昨今の半導体不足によって、自動車業界は大きな影響を受けています。その理由は、自動車が今では半導体の塊ともいえる存在になっており、あらゆる用途で半導体が使われているからです。しかし、パソコンやスマートフォンのイメージが強い半導体が、自動車の中でどのような役割を担っているのかを知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、自動車における半導体の用途をあらためて解説します。
半導体はパソコンやスマートフォン、家電製品といったデジタル機器に欠かせない部品ですが、現在では、車載半導体として自動車にも数多くの半導体が使用されるようになっており、その数は年々増え続けています。実際に、現在市販されている高級車にはマイコンと呼ばれる小型のコンピュータが100個以上搭載されており、自動車をデジタルで制御しているようです。
ここでは、自動車のどこで半導体が使われているのかを、情報系・車体制御系・走行制御系の三つに分けて解説します。
自動車にはさまざまな情報機器が搭載されており、それらを制御するために半導体が使われています。
これらの情報機器には当初から半導体が使用されており、私たちにとっても馴染みのある存在です。しかし、昨今の情報機器は目覚ましい進化を遂げており、半導体の重要性がさらに高まっています。
例えば、現在のカーナビやカーオーディオは情報(インフォメーション)と娯楽(エンターテインメント)の両方を提供するインフォテインメントシステムとして進化しつつあります。具体的には、スマートフォンとの接続・メッセージの送受信・音楽再生・ニュースや天気予報の取得・レストランの予約といったさまざまな機能を備えており、快適なカーライフを実現してくれるものです。また、後述する制御系のシステムと連携することで、運転支援や安全性の向上においても重要な役割を果たすようになっています。
車体制御系では、自動車の車体全般を制御したり、モニタリングしたりするために半導体が使用されています。
車体制御系でもすでに多くの半導体が使用されていますが、今後は車内の快適な環境を維持するためのセンサーや、EVのバッテリー状態のモニタリングなどにも半導体が使用されていくと考えられます。ゆくゆくは、自動車のすべてがデジタルで制御されるようになるかもしれません。
現在では、自動車の走行制御においても多くの半導体が使われるようになりました。事故に直結する走行制御には高い精度と信頼性が求められますが、技術の発達によって半導体の性能が向上し、安全性が担保できるようになったためです。半導体は次に挙げるような走行制御で使用されています。
もともとは運転者の支援や燃費向上を目的として走行制御が行われていましたが、今ではADAS(先進運転支援システム)による自動ブレーキや自動追従走行なども実現できるようになりました。2021年11月からは新車への自動ブレーキ機能の搭載が義務化されており、ADASが自動車の標準機能になりつつあります。ほかの用途と同様に、走行制御系でもさらに多くの半導体が使用されるようになるでしょう。
すでに半導体の塊となっている自動車ですが、今後はさらに用途が拡大すると考えられています。その理由は、昨今の自動車業界のトレンドである「CASE」において、半導体がキーパーツとなるためです。
例えば、コネクティッドでは自動車がIoT化し、車両の状態や周辺の道路状況などをセンサーによって取得することになります。自動車が巨大なデバイスと化して、便利なサービスが次々に生まれていくでしょう。また、自動運転では車両周辺の状況を多数のセンサーによって認識し、AIなどが適切な判断をした上で車両を制御することになります。
「CASE」のような新しい技術を実現するためには、今まで以上の半導体が必要です。実際に、完全な自動運転車に搭載される半導体の量は、従来の車の8倍〜10倍になるとも言われています。
ここまででご紹介した通り、現在の自動車ではあらゆる部分に半導体が使われています。今後、自動運転のような新しい技術が普及していけば、さらに半導体の搭載数は増えていくでしょう。
自動車の進化は半導体が支えていると言っても過言ではありません。車載半導体の技術開発に期待していきましょう。