2020年の後半から、世界的な半導体不足が続いています。2022年2月現在でも一向に収まる気配がなく、いつまで続くのかと不安に感じている人も多いでしょう。「産業のコメ」とも言われる半導体の不足は、製造業にも大きな打撃を与えています。
本記事では、今回の半導体不足の原因や影響に加えて、この状況がいつまで続くのかについて解説します。
半導体不足が問題視されるようになったのは、2020年の秋頃からでした。その主な原因は、2019年末に始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と考えられています。
半導体メーカー各社は、コロナ禍で半導体の需要が減少すると考えて生産や設備投資を抑える動きを取りました。実際に、世界経済は一時的に停滞し、都市のロックダウンや国家間の移動制限、工場の稼働停止によって、半導体の需要は減少しました。
しかし、2020年の4月頃から半導体の需要は急激に回復します。テレワークや巣ごもり消費によってパソコンやテレビの需要が急激に増加したことに加え、9月頃からは自動車業界からの需要が回復したことで、需要と供給のバランスが大きく崩れてしまったのです。半導体メーカー各社は急いで増産体制を整えようとしましたが、半導体の製造は難しく、そう簡単に生産能力を増強できるわけではありません。
そのほかにも、以下のような要因が重なって今回の半導体不足が起こったと言われています。
今回の半導体不足は、今までにないほどメディアなどで取りあげられ、注目を集めることになりました。その理由は、私たちの生活に直接影響が出るほど半導体不足が深刻化しているからです。
これまでにも、半導体不足といえる状況は何度か発生していました。しかし、当時は半導体不足の影響がIT業界などの特定の業界のみに留まっており、私たちの生活にまで影響を及ぼすことがないまま解消されてきたのです。
しかし今回は、自動車やパソコン・スマートフォン・家電製品・ゲーム機といった、私たちの日々の生活に密接に関わる機器にも影響が及んでいます。
例えば自動車の場合、半導体が手に入らないことで各メーカーの工場が減産を余儀なくされてしまい、従来なら1カ月ほどの納期のはずが数カ月待っても納車されないという事態になりました。また、スマートフォンに関しても、2021年の秋に発売されたAppleの「iPhone13」シリーズが、半導体不足によって1,000万台も減産すると報じられています。
半導体不足の影響は、製品が手に入らないというだけではありません。半導体不足によって材料や部品の価格が上昇しており、最終製品の値上げも相次いでいます。すでに一部のメーカーは法人向けサーバーの値上げに踏み切っており、あらゆるビジネスに影響を与える可能性があります。
では、今回の半導体不足はいつまで続くと予想されているのでしょうか。2022年2月現在では、2022年中には解消されるか、不足感が和らいでいくという意見が多数派となっています。
主な根拠として、半導体工場の稼働が安定しつつある点が挙げられています。上述した通り、半導体メーカー各社の工場はさまざまな要因で不安定な稼働状況にありましたが、2021年末頃からは安定した生産量を確保できているといいます。また、多くの半導体メーカーは需要の増加に応えるべく生産能力の増強に取り組んでおり、早いところでは2022年の夏頃から稼働開始できる見込みです。半導体の供給量が順調に増えていけば、不足感は和らいでいくと考えられています。
しかし、これはあくまでも現時点での予測であり、楽観視すべきではありません。例えば、新型コロナウイルスの新たな変異株が猛威をふるったり、何らかの理由で半導体メーカーの生産能力増強が遅れたりすれば、半導体不足が続くことになるでしょう。
また、今回のように深刻な状況には陥らないとしても、半導体はこれから慢性的に不足するという予測もあります。EV・自動運転・IoT・AI・クラウド・メタバースといった昨今注目を集めている技術は、いずれも半導体の働きが不可欠です。これらの技術の普及によって半導体の需要はさらに増加していきますが、需要の増加に対して供給が追いつかなければ、常に半導体が不足しているという状況もあり得ます。
2020年の後半から始まった世界的な半導体不足は、2022年2月時点では同年中に和らいでいくという意見が多数派です。しかし、ふとしたことがきっかけで需要と供給のバランスが崩れると、再び半導体不足が深刻化するかもしれません。半導体の供給状況は、あらゆるビジネスに影響を与えます。今後も半導体業界の動向にアンテナを張っておくことをおすすめします。