PLM(製品ライフサイクル管理)の重要性が、製造業のDXが進む状況下で高まっています。コロナ禍で課題視されたサプライチェーンマネジメントとも深く関わるため、製造業各社は改めて自社のPLMを見直す必要があるといえるでしょう。
本記事では、PLMの概要や製造業がPLMに取り組むメリット、PLMシステムの持つ機能などを解説します。
PLMは「Product Lifecycle Management」の略称であり、日本では「製品ライフサイクル管理」とも呼ばれています。製品ライフサイクルとは、企画・設計・調達・生産・販売・メンテナンス・廃棄といった、製品がたどる一連のプロセスのことを指します。
PLMの目的は、製品ライフサイクルの各プロセスで発生する製品情報を一元管理することで、一元管理された情報を各プロセスで共有し、製品開発力の強化や業務の効率化に役立てることです。
PLMの前身となったのは、PDMと呼ばれるシステムです。PDMは「Product Data Management」の略称で「製品情報管理」を意味します。PDMは、製品の図面やCADデータなどの設計データの一元管理によって、設計業務を効率化する目的で活用されていました。
PLMが管理する範囲はPDMよりも広く、製品ライフサイクル全体を対象とします。設計データはもちろん、生産データや顧客データといった製品に関係するより多くの情報を一元管理する取り組みです。PLMの中にPDMが含まれていると考えれば、イメージしやすいでしょう。
従来、PLMは自動車業界や電機業界の大手企業を中心に導入されていましたが、近年ではそれ以外の業界や中小企業からも注目を集めています。その理由は、製造業がPLMへ取り組むことでさまざまなメリットを得られるからです。
主なメリットとしては、製品開発のリードタイムを短縮できる点が挙げられます。ある製品の企画から廃棄までのデータを集約しておけば、類似製品を開発する際に生かせるため、開発効率が高まって早期に市場投入することが可能です。途中で設計変更があった場合の情報共有もすぐに行えるので、手戻りによる開発の遅れを短縮できます。
また、PLMは製品の品質向上やコスト削減にも役立つものです。例えば、生産プロセスで得た設備データや生産条件のデータを集約して分析すれば、不具合の発生を防ぐことができ、生産効率の低下を防げます。過去の製品のコスト情報や品質情報を蓄積しておけば、新製品の設計時にも生かせるでしょう。
現在の製造業は、国内外での競争が激化する過程でリードタイムの短縮や品質向上、コスト削減がこれまで以上に求められるようになっています。そのため、PLMへの取り組みによって製品開発力を強化し、競争力を維持・向上していく必要があるのです。
PLMシステムの持つ機能の例を、製品ライフサイクルにおけるプロセスごとに一部ご紹介します。
製造業がPLMに取り組む際には、PLMシステムの導入が効率的です。PLMに必要な機能がすでに備わっているため、自社で独自にシステムを構築する必要がありません。
自社製品の一覧や位置付けを確認するポートフォリオ管理、製品に求められる要件の管理など。
図面やCADデータといった設計データ管理、部品表(E-BOM)管理、原価管理、変更履歴管理など。
調達先管理、調達部品管理、調達コスト管理など。
製造部品表(M-BOM)管理、設備の設計データ管理、指図書などの帳票管理、品質管理など。
顧客情報管理、販売コスト管理、クレーム管理など。
保守メンテナンス履歴管理、サービス部品管理など。
PLMシステム自体は以前から存在していましたが、近年では発達したデジタル技術との組み合わせによる高機能化が進んでいます。例えば、IoT技術によって設備から生産データを随時取得したり、顧客の使用状況を把握したりすれば、製品設計に生かせます。また、PLMで一元管理されたデータをAI技術によって分析すれば、高度な需要予測や改善が実現可能です。
また、PLMシステムで各製品を構成する部品情報や材料情報、調達先の情報などを適切に管理できていれば、サプライチェーンマネジメントにおいても役立ちます。サプライチェーン全体の効率化や安定供給を実現するためには、PLMシステムとの連携がカギになっていくでしょう。
デジタル技術の発達によって、PLMシステムはさらなる進化を遂げつつあります。変化が激しく、国内外での競争が激化するこれからの時代を生き抜くためには、自社の製品開発力の向上が不可欠です。企業規模を問わず、製造業にはPLMへの取り組みが求められるようになっていくでしょう。
PLMの基本は、設計データを一元管理するPDMです。まだPLMに取り組めていないようであれば、まずはPDMの段階から始めてみてはいかがでしょうか。