日本ユニシス株式会社
Techマーケ&デザイン企画部 デジタルプロセス企画室 萩原 喜武氏
Citrix Certified Expert-Virtualization サポートサービス本部 DXソリューション部 ワークプレースサービス室二課 末永 範子氏
Citrix Certified Expert-Virtualization サポートサービス本部 DXソリューション部 ワークプレースサービス室一課 小松 貴幸氏
新型コロナウイルス感染拡大に伴い定着したテレワーク。テレワークと組み合わせる形でオフィスのフリーアドレス制を導入したり、都心から郊外へオフィスを移転したりといった取り組みを実行する企業もあるなど、様々な場所で仕事をすることが増えてきました。楽DaaSは場所を選ばない働き方をセキュアに実現するクラウドの仮想デスクトップ環境と構築・運用をセットにしたサービスです。これからのニューノーマル時代、楽DaaSの果たす役割について、小松 貴幸氏、末永 範子氏、高橋 謙司氏、萩原 喜武氏に伺いました。
2022年4月1日に「BIPROGY株式会社」への社名変更を控える日本ユニシス株式会社は、1958年創業の歴史あるシステムインテグレーターです。1955年に日本初の商用コンピューターUNIVAC120を東京証券取引所と野村證券に納入するなど、コンピューター黎明期からさまざまな業界のシステム構築を手掛けてきました。
デジタルの力で社会的価値と経済的価値を両立させることで、持続的な社会づくりのための良好な循環を生み出す「デジタルコモンズ(社会の共有財)」をコンセプトとして、社名を「BIPROGY(ビプロジー)」に変更。コーポレートイメージを刷新し、新たなスタートを切ります。「ITのシステム構築だけでなく、ビジネスエコシステムの形成など多様な業態へのサポートも含め、領域を広げていきます」(高橋氏)。
同社は20年以上前から仮想デスクトップ環境構築に携わってきました。もともと同社は金融業界のシステム構築の実績が豊富です。業界の厳格なセキュリティ基準に応えるために機密情報や開発データの流出を防ぐシステム構築に取り組んでおり、その方策の一つが仮想デスクトップでした。「当時の仮想デスクトップは、セキュリティ対策として導入されるケースが多かったですね」(末永氏)。
こうした歴史もあり、同社はさまざまな仮想デスクトップ製品について知見を持っています。「仮想デスクトップ製品として歴史あるCitrix製品については、MetaFrame(現在の名称はCitrix Virtual App and Desktop)と呼ばれていたころから扱っています」(末永氏)。
仮想デスクトップとは、サーバー上にある仮想マシンを端末から操作する仕組みのことです。PC上で実行される処理は仮想マシンにて行われます。端末とサーバーとの間では画面情報と、キーボードやマウスなどからの入力情報をやり取りするのみとなります。そのため端末に情報が残りません。
従来は、自社のデータセンターにあるサーバーに仮想マシンを起動して使用していました。しかし最近は「所有から利用へ」のニーズの変化により、企業が自社でデータセンター等のシステムを持たず、クラウド上のサービスを利用する傾向にあります。
働き方の多様化により、社外でも仕事ができる環境のニーズが高まりました。度重なる災害で甚大な被害を受けたことにより、事業継続計画(BCP)の一環として仮想デスクトップを検討する企業も存在します。
そのためクラウド上で仮想デスクトップを提供するサービスのニーズが高まっています。これがクラウド型仮想デスクトップとも呼ばれるDaaSです。DaaSはDesktop as a Serviceの略で、個人のデスクトップ環境をクラウド上で利用できるサービスとなっています。
同社でも2018年よりDaaS「Citrix Cloud on Microsoft Azure(Citrix on Azure)」に同社の運用をセットしたソリューションを展開していました。現在はCitrix on Azureの他にもさまざまなDaaSの製品が誕生しています。そこで、サポート対象製品にAzure Virtual Desktopを追加して誕生したのが「楽DaaS」のサービスです。
楽DaaSは、Citrix on AzureまたはAzure Virtual Desktopと、システム構築・運用をセットにしたサービスです。
「DaaS製品にはそれぞれ一長一短があり、お客さまが選びきれないことも多いです」と末永氏が語るように、セキュリティや機能の要件に応じて最適な製品を選択するのが困難になっています。そこで楽DaaSでは、既存の環境をアセスメントし、最適なDaaS製品を選択するための支援も提供しています。
