半導体の製造工程では、性能や品質を担保するためにさまざまな検査が行われており、それらの検査は、半導体製造ラインに組み込まれた専用の検査装置で行うのが一般的です。
半導体の製造工程は、シリコンウエハー製造工程、回路製造工程、パッケージング工程の三つに大きく分けられます。本記事では、各工程で使われている主要な半導体検査装置をご紹介し、それぞれの仕組みや検査内容などをまとめて解説します。
シリコンウエハーはシリコンを薄い円盤状に加工した板で、半導体の基板となる材料です。純度の高いシリコンの結晶を薄く切り出した後に、表面を研磨したり、薬液で異物を除去したりして作られます。半導体の基板となるシリコンウエハーの出来栄えは半導体自体の性能と品質に直結するため、綿密な検査を行わなければなりません。
シリコンウエハーの不良は、キズや欠け・割れ・歪みといった欠陥と、異物付着の二つに大きく分けられ、これらの検査はウエハー表面検査装置によって実施されています。ウエハー表面検査装置の仕組みは、ウエハーを回転させながらレーザー光を照射し、反射した光を検出器で検出するというものです。もしウエハー表面に欠陥や異物があれば、それらに当たったレーザー光が散乱します。検出器はその散乱光を検出しており、検出器が受けた情報を処理すれば、欠陥や異物の位置、種類、サイズなどを正確に把握できます。
ウエハー表面検査装置の機種によっては、欠陥や異物の位置をマップとして出力したり、内訳のグラフやサイズ分類を作成したりする機能を備えています。サイズに応じて自動でランク分けを行い、良品・不良品の仕分けができる機種もあるため、うまく活用すれば検査の自動化に役立ちます。
回路製造工程では、シリコンウエハーに対して成膜、露光、現像、エッチングといったさまざまな加工を行い、半導体の回路パターンを形成します。また、半導体の内部と外部を電気的に接続するために、電極用の金属をウエハーに埋め込んでいきます。
回路製造工程を経たシリコンウエハーに対しても、上述したシリコンウエハー製造工程と同様に表面検査装置による検査が実施されますが、検査方法が少し異なります。シリコンウエハー製造工程で実施される検査は「パターンなし検査」と呼ばれており、シリコンウエハー全体の欠陥や異物を検出します。
一方、回路製造工程で実施される検査は「パターンあり検査」と呼ばれるものです。回路製造工程では、1枚のシリコンウエハー上に同じ回路パターンが多数並んで形成されます。
「パターンあり検査」は、シリコンウエハー上で隣接する回路パターンの画像同士を比較し、その差分をもとに欠陥や異物を検出する仕組みです。
このように、回路パターンの有無で基本的な検査の仕組みが異なるため、それぞれに特化した形で検査装置が作られることになります。また、「パターンあり検査」では回路パターンのズレや乱れも測定するため、検査項目が多くなるのも特徴です。
また、回路製造工程では、回路の電気特性検査も実施されます。電気特性検査で使われるのは、プローバーと呼ばれる位置決め装置とテスターです。プローバーには探針(プローブ)を持ったプローブカードという器具が取り付けられており、プローブカードはテスターとつながっています。プローバーにシリコンウエハーを固定し、回路パターンの電極にプローブカードの探針を当てると、電気特性を検査できるという仕組みです。
電気特性検査はシリコンウエハー上に形成された回路パターンのほぼ全数に対して実施されるため、高速かつ高精度に検査をしなければなりません。プローバーやテスターの高性能化が、現在の半導体産業を支えているといえるでしょう。
1枚のシリコンウエハー上に多数形成された回路パターンは、一つ一つ切り出された後にリードフレームと呼ばれる金属の枠に固定され、樹脂でパッケージングされます。パッケージング後は私たちがよく知る半導体チップの見た目になっており、最終検査で合格すると出荷されていきます。最終検査の主な内容は次の通りです。
半導体チップ用の外観検査装置を使って、高解像度なカメラによる外観検査を行います。外観検査で検出すべき不良内容は多数ありますが、代表的なものは、表面の傷や汚れ、リードフレーム端子の変形、メッキ不良などです。
リードフレーム端子の長さ・ピッチ・幅などの寸法検査を行います。外観検査と同様に、高解像度なカメラを搭載した寸法検査装置を使うのが一般的です。
回路製造工程と同様に、最終検査でも電気特性を検査します。ハンドラーと呼ばれる搬送装置で半導体チップを搬送・位置決めし、テスターに接続して最終製品として求められる電気特性を満たしているかを判定します。
半導体は微細化・高精度化が著しく進んできましたが、それらは半導体検査装置の精度向上によって支えられています。今後も半導体製造技術の発展に伴ってさらに高精度な検査装置が求められており、各メーカーでは研究開発が進んでいます。
半導体検査装置は日本メーカーの存在感が比較的強い領域です。今後も日本が半導体市場で存在感を発揮できるかどうかは、今後の技術開発にかかっているといえるでしょう。