1950年代から徐々に発展し、今では耳に入ることも多くなってきた「ファクトリーオートメーション」。 今回は、ファクトリーオートメーションの全体像を解説します。またインダストリー4.0との関連についても紹介します。
ファクトリーオートメーション(以下FA)とは、工場における自動化のことです。 FAの対象は、加工、組立、マテリアルハンドリング(通称、MHやマテハンと呼ばれる運搬管理)、管理の4分野を指すことが多く、 また主な目的・狙いは、コスト削減、スピード向上、品質安定、(人間の)安全確保、人手で作れないものの製作などです。
1970年代の中頃までは「オートメーション」とはFAのことを指していました。 しかし、オフィスオートメーションという言葉が普及してからは、明確に区別するために「ファクトリーオートメーション」という言葉が一般的に使われるようになりました。
FAの歴史は古く、1950年代に遡ります。例えばストリップミル(連続式圧延機、金属の塊を板状や棒状に延ばす機械)がこの頃登場しました。
電動化により圧延機の出力や速度が正確に制御できるようになったため、複数の機械による連続加工が可能になったのです。
また、1965年頃にはICが工作機械に組み込まれるようになり、産業用ロボットが実用化されました。
現在のFAに近づくのは1970年代からです。現在の工場でも使われているNC工作機などの機械が出揃い、センサからのフィードバックで動作制御する第2世代ロボットが登場しました。
さらに1990年代後半からCAD、CAMが普及し、設計現場にも自動化が広がりました。
2006年にドイツで始まった「インダストリー4.0」は、IoT(モノのインターネット)でFAをさらに進化させました。
ネットワークでつながった機器がそれぞれデータを送信し、それをサーバが処理する形で、機器同士のさらに高度な連携が可能となりました。
また、一つの工場を超えて、社内外の他の工場との連携も行われるようになりました。
現在のFAではITシステムが欠かせないものとなっています。 FAを構成するITシステムは、大きく製造システム、基幹システム、社外関係者管理システムの三つに分けることができます。
FAといえばまず思い浮かぶのが、製造の自動化に関連する各種システムでしょう。以下のものがあります。
製品に関するデータを一元管理するシステム。 例えば、部品情報であるBOM(Bill Of Materials、部品表)には、EBOM(開発部品表)とMBOM(生産部品表)がありますが、それらを一元化し、社内のあらゆる部署から部品情報を常時参照が可能になります。
設計、開発、保守、廃棄、リサイクルなど製品のライフサイクル全般を一元的に管理するシステム。
コンピュータを用いて設計すること、またはその際に使用するツール。
CADで作成された形状データをNC工作機などに入力して、自動的に生産を行うシステム。
研究・開発過程でコンピュータ上の試作品を用いてシミュレーションや数値解析を行い、設計の事前検討をするシステム。
CAEと組み合わせて、コンピュータ上でテストデータを生成し、自動テストを行い、結果解析を行うシステム。
受注から購買、生産、出荷に至るまでの一括したスケジュール管理を行うシステム。製造ラインの稼働率を考慮した最適な生産計画の策定を支援します。
なお、機械の自動制御に使われるステートマシン(リレー回路を元型とする一種のコンピュータ)としてPLC(Programmable Logic Controller、シーケンサともいう)があります。 これもFAの製造システムにおいて重要な役割を持っています。
FAに関連する基幹システムは以下の通りです。
工場内の人・設備・モノの最適活用を支援し、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)管理を実現するシステム。
販売計画に基づいて生産計画を導き出し、部品などの注文を自動化するシステム。BOMを用いて、製品設計から部品のリストを作成します。
経営資源の最適化を実現することを目的とした統合基幹システム。製造に関連するのは生産管理サブシステムで、MRPの機能を含んでいます。
MESとMRPは製造に特化したものであり、ERPは企業活動全般に関係します。 MRP(あるいはERP内のMRP機能)とMESは連動します。具体的にはMRPからMESに製品別作業指示が送られ、MESからMRPに製品別作業実績が返されます。
顧客や取引先などの社外関係者との間との連携を図るシステムもFAと関係します。
顧客との関係管理をするシステム。主にマーケティングで利用されますが、生産計画を立案する際にも活用されています。
前項に登場したFAに関連するITシステムを、利用部門および社外関係者を軸にまとめてみました。 関連するシステムを線で結んでいます(ただし、その企業が所有するITシステムによって構成や連携の仕方も変わってきます)。
前項に登場したFAに関連するITシステムを、利用部門および社外関係者を軸にまとめてみました。 関連するシステムを線で結んでいます(ただし、その企業が所有するITシステムによって構成や連携の仕方も変わってきます)。
図:FAを構成するITシステムの関係 (例)
ドイツ発のインダストリー4.0(第4次産業革命)でいうスマートファクトリーとFAはどう違うのでしょうか。
大きな違いは、FAが基本的には工場内で閉じているのに対して、スマートファクトリーは他の工場に対して開かれているところでしょう。
インダストリー4.0の最終的な目標の一つは、国中のスマートファクトリーを全て接続するという壮大なものです。
日本でも経済産業省を中心に、日本版インダストリー4.0である“Connected Industries”が推進されています。
その一環として製造プラットフォームを連携させるためのワークグループが立ち上がっており、セキュリティと知的財産を守りながら、工場間で製造を連携する方式について議論が進められています。
これによって、現在所持しているFAの仕組みを生かしながら、他社の工場と連携することが可能になっていくと考えられます。
さまざまな企業の工場が連携することで期待されることの一つが「マス・カスタマイゼーション」の実現です。
セル生産方式と呼ばれる生産方式では、セルと呼ばれる一人または少人数のチームで生産をすることで、多品種の生産を実現しています。
さらに工場同士の連携方式が決まれば、社外工場とのセル連携が可能になります。
そうなることで、各工場がより効率的に動かせるようになるため、個々の消費者のニーズに合わせた一品一様の商品を、大量生産と同様のコストで作ることにつながります。
ファクトリーオートメーションで起こる工場の進化に今後も目が離せません。