「半導体」といってもさまざまな製品があり、用途に応じて使い分けられています。ニュースなどで単に半導体という場合はIC(集積回路)を指すことが多いですが、IC以外にどのような半導体製品があるのかは知っておきたいところです。
本記事では、主要な半導体製品の種類やそれぞれの役割をまとめて解説します。
ディスクリート半導体とは、一つの素子が一つの機能を持っている半導体の総称です。ディスクリートは「別々の」や「個別の」といった意味の言葉で、そのまま個別半導体と呼ぶこともあります。
ディスクリート半導体は、単一の機能を持つシンプルな半導体であることから、規格化が進んでいます。複数のメーカーが同じ仕様で製造することもあるため、半導体製品の中では汎用品という位置付けです。後述するICも多数のディスクリート半導体を組み合わせて作られていることから、半導体産業全体を支える重要な存在であるといえます。
ここでは、代表的なディスクリート半導体であるダイオードとトランジスタについてご紹介します。
ダイオードは、電気の流れを一方通行にする半導体製品です。PN接合と呼ばれる構造を持っており、PからNの方向に流れる電流のみを通して、その反対はほとんど通さないという性質があります。ダイオードは構造や用途によってさらに細かく種類が分けられています。
トランジスタは、電気の流れをコントロールする半導体製品です。トランジスタが使われていない電子機器はないといえるほど、重要な役割を持っています。
トランジスタの役割は、小さい電気信号を何倍にも大きくする「増幅」と、信号に応じて電気を流す・止めるを制御する「スイッチング」です。特に「スイッチング」に関しては、デジタル回路における1(オン)と0(オフ)を表すのに使われているため、トランジスタがあらゆるデジタル技術を支えているといえます。
IC(集積回路)とは、複数の素子を一つのチップ上に集約することで、複雑な機能を持たせた半導体の総称です。ICよりもさらに素子数が多いものをLSI(大規模集積回路)と呼ぶこともありますが、現在では明確に分けることは少なくなっています。
ここでは、代表的なICであるロジックICとメモリICについてご紹介します。
ロジックICは、論理演算機能を持った半導体製品です。代表的なロジックICはコンピュータのCPU(中央処理装置)で、周辺機器を制御してデータを受け取り、そのデータを演算・加工してメモリに記憶する、結果を周辺機器に出力する、といった一連の動作を行います。
ロジックICは人の頭脳のような役割を持っており、電子機器が動くために欠かせない存在です。ロジックICが一度に扱えるデータの量と、データを処理するスピードによって、電子機器の性能は大きく影響を受けます。
メモリICは、データの記憶を行う半導体製品です。電源を切ると記憶内容が失われる揮発性メモリと、記憶内容が失われない不揮発性メモリの2種類に分けられます。
揮発性メモリの代表はコンピュータの主記憶装置として普及している「DRAM」で、CPUが作業するためのデータを一時的に記憶するために用いられています。不揮発性メモリの代表は高速でデータの書き換えができる「フラッシュメモリ」で、SSDやUSBメモリとして普及しています。
光半導体は、その名の通り光を扱う半導体製品の総称です。電気を光に変換する発光デバイスと、光を電気に変換する受光デバイスの2種類に大きく分けられます。
発光デバイスの代表はLED(発光ダイオード)で、照明やディスプレイとして幅広く活用されています。ダイオードの一種ではありますが、通常のダイオードとは違って複数の元素の化合物で作られており、電気が流れる際のエネルギーを光に変えやすい構造になっています。
受光デバイスの代表はフォトダイオードやフォトトランジスタで、カメラなどの光センサーとして活用されています。フォトダイオードは、PN接合部に光が当たると電気が流れる仕組みになっており、光の有無や強弱を検知できます。フォトトランジスタはフォトダイオードとトランジスタを組み合わせたもので、フォトダイオードから出た電気を増幅しています。
今回ご紹介した半導体製品はごく一部であり、このほかにも多種多様な製品が存在します。さまざまな半導体製品の働きによって、私たちの便利な生活が成り立っていることを再認識できたのではないでしょうか。半導体業界を深く知るために、これからも各製品についての理解を深めていきましょう。