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TOC(制約条件の理論)とは? DX時代に重要な理由と三つのキーワードを解説

レンテックインサイト編集部

我が国の産業における、DXへの注目は2018年の経済産業省によるDXレポートの発表ごろから本格化したように思われます。それから数年たち、DXへの本格的な取り組みを進める企業が増加した一方で、所詮は“真の効果”に繋がらない一過性のブームではないかという批判も増加してきました。
さて、それでは“真の効果”とは何なのでしょうか?
それについて考えるカギとなるのが、画期的なマネジメント手法として日本でもブームを巻き起こした「TOC(制約条件理論)」です。
本記事では、TOCとは何か、DX時代になぜ重要なのかについて詳しく解説します。

TOCとは? DXの目指す“真の効果”は?

TOC(Theory Of Constraints:制約条件理論)は、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士が1984年出版の自著『The Goal』で提唱した企業活動のマネジメントアプローチです。『The Goal』は架空の企業ユニコ社で、工場所長を務めるアレックス・ロゴが、3カ月で赤字の工場を立て直すという小説仕立てのストーリーでTOCについて分かりやすく紹介し、ベストセラーに。日本では2001年に邦訳版が出版されました。

原著の発売から邦訳版の出版までに16年以上の歳月がたっているのには、「現場レベルの改善活動において超一流の日本メーカーに、全体最適の鉄則であるTOCを教えてしまっては世界経済が破綻してしまう」と言う懸念がエリヤフ博士の中にあったからだという逸話があります。

この逸話でも触れられている通り、TOCは全体最適の手法であり、『The Goal』の第一ステップは企業の目標(=ゴール)は「お金を儲ける」ことに集約されると主人公アレックスが気付くところから始まります。

すなわち、冒頭の問い──DXの“真の効果”は何か?──その答えも「お金を儲けること」に最終的には行きつくでしょう。当然のことと思われるかもしれませんが、アレックスの工場の迷走は生産性やコストといった定められた個別指標にとらわれるばかりにゴールを見失うことから始まっていました。

同じ現象が、DXを企業の利益に上手く繋げられないケースのいくつかでも生じているのではないでしょうか。

TOC実践のポイントとなる三つのキーワード

それでは、TOCの具体的な手法について見ていきましょう。

TOCを理解する上で、頭に入れたいのが以下の三つの用語です。

  • ボトルネック
  • スループット
  • CCR(Capaticy Constraint Resource:生産能力制約リソース)

ボトルネックとは、求められる仕事量をリソースが下回る工程のこと。ボトルネックは“その製造工程全体の生産能力を決定づける”という点を理解することがTOCの第一歩となります。例えばカッコ内の生産能力を持つ、工程A(10個/時)、工程B(5個/時)、工程C(7個/時)を経て製品が生み出されるとしましょう。この場合、ボトルネックは工程Bであり、その生産能力を高めなければ他の工程で生産効率が高まったとしても、工場全体の生産能力アップは実現されない場合があるのです。

スループットは製品の「販売」を通じて得られる利益の割合です。TOCでは売上高から変動費を引いて利益を導き出す標準原価会計と異なり、在庫は資産として扱われません。そのため、過剰在庫にもかかわらず利益が増加するという会計上の罠を回避し、「儲けること」にポイントをおいて考えられるのがスループット会計のポイントです。

CCR(Capaticy Constraint Resource:生産能力制約リソース)はボトルネックには該当しないものの、オーダーの増加や人員の配置換えなど変化が起これば処理能力が限界を向かえる可能性のある工程を指します。CCRをボトルネック化させないために工夫を講じることがTOCでは求められます。

このように、スループット会計を通じて企業のゴール(=儲ける)に重点を置き、ボトルネックとCCRといった制約条件(Constraints)を見つけ、継続的な改善に取り組むことで全体最適に繋げるのがTOCの基本となります。

TOC×DXの第一歩として押さえたいポイント

長い歴史を持つTOCについてこの記事でご紹介したのは、DXのゴールが部分最適に終始することを防ぐための処方箋として今でも非常に優秀だと感じられるからです。

スマート工場の実現において、工場データのセンシング・見える化は真っ先に思い浮かぶ取り組みでしょう。取得した情報をデータウエアハウスに集積し、ダッシュボードで分析する段階まではある程度確立されたメソッドがあります。

そこで問われるのが、どのデータをどう分析し、何を変えるのに使うのかということです。『The Goal』において、期間が限られる中でボトルネックをあぶり出すため、各ワークセンターの余力を計算したいと考えたものの、データの品質不足という問題が発覚する場面がありました。結果として、現場のトラブル解消に従事する社員に部品の不足状況についてヒアリングすることによって作中では問題は解決されたのですが、そもそもデータベースで各ワークセンターの生産能力が管理されていることが一番の解決策のはず。

ボトルネックを見つけ出すという視点で、工場データの取得・活用に取り組むことはTOC×DXの第一歩となるでしょう。

ぜひ、この記事をTOC入門の第一歩に

今や生産性向上の基本理論として製造業以外でも導入されているTOCについて解説してまいりました。ドラムバッファーロール(Drum-Buffer-Rope:DBR)法、バッファーマネジメントなど、TOCに紐づく具体的手法は他にもあります。
本記事をきっかけに、企業の全体最適に繋がる同手法をより深く理解していきましょう。

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