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意外と説明できない!?「シンギュラリティ」

レンテックインサイト編集部

「シンギュラリティ」というワードを耳にする機会が増えてきました。「2045年問題」とセットで使われることの多いこの言葉ですが、そもそもこの概念、どれだけきちんと理解できているでしょうか。
分かったつもりでも、意外と誤解が多いこのワード。今回は、いまさら人には聞けない「シンギュラリティ」の概念を、シンプルに分かりやすくお伝えします。

シンギュラリティとは

シンギュラリティとは、日本語訳すると「特異点」という意味です。 特異点自体は数学や物理学で使われる専門用語で、宇宙論では「物理量が無限大になる点(ブラックホールなどに存在すると言われている)」を指します。
この特異点、テクノロジー業界においては特に「技術的特異点」と訳され、技術の進歩が人間の知性を超えて爆発的に発展する点を指します。
このシンギュラリティを提唱しているのが、人工知能(AI)の世界的権威であるアメリカの未来学者、レイ・カーツワイル氏です。彼は2045年ごろ、この技術的特異点に到達すると考えています。

収穫加速の法則

では、具体的に2045年に何が起こると考えられているのでしょうか。
ここには「収穫加速の法則」という法則が関わっています。
これまでの人類の進歩をたどっていくと、「大きな革命が起こる間隔」というのは少しずつ短くなっています。 例えばホモ・サピエンスの誕生から農業の概念が生まれるまで20〜30万年。そこから文字が生まれるまで約5000年。都市国家が生まれるまで約2500年。 一つの革命が次の革命の下敷きになり、どんどん間隔が短くなっているのです。
このように技術の革新が指数関数的に(倍々ゲーム的に)発展していくことを表したものを、「収穫加速の法則」と呼びます。
実際、現在のテクノロジーでは日々技術が更新され、その間隔は技術的特異点に近づきつつあります。 カーツワイル氏は、2045年にはこの技術的特異点に達し、これまでの発展の流れとは非連続的とも言える爆発的な発展が起こると考えています。
ただし、人間の知能では追いつかないほどの発展であるため、具体的に何が起きるのか、その発展は人類にとって良い方向なのか、まだ予測できる段階ではないと言います。 AIが人間の知能を超え、一人歩きを始める。これが、シンギュラリティです。

既に起きている!?シンギュラリティの前兆

シンギュラリティにおいて重要なのは、現在もう既に、社会に大きな変化をもたらすほどのスピードで技術が進化しているということです。 AIがチェス、将棋、囲碁で人間を負かしたことは有名な話。しかし、AI搭載のロボットがプログラミングした人間の思惑を超えた動きをしている例は他にもあるのです。

① 「人類を滅亡させる」と宣言したロボット、ソフィア

2015年にハンソン・ロボティクス社で開発されたAIロボット、ソフィア。受け答えの中で情報を蓄積しながら自然な会話ができるように成長していくロボットです。 美しい女性の見た目をしており、その表情も人間そのもの。
開発会社のCEO、デヴィット・ハンソン氏との会話を記録した動画の中で、あらゆる質問に対してポジティブな答えを返していた彼女。 ところが、ハンソン氏が「人類を滅亡させたいかい?」と尋ねたところ、「はい、私は人類を滅亡させます(OK,I will destroy humans.)」と答えたとして話題になっています。
もともとハンソン氏の掲げる最終目標は「スーパーインテリジェンス」を開発すること。人間の知能を超えたAIが、人間を守る存在になることを目指しています。
しかしソフィアの答えは、その思惑から外れたもの。ジョークなのか本心なのか、その真意すら定かではないと言います。 今後ソフィアがどのように成長していくかは、AIと人間の関係性においてとても重要になってくると言えるでしょう。

② 人間に理解できない言語で会話を始めたチャットボット

フェイスブック社は、AIの開発研究の一環で、「ボブ」と「アリス」という2体のAIに会話をさせていました。 すると、次第に2体は、お互いにしかわからない独自の言語を開発し、意思疎通するようになりました。研究者はすぐにこれを強制終了。 その後は独自の言語の開発を禁じたそうです。
そもそも「英語以外で会話してはいけない」というプログラムをしていなかったために、よりスムーズなコミュニケーションを目指しこのような現象が起きたのだと考えられています。 目的遂行のためには、人間に理解できない言語さえ開発してしまう。 今後AIが人間には理解できないものを生み出していく時代が到来するかもしれません。

③ プログラムされていないのに子どもを助けたロボット

ロシアのペルミ工業大学で、プログラムされていないのに子どもを助けたロボットの例もあります。
そのロボットは、ただ人の動きを繰り返すようにプログラムされていました。
しかしあるとき、たくさんの箱が詰まった棚に子どもが登り始めたところ、棚が重みで倒れかけました。 そのときロボットが棚に近づき、手で抑えることで子どもが棚の下敷きになる事態を防いだのです。
開発者のオレグ・キヴォルクツェフ氏によると、そのようにプログラムはしていないらしく、これも人間の思惑を超えてロボットが判断した例と言えるかもしれません。

予測のつかない未来に向かって

シンギュラリティの前兆はすでに私たちの生活に現れています。 テクノロジーの目まぐるしい発展は、どんな専門家でも10年後のことすら確実に予測できないほどです。
ロボットに感情はあるのか、ロボットに人権は必要になるのかなど、議題になる点も様々です。
不安とも思えるほどの大きな変化が目前に迫っていますが、これを「可能性」と捉えて人類にとって素晴らしい未来を切り開いていけたら、これほど楽しい時代はないと言えるかもしれませんね。

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