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効率的な生産ラインの構築を司る「ラインビルダー」とは?

レンテックインサイト編集部

工場DXの強い味方として、日本国内でも「ラインビルダー」に注目が集まってきています。しかし、長年“自前主義”が支配的だった日本では欧米や中国に比べて活用が進んでおらず、より周知を進めていく必要があるといわれています。
本記事では、誰でもラインビルダーを理解し活用のイメージが描けるよう、役割や活用のポイント、注目を集める理由などをまとめて解説します。

ラインビルダーとは? 活用するメリットは?

ラインビルダーとは“企業の生産ライン構築を設計から組み立て、試運転までフルターンキーで請け負う”企業を指します。生産ラインを一気通貫で立ち上げるというのがラインビルダーの特徴で、その点でエンジニアリング段階からなど一部工程に携わる他の生産設備SIerと区別されます。

そのメリットは、「効率的な生産ラインを最短で構築できる」「生産ラインの構築を外注することで自社のコア業務に集中できる」などが挙げられます。

経済産業省が2015年12月に行った「ラインビルダーを活用している」企業へのアンケート調査によると、ラインビルダーを活用する理由ランキングは以下の通りでした。

1位 専門事業者に任せた方が効率的な生産ラインを構築できるため(66.4%)
2位 工場をスピーディに立ち上げるため(41.3%)
3位 社内の生産技術者が不足しているため(32.5%)
4位 自前で行うよりコストが安くなるため(19.6%)
5位 その他(1.7%)

ラインビルダーを理解するうえでキーワードとなるのが「標準化」と「IT活用」です。経験豊富なラインビルダーには、ライン構築のベストプラクティスが知見として蓄積されています。そのため、新興企業であってもラインビルダーを活用することで、グロ―バル標準のラインを、最短で導入できる可能性が高いと考えられるのです。特にバーチャル上で工場を再現するデジタルツイン技術を活用することで、コストをかけずにシミュレーションを行えることもラインビルダー活用のメリットの一つです。

また、スマートファクトリーを目指すには、IT・OT両方の理解やデータを取得すべきポイント、現場にデータ活用を促すコツなど広範な知識が必要となります。それだけの知識を有する人材を獲得する、あるいは自社で一から育成するよりも、ラインビルダーを利用した方が低コストであると考える企業が増加してきています。

DXのカギの一つは“自前主義”からのの脱却

欧米や中国と比べ、日本はラインビルダーを活用できていないという現状について冒頭で言及しました。
その背景にあるのが、なるべく自社内の人材や技術で事業を進めたいと考える“自前主義”です。確かに自前主義にはノウハウが自社内で蓄積される、取引コストがかからないといったメリットがあります。しかし、イノベーションやグローバル化が加速した現代において、自前主義にこだわることは非効率的かつDXを停滞させる一因であり、デメリットの方が大きいのではないでしょうか。

ラインビルダーは単に標準的に満足のいく生産ライン構築に貢献するというだけでなく、第三者の目をもって自社に最も適した生産ラインのあり方を考える「生産技術のプロフェッショナル」という役割も持ちます。ラインビルダーを上手く活用するには、「ラインビルダーの“目”と“技術”を借りる」という視点を持つことが非常に重要でしょう。

ラインビルダー活用の課題・問題点ランキング その解決方法は?

もちろん、ラインビルダーを頼るにあたっては不安点もあるでしょう。
前述の経済産業省のアンケート調査によると、ラインビルダー事業者の課題・問題点として多く寄せられた回答ランキングは以下の通りでした。

1位 特に問題はない(54.1%)
2位 ラインビルダーの最新技術への対応力が不足(19.2%)
3位 ラインビルダーの技能の低下(16.7%)
4位 ラインビルダーの不足(15.3%)
5位 ラインビルダーの財務基盤が脆弱(8.9%)
6位 ラインビルダーの海外展開余力が乏しい(3.6%)
7位 その他(3.2%)

「特に問題はない」を除くトップ2がいずれもラインビルダーの技術・技能への不安です。企業への個別ヒアリングにおいては国外のラインビルダーの能力を評価するコメントが寄せられており、その一方で日本国内ではラインビルダー自体の知名度が低く市場が活発化していないため十分に事業者が育っていないという問題があることが指摘されています。

企業がラインビルダーを活用し、ラインビルダー市場が活発化、人材やノウハウが育つことでさらに活用が進むというプラスのスパイラルが発生することが、この解決策となるでしょう。
これらは2015年の調査時点のデータであり、そこから現在に至るまでの間に一部の生産技術を担うSIerからラインビルダーへの規模拡大を狙う企業は増え、また業界を代表するような企業がラインビルダーを活用する事例も増加しています。

標準化のメリットを得るならば、まずは同種のラインの構築実績を持つラインビルダーを、規模を問わず探し、話を聞いてみることが一番の近道となるでしょう。

ラインビルダーの活用は自社の未来に関わる経営課題

自前主義から脱却し、効率的な生産ラインを構築することに大きく貢献してくれると期待されているラインビルダーについてご紹介しました。ラインビルダーの持つノウハウに、今後の構想も含めた自社に関する理解を掛け合わせることが、生産ラインの完成度を左右します。ラインビルダーの活用を検討される際は経営課題としてプロジェクト化し、取り組んでみてください。

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