「バーティカルSaaS」という言葉をご存じでしょうか。バーティカルSaaSはインターネットを通じてサービスを利用するSaaSの一種で、徐々に市場が拡大しています。汎用的なSaaSの市場が成熟期に入ったことで、次は特定の業界・業種向けに特化したバーティカルSaaSの時代が到来すると予測されています。
本記事では、盛り上がりの兆しを見せているバーティカルSaaSがどういったものかを解説した上で、製造業向けのバーティカルSaaSについてご紹介します。
バーティカルSaaSとは、業界・業種に特有の課題を解決するためのSaaSです。「垂直」を意味する「Vertical」が由来となっており、特定の業界・業種にとって使いやすくなるように開発されています。
バーティカルSaaSに対して、業界・業種を問わず使えるSaaSはホリゾンタルSaaSと呼ばれます。こちらは「水平」を意味する「Horizontal」が由来となっており、あらゆる企業にとって必要な機能が提供されています。ホリゾンタルSaaSの具体例は次の通りです。
国内外を問わず、現在のSaaS市場はホリゾンタルSaaSが中心であり、多数のサービスが提供されています。ホリゾンタルSaaSを提供するベンダーには上場企業や知名度の高い企業も多いため、社会に定着したといえるでしょう。そのため、今後は特定の業界・業種に特化したバーティカルSaaSが普及していくと考えられています。
現在の日本でも、すでにさまざまなバーティカルSaaSが提供されています。
One Capital株式会社が公開している「バーティカル SaaS カオスマップ 2021」によると、医療向けのバーティカルSaaSが26サービスと最も多く、飲食向け(13サービス)、不動産向け(11サービス)、物流向け(11サービス)、宿泊施設向け(10サービス)と続いています。未上場のスタートアップ企業が提供しているサービスのみが対象ですが、どの業界・業種が注目されているのかがよく分かるのではないでしょうか。
バーティカルSaaSの開発には、ターゲットとする業界・業種に関する深い知見が求められるため、参入障壁が高い傾向にあります。そのため、競合が少なく、その業界・業種におけるシェアを取りやすいのが特徴です。一方で、その業界・業種でしか利用されないので規模が大きくなりにくく、知名度も上がりにくいというデメリットもあります。
このような特徴から、バーティカルSaaSの市場はスタートアップ企業の参入が多く、日々新たなサービスが生まれています。バーティカルSaaS企業の上場が国内外で増えつつあるので、今後も盛り上がりを見せていくでしょう。
昨今では、製造業向けのバーティカルSaaSも続々と登場しています。営業・マーケティング・調達・生産管理・人材育成など、さまざまな用途に特化したバーティカルSaaSが提供されており、製造業の中で存在感を増している状況です。
例えば、「アペルザクラウド(aperza cloud)」は製造業に特化した営業・マーケティング支援ツールとしてシェアを拡大しています。顧客データの管理やメールマーケティングといった一般的な機能を有しているだけでなく、製品カタログなどのコンテンツ管理、eコマース、製品紹介ページの作成、といった製造業ならではの機能が充実しているのが特長です。
「スキルノート(SKILL NOTE)」は製造業に特化したスキル管理システムであり、作業者一人一人のスキルの見える化や人材育成計画の策定、適切な人材配置などを実現するサービスです。多くの企業が抱えている技能継承の課題を解決する手段の一つとして、注目されています。
ほかにも、MAツールの「MRC(マーケライズクラウド)」、見積管理システムの「RFQクラウド」、ペーパーレスシステムの「カミナシ(KAMINASHI)」など、注目のバーティカルSaaSが数多くあります。自社の抱えている課題をITで解決したいと考えている方は、情報収集してみることをおすすめします。
今やITサービスの代名詞にもなったSaaSは、ホリゾンタルからバーティカルに移行しつつあります。今後もあらゆる業界・業種向けでバーティカルSaaSが開発され、IT化が進んでいくことでしょう。
SaaSには、初期投資を抑えて低コストで導入できる、場所を問わずに利用できるなど、多くのメリットがあります。企業がIT化を進める上で役に立つので、自社の課題解決に役立つバーティカルSaaSに注目し、導入を検討してみてはいかがでしょうか。