また楽DaaSでは、パッチの適用や仮想デスクトップ環境の増減、障害対応など、日々発生する煩雑な運用業務も提供しています。
DaaSを利用する場合は、一人に一つずつ仮想デスクトップ環境を用意することも可能です。しかしクラウドサービスのため、利用する環境と利用した時間により課金されてしまい、コストメリットがありません。
そのため、同時接続数を制限してコストメリットを出すといった工夫が必要です。またAzure Virtual Desktopであれば、1台のWindows10環境に最大20人接続できるマルチセッションが利用できるため、コスト効率化のために利用するお客さまも多いそうです。
ここで、楽DaaSの導入までの流れの一例を教えていただきました(期間は目安)。一般的には導入開始から約3カ月で使用できるようになります。
お客さまの使い勝手が良いかをさまざまな観点から検証します。また、楽DaaS環境からお客さまの環境へ接続する専用線や必要なアプリケーションについても、この期間に確認します。
同社の技術者がお客さまの環境を分析し、最適な構成案を提案します。検証用の環境を構築し、問題なく運用できるかを検証していきます。ここで最終的な要件が決定します。
検証の結果をもとに、最終的にチューニングした環境を本番環境に移行します。
「現在はテレワーク基盤としてのニーズが高いのですが、それ以外にも楽DaaSは使い勝手が良いと思います」と語る萩原氏に楽DaaSのユースケースについてご紹介いただきました。
コロナ禍においては、申請書の承認や請求書など、押印が必要な業務のために出社を強いられる「ハンコ出社」が問題になりました。さらに基幹システムの操作がリモートではできないという企業も多いのではないでしょうか。楽DaaSを導入することで、オフィスと同様に自宅でもERPなどの基幹系システムやグループウエアを利用することができます。
開発プロジェクトでは、顧客はもちろんのこと地方や海外の開発会社が参画することがあります。また、コロナ禍の影響で自宅での開発業務を余儀なくされているケースも増えてきました。楽DaaSで開発環境を構築することで、場所を選ばずに業務ができ、プログラムコードなどが流出するリスクも抑えられます。
また、従来は開発環境をセットアップするのに高スペックの端末が必要となり、開発のためのコストが増大するという問題がありました。楽DaaSであれば、低スペックの端末でも操作でき、期間限定のプロジェクトについてもコストメリットが期待できます。
インターネット分離とは、インターネット接続環境と社内ネットワークを分離することを指します。社内ネットワークへのサイバー攻撃は、インターネットを経由して行われるため、社内ネットワークがインターネットに接続されていなければ、攻撃されるリスクは大幅に抑えられます。
自治体では「自治体情報システム強靭性向上モデル」に基づき、インターネット分離が実施されています。民間企業でもセキュリティ対策として採用するケースも少なくありません。その方法として、従来はインターネット接続用の端末を業務端末と別に用意していましたが、利便性が低いという問題がありました。
Citrix on Azureの場合は、Azureと社内ネットワークを閉域網で接続し、楽DaaSを社内ネットワークと同じように接続することができます。インターネット接続は楽DaaS経由で行い、社内の業務は社内ネットワークで行う形となるため、1台の端末でインターネット分離が可能です。
「以前は仮想デスクトップをよく知っているお客さまが多かったのですが、最近は急遽テレワークを検討することになり、どのような環境にしたらよいのか悩むお客さまが増えてきています」と小松氏は語ります。テレワーク環境を仮想デスクトップで構築する場合、オンプレミスという選択肢もあります。また、DaaSでもWindows 365 クラウド PCのような新たな製品も登場しています。
そこで同社では、楽DaaSの枠を超え、お客さまの環境に合わせて最適な構成を提案するアセスメントサービスを提供することを視野に入れています。サービスの提供予定日は未定ですが、現時点でもアセスメントを希望する場合は相談に応じてくれるそうです。「仮想デスクトップ環境を構築したいが、DaaSは合わないかもしれない…」という方も一度相談してみてはいかがでしょうか。
コロナ禍が長期化して新たな日常を迎える中、働き方の多様化は一層大きな価値を持つでしょう。緊急事態宣言が発令されたことで、セキュリティや利便性は脇に置いてテレワーク環境を作ってしまったため、再度テレワークの基盤を検討している企業も多いのではないでしょうか。楽DaaSは、テレワーク2.0の基盤構築に大きく貢献することでしょう。