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半導体をとりまく地政学リスク

レンテックインサイト編集部

本記事では、半導体に関する地政学リスクをご紹介します。

現代のデジタル社会において、半導体はどの国にとっても欠かせない存在です。その結果、半導体は各国にとっての戦略物資となっており、さまざまな地政学リスクを抱えています。企業は半導体をとりまく地政学リスクを正しく理解した上で、もしもの時に備えて対策を取っておかなくてはなりません。

米中の対立

2018年頃から米中貿易摩擦という言葉をよく耳にするようになりましたが、その影響は半導体市場にも影響を与えています。

米中貿易摩擦の発端は、2018年の3月にアメリカのトランプ大統領が中国の鉄鋼製品などへの関税を引き上げたことです。トランプ大統領の目的は対中貿易赤字の解消であり、中国製品に関税をかけることで自国の製品を優遇しようとしていました。その後も、トランプ大統領はロボットや半導体といった中国製品へ次々に関税をかけていきますが、中国はこれに反発。最終的には関税のかけ合いになってしまい、2018年末頃には、アメリカは中国製品のほぼ半分に、中国はアメリカ製品の約70%に関税をかけるという結果になりました。

米中の対立は関税のかけ合いだけにとどまりません。アメリカは、2019年5月に中国の通信機器メーカーであるファーウェイへの輸出規制を強化しました。その主な理由は、中国政府と緊密に繋がっている可能性のある中国企業の製品を使うことにより、国家安全保障上のリスクが発生するのを避けるためです。ファーウェイの製品は5G関連で国際的に強い影響力を持っているため、アメリカがそれを懸念したとも言われています。

ファーウェイをはじめとする中国企業への輸出規制は、その後も続いています。その結果、中国企業はアメリカ製の半導体や最先端の半導体製造装置などを利用できなくなっており、他国からの調達や国産化を進めている状況です。

米中の対立は、日本企業への影響もゼロではありません。日本の半導体業界はアメリカと中国への依存度が高い傾向にありますが、今後米中の対立がさらに激化すると、二者択一を迫られる場面もあり得ます。そのような最悪の場面を想定した対策を考えていく必要があるといえるでしょう。

台湾の地政学リスク

半導体ファウンドリの最大手であるTSMCをはじめ、さまざまな半導体メーカーを有する台湾の地政学リスクは、半導体業界にとって無視できないものとなっています。特に技術力・生産力ともに突出しているTSMCには最先端の半導体製造が集中しており、TSMC、ひいては台湾の動向が半導体業界全体に大きな影響を与えている状況です。

各国は、サプライチェーンの寸断リスクなどを回避すべく、TSMCの工場を自国に誘致する動きを見せています。日本もTSMCの誘致を進めており、茨城県つくば市には研究拠点を、熊本県には工場を新設することが発表されています。新工場は、2022年に着工、2024年に稼働予定とされており、生産された半導体は主に日本メーカー向けに供給されていく見込みです。しかし、新工場で生産する半導体は数世代前の技術であり、最先端の半導体は引き続き台湾内で生産されていくと考えられています。

台湾が抱える大きな課題は、中国との関係です。台湾と中国の関係は歴代政権の方針によって大きく変わってきましたが、現職の蔡英文総統は中国の圧力に対する対抗姿勢を示しています。もしも今後、台湾と中国の関係が大きく変化するようなことがあれば、半導体業界も大きな影響を受けるかもしれません。

原材料の供給リスク

裾野の広い半導体業界においては、原材料の供給に関するリスクも存在しています。

例えば、日本は半導体製造に欠かせないシリコンウエハーで高いシェアを持っていますが、その原料である金属ケイ素はすべて輸入でまかなっています。金属ケイ素の主要生産国は、アメリカ・ノルウェー・オーストラリア・ブラジル・南アフリカ・中国など多数ありますが、コロナ禍のように世界中でサプライチェーンが寸断される可能性もゼロではありません。有事に備えて、複数の調達ルートを確保しておくといった対策が求められます。

また、直近で起こったウクライナ紛争の影響も考えられます。ロシアやウクライナは半導体製造で使われる原材料の一部を産出しているため、供給難によって半導体不足がさらに悪化するかもしれません。

もう一つ忘れてはならないのが、環境問題や人権問題にまつわるリスクです。昨今ではSGDsを中心に据えた経営に取り組む企業が増えており、環境問題や人権問題への意識が高まっています。2021年には、アパレル業界で綿の生産に関する人権問題が問題視されていましたが、似たようなことが半導体業界でも起こらないという保障はありません。

地政学リスクへの適切な対処が求められる

本記事でご紹介した通り、さまざまな地政学リスクが半導体業界には存在しています。企業は常に社会情勢に目を配りつつ、もしもの時に備えて対策を取っておかなくてはなりません。具体的には、サプライチェーンの再構築やローカライゼーションを進めていく必要があるでしょう。

半導体業界に限らず、昨今のビジネス環境は社会情勢によって大きく影響されます。あらゆる事象が自社のビジネスに影響する可能性があるため、今後も情報収集が不可欠となるでしょう。

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