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ビッグデータ解析に求められる「エッジコンピューティング」とは?

レンテックインサイト編集部

マーケティング用語として、既に広く使われている「ビッグデータ」という言葉。 従来のデータベース管理システムでは記録や保管、解析が難しいレベルの“巨大なデータ群”を指す言葉ですが、IoTなど、最新デジタル技術の普及と進展により、ますます膨大な量のビッグデータが日々生み出されています。 そのビッグデータの解析で注目されている手法が、クラウドコンピューティングにおけるデータ処理を効率化する「エッジコンピューティング」です。

ビッグデータ解析を効率化する、「エッジコンピューティング」

日々生み出される膨大なビッグデータは、さまざまな分野で活用が進んでいます。 マーケティング分野においては、ウェブサイト上での行動履歴、オンラインショップ内での商品閲覧や購買履歴、広告に対する反応、SNS上でのコミュニケーションなどといった情報から、 顧客は何を欲しいと考えているのか、どんなシーンに顧客が潜んでいて、どんな製品や情報を必要としているのか、などの解を導き出しています。
モノづくりの現場においては、製造工場内にある、さまざまな製造装置や産業用ロボットにセンサを取り付け、送られてくる情報を詳細に監視しています。 それらの情報から、機器を正しく制御したり、異常の発見や消耗品の交換を促したりするなど、生産の効率化を支援しているのです。

このように、さまざまな場面で新たなビジネスチャンスの創出や課題解決などに期待が集まっているビッグデータですが、その活用において重要になるのが、 膨大なデータをどのように処理して最適解に結びつけるかという「ロジックの設計」と、より高度な処理を可能にする「解析システムの構築」です。 これらを企業単位で実現するには、導入コストや維持管理面の負担などで課題があります。 そのため、ビッグデータの処理においては、自社のコンピュータシステムで対応するのではなく、高度な処理が可能な、「クラウドコンピューティングサービス」の活用が主流になっているようです。

また、ビッグデータをクラウド上で解析する際には、すべてのデータを一度にクラウドへ送るのではなく、 インターネットへ送り出す前の「エッジ(ふち)」の部分で最適化してから送る方法が取り入れられつつあります。 例えば、製造ラインに並ぶ機械の制御や自動車の運転など、リアルタイムの制御や処理はクラウドコンピューティングには向きません。 そういった制御や処理を、クラウドに送る前に実行するのが「エッジコンピューティング」と呼ばれる手法です。
従来のビッグデータ処理は、IoTセンサなどエンドポイントのデバイスが生成するデータを、 直接ネットワーク経由でクラウドのデータセンタに集約・解析する仕組みでした。 これらのデータは、システム全体の詳細な管理には役立ちますが、すべてのデータを送信するとネットワークに負荷がかかり、 データ解析能力にも影響を与えます。一方エッジコンピューティングでは、データに何らかの変化があった場合にのみ、 その情報をクラウドに送信することで通信時の負荷を減らし、システムのデータ解析能力を向上させているのです。

製造業における「エッジコンピューティング」の活用状況

実際に製造業で活用されるエッジコンピューティングの具体例が「工場」です。 工場には製造装置や産業用ロボットなどの機械を制御するために、ミリ・秒単位でのレスポンスを求められるアプリケーションが存在します。 そのアプリケーションをクラウドで活用する際に、機械から上がってくるビッグデータをそのままインターネットで送信してしまうと、 通信量がボトルネックとなり、リアルタイムでの機械制御が実現できません。 また、製造業ではセキュリティの観点からも、製造工程で発生したデータをそのままインターネットに乗せることに、コンプライアンス上の問題も生じます。 そこで、活用されるのがエッジコンピューティングです。 エンドポイントからのデータをすべてクラウドに送るのではなく、エッジに置かれたコンピュータにデータを監視させ、データに何らかの変化があった場合にのみ、その情報を検出してクラウドに送るのです。 工場内のエッジでデータの一次処理を行えば、機械制御で求められるレベルの高速処理が可能になります。 また、すべてのデータをクラウドに送るわけではないため、ネットワーク帯域やセキュリティに関する懸念も払拭されます。

日本の製造業におけるエッジコンピューティング活用は以前から進んでおり、2017年11月に、エッジコンピューティングを推進する業界団体「Edgecrossコンソーシアム」が発足しています。 当初の監事会社は、株式会社アドバンテック、オムロン株式会社、日本電気株式会社(NEC)、日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)、日本オラクル株式会社、三菱電機株式会社の6社でしたが、 2018年2月には株式会社日立製作所も幹事会社に名を連ね、会員企業・団体数も設立時の51社から、2018年12月末時点で200社以上に増加しています。 Edgecrossコンソーシアムでは、さまざまなアプリケーションをFA用途に適用させ、エッジコンピューティング領域での完結したシステム構築実現を支援しています。 また、そのためのプラットフォームとして「基本ソフトウェア」の提供、さらに基本ソフトウェアの販売やコンソーシアム会員のEdgecross対応製品の販売支援を行う「Edgecrossマーケットプレイス」も開設し、 エッジコンピューティングのさらなる活用を推進しています。

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