につなげられると期待できます。 また、新たなビジネスモデルやビジネスの立ち上げという観点から市場可能性や費用対効果について検証するフェーズを「PoB(Proof of Business:ビジネス実証)」として設置することもあります。

PoCを通して得られたデータや経験は、最大限の活用を

DXプロジェクトの成功を左右するフェーズかつ、ボトルネックにもなりやすいPoCをテーマに押さえたいポイントを解説してまいりました。PoCを通して得たデータや経験を、組織内外の別データと掛け合わせることで新たに見えてくるものもあるはずです。PoC貧乏を回避しつつ、あくまでトライアルという利点を生かしてPoCから得られるものの最大化に努めましょう。

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