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DXを成功させるために不可欠なIT人材「ビジネストランスレーター」とは?

レンテックインサイト編集部

2018年時点で約22万人の不足が報告されており、2025年には約36万人、2030年には約45万人とどんどんその幅が拡大することが予測されているIT人材(※)。今まさに獲得に取り組んでいるというものづくり企業も少なくないでしょう。
ITエンジニアやプロジェクトマネージャーなどIT人材にはさまざまなポジションが存在しますが、この記事でご紹介したいのは「ビジネストランスレーター」です。
DX成功において大きな力を発揮するうえ、ITに不慣れな社員からも育成しやすいビジネストランスレーターのメリットや育成のポイントについて詳しく見ていきましょう。
製造業界のIT人材不足についてより詳しくはコチラの記事(製造業のIT人材不足の実態と解決方法)もご参照ください。

※参考:IT人材需給に関する調査(概要)┃経済産業省 情報技術利用促進課

DXの成功に欠かせない役割「ビジネストランスレーター」とは?

ビジネストランスレーターとは、現場とデータ分析チームの間に立ち、両者の意見を翻訳、調整し、ときに不足する情報を自ら取りに行くことでDXプロジェクトを成功に導く人材のことを指します。

どんな企業であれ、DXのゴールは、単なるIT化ではなくデジタルシフトを通して企業価値やビジネスモデルにまで変革を及ぼすことに据えられると良いでしょう。その道のりは平坦なものではなく、計画からデータ収集を経て分析、実行に至るまで「どのような落とし穴があるのか」を把握し、それを防ぐために実際に行動するプロジェクトの推進役が必要になります。そこで頼れる役割が「ビジネストランスレーター」なのです。

DXに必要なIT人材として注目されやすいのは統計学を修めたデータサイエンティスト・データアナリストや、実務経験豊富なSE、ITコンサルタントなどですが、優秀な人材の獲得や社内での育成は難しいのもまた事実。ITスキルや統計学を使いこなせるというよりも「分かっている」ことが重要なビジネストランスレーターは現場から比較的育成しやすく、かつ効果の大きな役割ということで現在注目を集めています。

ビジネストランスレーターが力を発揮する4つのケース

ビジネストランスレーターが活躍する場面を具体的に思い浮かべられるよう、ビジネストランスレーターが力を発揮するケースを4パターンご紹介します。

そもそもDXプロジェクトの目的が定まっていないケース

DXやデータ活用に取り組まなければならないという危機感を持ちつつも、どの分野からDXを始めるべきかわからず手をこまねいているパターンです。プロジェクトのゴール設定がされていなかったり、間違っていれば、修正に多大なコストがかかるうえ、社内のDXに向けた士気も下がってしまいます。
ここでビジネストランスレーターが発揮するのは、DXの成功例やインパクトなどついての豊富な知識と、経営者や現場の課題を適切にヒアリングする傾聴力です。企業の外部にある事例と社内の要望を掛け合わせる、まさにトランスレーター(翻訳者)としての能力が問われることになります。

どれだけの成果が見込めるのかイメージできていないケース

「何が売れるのか、どう改善すればいいのかが一目でわかるんでしょ」とDXに過大な期待を抱いている方も、最近は少なくなってきましたが、まだまだ存在します。どれくらいの予算・人員が必要でそれによってどれくらいの成果が見込めるのかを整理するのも、ビジネストランスレーターの役割です。経営陣や現場の要望を汲み取って成果報告を適切に行うところまでビジネストランスレーターはデザインします。

データが不足している・欠落しているケース

いくら優秀なデータサイエンティストが分析に取り組んでも、そもそも有効なデータがなければ手も足も出ません。大切なのはデータが大量にあることではなく、必要なデータが必要な分だけ質を伴って用意されているということです。ときに日報やFAXなどの紙資料が有効なデータとなることもあります。それらを収集したり、見つからない場合に入手依頼を行ったりするシーンも、ビジネストランスレーターの腕の見せ所です。

現場と経営陣・情報システム部門の間に隔たりがあるケース

分析を通して改善案が出されても、それが実行されなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。長年KKD(勘・経験・度胸)が文化であった製造業では、頭ごなしにデータに従えと言われてもすんなり受け入れられる可能性は高くありません。そこで、ビジネストランスレーターは、データ分析結果を取り入れることで企業全体や社員一人一人にどのようなメリットがあるのかを発信し、納得を得るために働くことになります。

ビジネストランスレーター育成・活用のポイント

ビジネストランスレーターを社内で育成するならば、役職や理系・文系など既存の役割にとらわれず、データ分析やそれを通じた自己研鑽に意欲を持つ社員を募るのが効果的です。
これまでITツールや統計ソフトに触れた経験がある方にはもちろんアドバンテージがありますが、それよりも大事なのは現場とデータ分析チームの間に立って両者の意見を翻訳しつつ定量的な成果につなげるというプロセスを“おもしろい・有意義だ”と思えるかどうかです。
近年はプログラミングをせずにExcelやCSVのデータをドラッグ&ドロップで取り込むだけでデータを分析しチャートやグラフにしたり、あるいは機械学習モデルを構築できたりするGUIツールも登場しており、意外な人材がビジネストランスレーターの適性を発揮する可能性もあります。

さらにビジネストランスレーターを「活用」するところまでつなげるには、まずは小さなステップでデータ分析を実際にやってみて成果を得る体験が欠かせません。総務省統計局が提供する無料の「データサイエンス入門」などを活用して基礎知識を備えつつ、DMの効果測定~打ち手を考えるなどの課題にトライしてもらうことを考えてみてください。

ビジネストランスレーターは企業の未来に貢献する

製造業DXを成功に導くにあたって重要な役割を発揮する「ビジネストランスレーター」についてご紹介しました。平たく言えば、関係者への説明や利害調整、ゴールの設定などあまねくプロジェクト成功に求められる役割を、DX・データ分析という領域を中心に据えて担うのがビジネストランスレーターです。そのノウハウはその他のプロジェクト推進でも役に立つでしょう。ビジネストランスレーターの育成は単体のプロジェクトのみならず、企業の未来を支えることにもつながっているのです。

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