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カーボンニュートラルのカギはDX? その定義や目指すべき理由とは

レンテックインサイト編集部

経済産業省がものづくり産業の現状と課題を毎年レポートするものづくり白書。その2021年度版において、アフターコロナのニューノーマルにおける生き残りのカギとして掲げられたものの一つが「グリーン―カーボンニュートラルへの対応―」でした。
製造業でも進む「脱炭素」。今のうちにその概念や取れる手立てについて詳しく知っておきたいという方も少なくないはずです。
本記事では、ニューノーマルに向けて知っておくべきカーボンニュートラルの知識についてご紹介します。

そもそも「カーボンニュートラル」とは何なのか

そもそも「カーボンニュートラル」とは何なのか、ここで改めて定義を確認しましょう。

カーボンとは、炭素(C)のことです。これまで人類は、石炭や石油や天然ガスなど炭素を含む化石燃料を燃焼させることでエネルギーを取り出し、電力や動力の源としてきました。しかし、ご存じの通り炭素(C)は酸素(O)と結びついて二酸化炭素(CO2)となることで地球温暖化の主因物質となっています。
そこで、二酸化炭素の排出量を抑制する施策と排出した二酸化炭素を吸収・圧入する施策により実質的な二酸化炭素排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」が全世界で目指すべき目標として掲げられました。現在、日本を含め120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル実現」を目標に掲げています。

カーボンニュートラルを実現するためのカギはDX?

カーボンニュートラルの必要性は分かったけれど、実際にどのように実現したらいいのか、と悩む企業は多いはずです。化石燃料の利用を当たり前のものとしてこれまでのサプライチェーンは構築されてきたため、それを改めるのは並大抵のことではありません。

2020年12月、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表。再生エネルギーや水素発電、原子力など電力部門の脱炭素化を図り、また製造プロセスの電化を進めるとともに、そのための企業の研究開発を支援する2兆円規模の「グリーンイノベーション基金」を造成しました。
同資料には、「グリーンとデジタルは、車の両輪である」と明記されています。
工場DXによる脱炭素化の第一歩として挙げられるのが「CO2排出量の見える化」です。正確なCO2排出量を把握する方法としては、IoTセンサーにより電力消費量を計測し、BIダッシュボードなどで分かりやすく可視化することが挙げられます。2021年10月19日にはあらゆる業種・業界から50社超で組織された「Green x Digitalコンソーシアム」が立ち上げられ、2050年カーボンニュートラルの実現に寄与する事を目的に、CO2排出量データを見える化する仕組みを構築する等活動が行われています。

当然、「見える化」の後には、実際にCO2を抑制する計画を立てることになります。センサーから得られたデータは気象条件など他のデータと掛け合わせることで、エネルギー消費の最適化を図ることに貢献するでしょう。再生可能エネルギーの利用やコジェネレーションにも工場DXやスマートファクトリーの実現は欠かせません。
それらのノウハウはカーボンニュートラルの実現だけでなく、コスト削減や新規ビジネスの創造といった可能性も開くと期待されています。

カーボンニュートラルを目指すべき三つの理由

カーボンニュートラルの実現が必要というのは、地球や人類というような、非常に大きな視点に立った話だと感じる方もいるでしょう。それではなぜ、モノづくり企業一社一社がカーボンニュートラルの実現に取り組むべきなのか、その理由について、もう少し詳しく見てみましょう。

企業のCSRが重要な時代

SDGs(持続可能な開発目標)に代表されるように、企業にCSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)を求める風潮は高まってきています。従来以上に「何のために」事業を行っているかを重視する消費者が増加しており、それはBtoBであっても無縁ではありません。そして、脱炭素は世界的な社会問題の一つです。

グローバル企業のサプライチェーンすべてに変化が求められる

米Appleは製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてを通じて2030年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。CSRが重視される現代、カーボンニュートラルという目標を国家と同様に掲げることはグローバル企業のスタンダードとなるでしょう。そうなれば、そのサプライチェーンに携わる企業すべてが、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組むことを求められるようになります。

支援金・税制面での優遇と「炭素税」の可能性

先に触れたグリーンイノベーション基金は以下の14の対象分野におけるプロジェクトの支援を目的として設けられました。

  1. 洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
  2. 水素・燃料・アンモニア産業
  3. 次世代熱エネルギー産業
  4. 原子力産業
  5. 自動車・蓄電池産業
  6. 半導体・情報通信産業
  7. 船舶産業
  8. 物流・人流・土木インフラ産業
  9. 食料・農林水産業
  10. 航空機産業
  11. カーボンリサイクル・マテリアル産業
  12. 住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業
  13. 資源循環関連産業
  14. ライフスタイル関連産業

このうち、「輸送・製造関連産業」に当てはまるのは5~11の産業です。さらに、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制や研究開発税制の拡充、民間投資の促進なども計画に含まれています。
また一方でCO2排出量に応じて発生する「炭素税」の導入の要望が環境省などから出されており、フィンランドなど欧米では実際に導入された例も見られます。

カーボンニュートラルが国家プロジェクトである以上、こうした国の支援や規制をいかに活用できるかが、これから2050年までの課題となるでしょう。

「カーボンニュートラル」が本格化するのはこれから

製造業のニューノーマルを大きく左右する「カーボンニュートラル」の実情とこれからについて解説してまいりました。「2050年カーボンニュートラル」の目標は2020年10月に宣言されたばかりであり、ここから数年間でその波は本格的に訪れることになるでしょう。“車の両輪”であるグリーンとデジタルの両輪をともに実現することを念頭に、ものづくりの未来図を描いてみてください。

出典:「2021年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/index.html
出典:「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-2.pdf
出展:「「Green x Digitalコンソーシアム」を2021年10月19日に設立」(一般社団法人電子情報技術産業協会)(https://www.jeita.or.jp/japanese/pickup/category/2021/1019.html

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