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ERP(統合基幹業務システム)とは? 用途やメリット、導入の注意点を解説

レンテックインサイト編集部

企業の経営に資するデジタルツールとしてERP(統合基幹業務システム)について耳にしたことがある方は少なくないでしょう。しかし、「この業務に役立つ!」と直感で理解しやすいシステムではないため、そのメリットや機能について十分に把握できていない方もいるはずです。
そこで本記事では、ERPの意味やMRP(資材所要量計画)との違い、3つのメリットなど、知っておくべき要素をまとめてご紹介いたします!

ERP=「統合基幹業務システム」 MRPとの違いとは?

Enterprise Resources Planningの略語であるERPは、日本語で「統合基幹業務システム」と訳され、営業・販売、倉庫・物流、経理・財務、調達・管理、人事・給与など経営資源すべてをまとめて管理し有効活用する考え方及びそのためのシステムを指します。

システムとしてのERPが生まれたのは1973年、ドイツでのこと。効率を追い求め分業化が進められた結果、組織が部門や拠点ごとに分裂していて、企業の全体最適が達成されないことが問題視され、BPR(Business Process Re-engineering:業務改革)の必要性が叫ばれていたことがその背景にはありました。

それ以前の1960年代、半製品、部品、材料などの資材を適切な計画に基づいて仕入れ・生産する管理手法としてMRP(Material Requirement Planning:資材所要量計画)が誕生し、1980年代に差し掛かるころには資材に加えて費用、人材、設備まで統合するMRP2(Manufacturing Resource Planning:生産資源計画)の考えが生まれていました。

ERPはMRP2からさらに枠を広げ、生産部門内だけでなく、営業、開発から人事評価までまとめて管理することを見据えています。

日本にERPが入ってきたのは1990年代の事。バブル崩壊とITブームの萌芽により、コスト削減、組織合理化につなげようと多くの注目が集まりますが、期待過剰によりミスマッチが生じることも少なくなかったといいます。しかし、徐々に浸透が進み2011年のTechTargetジャパンの調査では、年商500億円以上の企業の75.0%、年商500億円未満の企業の27.0%がERPを導入していることが報告されています。

ERP導入に期待される3つのメリット

ERPを導入することでものづくり企業にどのようなメリットが得られるのか、3つの観点から見ていきましょう。

【1】経営判断の視野が広がる

受発注、生産個数、サイクルタイム、労働時間など多岐にわたるデータを一元管理することで、全体最適が図りやすくなります。そもそも企業の規模が大きくなるにつれ、各部門の状況が見えづらくなったという問題が、MRPやERP誕生の背景にありました。リアルタイムで現在の経営状況が見える化されるERPは、経営判断の視野を広げ、またそのスピードを加速させるといわれています。

【2】効率化につながる

情報を一元化することには、効率化というメリットもあります。業務ごとのシステム・データが統合されていない状況では、決算や報告にあたって再入力や加工、さらに二重入力といったミスの修正など多大な手間がかかってしまいます。事前にデータをまとめておき、用意された形式で呼び出せる状況を構築すればそのようなコストはかかりません。
また、顧客リストや生産データなど機密情報をまとめて管理することでセキュリティ管理の効率も高まります。

【3】企業のガバナンス強化につながる

データを一元管理することで意識が変わるのは経営層だけではありません。ERPはこれまで不透明だった各部門の状況をデータという形で可視化しやすくします。成果や行動の一端が見られる状況にあるという意識は、内部統制(ガバナンス)を強めることに役立つはずです。また、営業データと人事データなど意外なデータを掛け合わせてみることで見えてくるものがあり、オペレーション改善やよりよい社内環境構築につながります。

ERP導入において知っておきたい注意点

ERP導入にあたって押さえておいた方が良いポイントをご説明します。

“現状を洗い出すこと”が最重要事項のひとつ

ERPのみならず業務システム導入時には、「オンプレミスかクラウドか」「プライベートタイプかハイブリッドタイプか」などの問題があり、そのうえで個別の製品について検討する必要が生じます。
それにあたって必ず洗い出しておかなければならないのが“現在どれだけのシステムが各部門でどのように利用されているのか”ということです。この段階で思った以上に手間が生じますが、正しくERPを導入するためには避けられません。
それは、ERP導入がデータの取り扱いを抜本的に仕切りなおすプロジェクトだからです。
業務改革を起こすためには、現状を把握することが何より重要だということは覚えておきましょう。

各部門で構成されたERP導入のプロジェクトチームをつくる

現状を洗い出し、その点をもとにERP製品を検討、場合によってはゼロからERPについての知見を積み上げ、社内文化を考慮して定着を図る。
このようなプロセスを経てERP導入を成功させるには、各部門に通じた人員で構成されERP導入のゴールを共有したプロジェクトチームの構築が不可欠です。ERP導入の目的の一つは、大企業において見えづらくなりがちな「現場」を把握できるようにすることです。そのため、導入時に現場社員に積極的に参加してもらうことは避けられません。導入の目的から丁寧に共有し、常にチームと経営陣の目線を合わせましょう。

シングルインスタンスにこだわり過ぎない

「シングルインスタンス」とは、同一のERPシステムで全拠点の情報を統合管理するという考え方です。ERPの理想をつきつめるとシングルインスタンスに行きつきますが、本社と業態が違う拠点や文化の異なる海外拠点にまで同一のシステムを当てはめることで、かえって効率が下がってしまうケースがあります。
そこで解決手段の一つとして挙げられるのが「2層ERP」。基本のERPのほかに形態の異なる2層目のERPを導入し、両者を連携させるという考え方です。
最終的なゴールは自社の利益につなげることだということを忘れず、多角的な視点でERPのあるべき姿を模索しましょう。

苦労の分だけ価値も期待できるERP

ERPの意味や成り立ちから導入の注意点まで知っておいた方が良いポイントをまとめてご説明しました。
特定の業務ではなく全社最適を目指すシステムだからこそ、理解が難しく、その導入には手間がかかります。しかし、その分最適な環境が構築できた場合の価値も大きくなるはずです。
昨今はAIやIoTと連携し、より高度な経営判断を、スピード感を持って行えるERPが模索されているといいます。本記事で得た知識をもとに、自社に最適なERPのあり方について考えてみてください!

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