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調達購買業務のDXはなぜ効果的なのか

レンテックインサイト編集部

IT Insight 調達購買業務のDXはなぜ効果的なのか

サプライチェーンの起点であり、QCD全てに深く関わる調達購買業務。製造業DXにおいて関心が高く寄せられている分野です。EDIの活用などは進んでいるものの、コストセンターとみなされる風潮もまだまだ残っており、その捉え方を刷新すべき分野でもあります。

そこで本記事では調達購買業務DXでできること、期待される効果についてわかりやすくまとめてまいります。

情報のやり取りが多い調達購買業務にとってデータは大きな味方となる

調達購買業務のDXでキーワードとなるのは、他部門のDXとも共通する以下のような言葉です。


  • データ活用
  • 自動化
  • 脱属人化

この中でも注目したいのが「データ活用」です。
設計・製造・技術など各部門からの直接・間接材の調達依頼を請け、要求事項をまとめる。複数社に見積もり依頼を行い、見積もりや提案を持って比較検討。価格や納期についての交渉を経て、発注・契約。随時トラブル対応を行い、納品後は検収にあたる……。このように、社外と無数の情報(データ)をやり取りすることになるのが、調達購買業務の特徴であり、担当者が忙しくなる原因の一つです。
取引先と社内の間に立ち、細かい調整に苦慮する機会が必然的に発生する調達購買部門ですが、その際も交渉の根拠となるのはデータであり、人間的なコミュニケーション力や判断力が求められるからこそ、データを整備・統合できる仕組み作りが不可欠といえるでしょう。

それでは、具体的にデータを活用したりITシステムを活用したりすることで、調達購買部門が得られるメリットについて詳しく見ていきましょう。

サプライヤー選定の根拠となるデータを資産化

コスト、品質、安定性など多角的な要素を考慮し、最適なサプライヤー選定に努めることは調達購買部門の最重要業務です。しかし、その手法は長年在籍するベテラン社員の知見頼り、すなわち“属人化”した状態であったという場合も少なくないのではないでしょうか。
日本の製造業は品質においてグローバルな競争力を獲得できていたこともあり、調達購買の“仕組み化”が遅れていると指摘されています。
そこで、規定のフォーマットに見積もりデータを蓄積することで資産化できる調達購買管理システムに、近年注目が集まっています。

Excelなどで同様の試みを行ったことがあるという方もいらっしゃるでしょう。しかし近年のシステムは、蓄積したデータを同一品目で絞り込み検索の上比較、クラウド上で複数拠点のデータを共有など、BI(Business Intelligence:データを用いた意思決定支援)的視点から構築されているものが多く、データ活用という観点でこれまでにないアドバンテージがあると考えられます。

データのネットワーク構築でパーチェシングを変革

調達購買業務は発注したらほぼ終わり、ではなくむしろそこからが本番であることには多くの方が同意されるのではないでしょうか。いわゆるソーシング・パーチェシングにおける「パーチェシング」のフェーズです。
調達購買管理システムの多くには納期・品質管理の機能があり、納品ステータスは取引先ごとに可視化されます。

しかしそもそも、日本の製造業で納期調整やトラブル対応が必要になり、調達購買部門がフォローに追われる背景に、見積もり~発注までに時間がかかり、納期が圧迫されるという事情があるのもまた事実。
そこで効果的なのは、受注側・発注側ともにソーシングをシステム化し、工数を削減すること。社内だけでなく、サプライヤーなど幅広いステークホルダーが活用できるデータのネットワークが構築できれば調達購買のあり方は大きく変化するはずです。

見積もりの自動化により、人間にしかできない業務へ注力

調達購買管理のDXでデータ活用のほかに進められるのが、「見積もりの自動化」です。データが蓄積されることで見積もりの精度が高まり、さらにその先の受発注処理や請求、入金などの定型作業までシームレスに進めることでミスと工数の削減につながります。
近年は、3Dデータをシステムにアップロードするだけで、複数社を比較した見積もりが行われそのまま発注まで進むことができるシステムも見られます。このように巨大なサプライヤーのネットワークを活用できるシステムは、コロナ禍により重要度を高めたサプライチェーンリスクマネジメントを支援するでしょう。

「両者納得のいく価格交渉やボリュームディスカウントの提案など、細かい判断は人間にしか行えないのでは?」という疑問は当然浮かぶでしょう。もちろん、交渉やトラブル対応など、調達購買において人間が必要になる場面は今後も残り続けるはずです。だからこそ、それ以外の定型化できる作業を自動化することがより効果を発揮するともいえます。

一部を自動化するだけでコストや工数に大きな違いが生じたという声も多く、ぜひトライしていただきたいDXの領域です。

調達購買の変革を指揮する人材にも注目を

調達購買DXをテーマにそれによって得られること、どのような効果が期待されるのかについてまとめてまいりました。
皆さんはCPO(最高調達責任者)という役割をご存じでしょうか。調達部門のかじ取りを担う役割であり、米Apple社CEOのティム・クック氏などそこで評価を得た人物がトップに就任した例も見られます。
日本でCPOが置かれている企業はあまり見られません。しかし、購買改革の効果は記事中で触れてきた通り、決して小さなものではありません。
DXにおいては、調達購買のトランスフォーメーションを指揮する人材の選定についても意識してみてください。

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