コロナ禍でテレワークが一般化したことで、ワークフローシステムを採用する企業が増加しました。業務効率化やペーパーレス、ガバナンスの強化など、上手に利用すれば企業に多様なメリットをもたらしてくれるワークフローシステム。
その導入に必要な5ステップや、既存の体制の見直しや業務システム全体のグランドデザインといった押さえたいポイントについて解説します。
ワークフローシステムの導入は、以下の5ステップで行いましょう。
新しいシステムの導入にあたって現場から反発の声が上がることは少なくありません。その根本にあるのは、現状完成されている業務フローが変更されることへの不安です。現場で実際に利用する社員の声を聞き、ワークフローシステムの導入後変更するポイントと、変更するべきでないポイントを把握しましょう。調査の結果、そもそも必要のない承認が何重にもわたって行われていた、承認が滞るボトルネックが存在する、などの問題が発覚することも多々あります。
ワークフローシステムの導入は、ワークフロー改善のまたとない機会でもあります。ヒアリングをもとに、現状のワークフロー(As Is)と理想のワークフロー(To Be)を図示化しましょう。こうして要件を可視化することで、多数のワークフローシステムから、自社に合った一つを選定することが可能になります。
また、同時に気を配りたいのが、各部門長にワークフローシステムが現場に定着するよう協力してもらえる体制作り。せっかく理想のシステムを導入しても活用されなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。コンピューターを不得手とする社員もいる中で、苦手意識を持たず前向きにシステムを活用してもらえる気運作りは、自社に合ったシステムの選定と同じくらい大切なことです。
既存ワークフロー改善にあたって押さえるべきなのが、以下のポイントです。
まずは社内の書類・帳票類を洗い出しましょう。業務の遂行における現場の裁量が大きい日本メーカー。ボトムアップのカイゼンが生まれやすいという利点がある代わりに、そのときどきの判断でWord、Excelなど異なるフォーマットで書類が作成されたり、現場の暗黙の了解で承認フローが付け加えられたりと、ワークフローがブラックボックス化しがちです。
実際にどのような運用が行われているのかを可視化したうえで、各書類に紐づける形で承認フローや問題点といった情報をまとめましょう。さらに、承認の滞りに対してアラートは行われているのか、SFAやERPなどほかのシステムとどのように結びついているのかについてもまとめます。
製品を選定する前に「As Is」「To Be」を検討すべきなのは、無駄な承認フローを削減するなど、アナログな対策の方がシステムの導入以上に効果を発揮する場面が多くあるからです。システムの導入という具体的な変化を実現するのが優先事項に感じられがちですが、制約がある中で適切な製品を選ぶためにも、まずは現状の分析に力を入れることが推奨されます。
稟議書や見積依頼書、休暇届など、既存の書類はワークフロー以外のデータベースやシステムでも取り扱われるでしょう。そのため、業務システムのグランドデザインとワークフローシステムを結びつけて考えることは不可欠になるはずです。
そこで問題となるのが、ワークフローシステムとほかのシステムとの連携性・拡張性です。手作業で連携させることになっては、理想の環境が実現できているとは言えないでしょう。ここで考えられるのが、以下の三つの選択肢です。
ワークフローを含めて業務システムがまとめて提供されるサービスは増加し、個々のシステムの連携可能性も高まってきています。とはいえ、どのようなファイルをインポート・エクスポートし、どのようにして連携・保管するのかについては詳しくチェックしておきたいところです。
ワークフローシステムの導入・定着を図るにあたって押さえたいポイントについて解説してまいりました。すべてのワークフローを一気にITシステム化するのではなく、まずは経費回りだけなど、一部で導入し、成功体験を踏まえて徐々に対象の範囲を広げていくことも可能です。自社の規模や既存のワークフローを踏まえた改革を実現していきましょう。