ARが今注目されています。ARを利用したゲームや写真アプリが流行したことで一躍有名になった技術ですが、今後爆発的に普及すると予想されています。
そこで、今回はARの概要をあらためて説明し、活用事例や開発の環境についてご紹介します。
ARとはAugmented Realityの略で、日本語では「拡張現実」と訳されます。
現実の世界にコンピュータによって作られた情報や、仮想の世界を重ね合わせる技術です。
例えばCG(Computer Graphics)で作った仮想のキャラクタを現実の画像に重ね合わせることで、現実の世界にキャラクタが登場したかのような体験ができます。
ARはポケモンGOで一躍有名になりました。また、人間の顔に動物の鼻や耳などを重ね合わせることができる写真アプリも流行しています。これもARの応用です。
ARと似たような技術に、VR、MR、SRがあります。
VRは、Virtual Realityの略で、日本語では「仮想現実」と訳されます。
ヘッドマウントディスプレイやVRゴーグルと呼ばれる専用装置を装着することで、コンピュータが作り出した仮想世界の中に自分が存在するかのような体験ができる技術です。
現実世界との接点はなく、ユーザーが仮想世界に没入するところがARとは違います。
MRは、Mixed Realityの略で、日本語では「複合現実」と訳されます。
VRとARを複合した技術で、仮想世界と現実世界を重ね合わせた空間を自分自身も動き回ることができます。
例えばポケモンGOでは、モンスターに触れたりすることはできませんが、MRであればそのようなことも可能になります。
SRは、Substitutional Realityの略で、日本語では「代替現実」と訳されます。
現在見ている映像に、過去に撮影した映像を差し替えることで、過去に起きたことを現在起こっているかのように見せる技術です。
まだ実験中で応用事例も少ないのですが、たとえばドライブシミュレータなどでプロのドライバの運転を追体験することで、実際に運転しているような疑似体験をすることができます。
以上のAR/VR/MR/SRなどの技術を総称して、XRと呼びます。今後、これら以外の技術が登場する可能性がありますが、その際もXRの範疇に含まれることになります。
ARの応用事例はすでに多数あります。大きく5つの分野でよく利用されています。
ポケモンGO以外に、同じ開発企業のIngressという陣取りゲームが流行しています。またHADOというAR空間で戦える新しいスポーツもあります。
スマホやタブレットと組み合わせて3D画像を表示するAR教科書が実用化されています。またパイロットの育成など高度な技能訓練にも利用されています。
テレビのスポーツ解説で、水泳競技の先頭選手を示すラインや、ボールの動きなどが表示されるのは、すでにおなじみでしょう。 観光地でスマホをかざすと案内が出たり、伝統芸能を見ているとアプリに解説が出たり、ショッピング中に商品を写すと商品説明が出たりなどさまざまな事例があります。
ステッカーや名刺などにマーカー画像を登録し、それをアプリで読み込むと動画やサイトを表示する「AR印刷」という仕組みがあります。 二次元バーコードと似た技術ですが、二次元バーコードと違って、スタイリッシュにデザインできます。さらにARマーカー不要で、空間認識を行いAR表示させる、KudanSLAMという技術も登場しています。
物流、建設、医療などさまざまな分野で、ARを利用して業務をナビゲーションする事例が出てきています。 例えば倉庫でのピッキング作業では、ARゴーグルを通して荷物を見るだけで仕分け先が分かるシステムが実用化され、商品と伝票の間の目の行き来による時間のロスが無くなりました。
ビジネスへのさまざまな貢献が期待できるARですが、技術的なハードルを感じて、取り組みをためらう企業は多いかもしれません。 しかし現在では開発環境が整ってきており、ARの開発は以前よりも容易になってきています。
例えばアップルは、iOS機器専用のARKitという開発フレームワーク(容易な開発を可能にする環境)を用意しています。
グーグルもARCoreという開発フレームワークを用意しています。ARCoreを使えば、Androidはもちろん、iOSでも動作するアプリケーションが開発できます。
またゲーム用言語だけではなく、汎用言語のJavaにも対応しており、AR開発者の裾野が広がりそうです。
Amazon Sumerianは、必要なソフトウェアはChromeやFirefoxなどのWebブラウザだけという革新的なAR作成キットです。
またFacebook AR Studioは、FacebookアプリとMessengerアプリで利用できるARを開発するアプリケーションです。行えることが制限されている分、シンプルで扱いやすいツールになっています。
上記の4社以外が提供する開発環境では、米Snap社のSnapchat専用のAR開発ツールであるSnapchat Lens Studioがあります。同様の環境を提供する企業が今後も増えそうです。
すでに多くの事例があるARですが、その体験は単独ユーザーに閉じていて、仲間と共同で体験する「ソーシャル体験」を提供できていませんでした。
そのため爆発的な普及とはいえない状況でしたが、ARクラウドの登場で変わろうとしています。
ARクラウドとは、複数ユーザーでのAR体験を可能にする技術で、これによってソーシャル体験が提供できるようになりました。
ARクラウドは以下の三つの要件を備えています。
高度な技術が要求されるARクラウドですが、英Blue Vision Labs社がAR Cloud SDK(SDKはソフトウェア開発キット)の提供を開始し、アプリ開発が容易になりました。
以上のように、ARを取り入れた商品やサービスによるビジネスの拡大や、ARを利用した業務改善で大幅な生産性向上が期待できます。さらにARクラウドの登場で、爆発的な普及はより加速していくことでしょう。