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半導体業界におけるファブレス・ファウンドリとは?

レンテックインサイト編集部

IT Insight 半導体業界におけるファブレス・ファウンドリとは?

半導体業界では、設計はファブレス企業、生産はファウンドリ企業という形で分業するのが一般的です。最近では、もともと生産まで行っていた企業がファブレス化することも増えており、今後さらに分業が進んでいく可能性があります。半導体業界を理解する上で、ファブレス・ファウンドリについての知識は必須といえるでしょう。

そこで本記事では、半導体業界におけるファブレス・ファウンドリとは何かについて、あらためて解説します。

ファブレス・ファウンドリとは?

ファブレスは、直訳すると「工場(fabrication facility)を持たない」という意味になります。そこから、自社で生産設備を持たずに製品を生み出すメーカーや、そういったビジネスモデルのことを指す言葉として使われるようになりました。

ファブレス企業は、製品の企画・設計・マーケティング・販売などの機能に特化しており、製品の生産は他社に委託します。自社で生産機能を持たないため、生産設備への投資を抑えられる、製品の企画・設計に集中することで市場の変化に素早く対応できる、といったメリットがあります。

ファウンドリはファブレスの逆で、生産機能のみに特化したメーカーやビジネスモデルのことを指します。ファブレス企業はファウンドリ企業に自社製品の生産を委託し、ファウンドリ企業は生産した製品をファブレス企業に納品するという仕組みです。

ファウンドリ企業は生産機能のみに特化しているため、生産設備や技術開発への投資を行いやすく、高い製造技術を持っています。また、さまざまなファブレス企業からの委託をまとめて受ければ、自社の生産能力を効率的に活用して大量生産できます。ファブレス企業は、自社で生産するよりもファウンドリ企業に委託した方が高品質な製品を安価に生産できるので、双方にとってメリットがあります。

ファブレス・ファウンドリによる分業は、設計・生産も含めてすべてを自社で行う垂直統合型(IDM)と比較して、水平統合型と呼ばれています。

半導体業界における主要なファブレス・ファウンドリ企業は?

半導体業界では、1990年代からファブレス企業とファウンドリ企業による分業が行われています。主な理由は、半導体製品の開発サイクルが短く、かつ生産設備への莫大な投資が必要であったためです。これらの課題を解消するために、各企業は自社の強みに特化した形でファブレス化・ファウンドリ化を進めてきました。

半導体業界における主なファブレス企業として、Qualcomm・Broadcom・NVIDIA・MediaTek・AMDなどが挙げられます。2020年のファブレス企業の売上トップ10社はほとんどがアメリカか台湾の企業であり、直近では中国のファブレス企業も成長を続けています。

アメリカの市場調査会社であるIC Insightsの調査によると、IC(集積回路)の市場ではファブレス企業の売上高が安定して増加しており、2020年にはIC市場全体の約33%を占めています。IC市場ではファブレス企業の成長率がIDM企業の成長率を上回っており、今後もファブレス企業の存在感が増していくと予想されています。

一方、半導体業界における主なファウンドリ企業としては、TSMC、サムスン電子、UMC、GlobalFoundriesなどが挙げられます。特に、台湾企業であるTSMCはファウンドリ市場における世界シェアの50%以上を握っており、圧倒的な存在感を放っています。TSMCはすでに数百社のファブレス企業から委託を受けていますが、最近ではIDM企業からも一部製品の委託を受けるようになりました。TSMCの動向が業界全体を大きく左右するほど、半導体業界において重要な存在となっています。

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日本ではファブレス・ファウンドリは少ない?

世界中の半導体メーカーがファブレス化・ファウンドリ化を進める一方で、日本メーカーの多くは今でもIDMを続けています。実際に、日本では世界シェアを握るような有力なファブレス企業・ファウンドリ企業がほとんど見当たりません。IDMからファブレス化・ファウンドリ化へうまく移行できなかったことが、半導体業界で日本が没落した原因とまで言われています。

しかし、IDMにも次のようなメリットがあるため、一概にどちらが良いとは言い切れない部分もあります。

  • 設計と生産の両方のノウハウをすり合わせて、性能を最大限に高められる
  • 外注コストがかからないため、大量生産する製品はIDMの方が安価になる場合がある
  • 生産管理や品質管理がしやすい
  • 情報漏洩のリスクがない

半導体製品の種類によっては、今でもIDM企業のシェアが高い分野もあります。また、現在はファブレス企業・ファウンドリ企業の存在感が高まっていますが、IDM企業が復活する可能性もゼロではありません。情報セキュリティやサプライチェーンの問題が顕在化している昨今では、IDMの方が好ましいという意見もあるようです。日本の半導体メーカーが今後どのような動きを取るのか、注目されています。

半導体業界の産業構造を知れば、より理解が深まる

半導体業界について語る上で、ファブレス・ファウンドリに関する知識は最低限持っておきたいところです。主要な企業がファブレス・ファウンドリ・IDMのどれに該当するのかを理解しておくと、半導体業界に関する理解がより深まるでしょう。各企業の今後の動向に注目していきましょう。

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