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加工組立製造(ディスクリート製造)のDX・プロセス製造のDX、考え方の違い

レンテックインサイト編集部

デジタル技術によって企業に変革をもたらし大きな付加価値を生みだすことを目指すDX。
その成功には “自社に適した手法を見つけられるか”が大きなカギとなってきます。
そこで手がかりの一つとしていただきたいのが、加工組立製造(ディスクリート製造)とプロセス製造の違いです。
この記事では、その具体的な内容やDXに及ぼす影響についてわかりやすくご説明します。

加工組立製造(ディスクリート製造)とプロセス製造の違いは「固体か流体か」

まずは、改めて、加工組立製造(ディスクリート製造)・プロセス製造の定義を確認しておきましょう。

加工組立製造(ディスクリート製造)は、主に固体部品を加工・または組み立てることにより製品を生み出します。メカ、エレキ、ソフトウエアに大別され、自動車、金属製品、電子部品・デバイス、紙加工品などを製造する企業が該当します。

プロセス製造は、主に流体の性質や特性を変化させることで製品を生み出します。素材、製品の両方の製造に関わり、化学、石油、食品、鉄鋼、パルプ、薬品、ガラス、繊維など広範な分野に携わります。

上記の定義はあくまで一般的な意見をまとめたものであり、明確に定められたものではありません。プラスチック製品のように両者のいずれに分類するかが難しいものや、ソフトウエアのように製造業に含めるかどうかについて意見が分かれる分野も存在します。

あくまで大まかな分類として「固体は加工組立、流体はプロセス」と覚えておきましょう。

両者の違いはDXにおけるゴール設定・ツール選定のヒントとなる

加工組立製造とプロセス製造は以下のような点で区別されます。

加工組立製造は、仕掛品を加工したり組み立てたりすることで製品を完成させていきます。その一方で、流体をそのまま製品へと加工するプロセス製造では、基本的には仕掛品の段階がありません。すなわち、仕掛品を在庫として管理する業務は、基本的に加工組立独自のものとなります。

また、仕掛品という“途中”の段階が発生するということは、前工程に戻りやすい──可逆性が高いということでもあります。そのため、加工組立製造の方が、リバースエンジニアリングが容易で、その分製品が模倣されやすいという特徴があります。

一方、プロセス製造は原材料の状態や環境がそのまま完成品の状態に反映されます。それぞれの有効期限という制限もあります。また、例えば原油を精製すると、ガソリン・灯油・重油・軽油など必然的に複数の製品が生まれます。このように同じ工程で複数の製品が生まれるのは加工組立製造にはない特徴で、その結果複数の連産品の管理が必要になります。

例えばIoT(モノのインターネット)で工場内のデータを取得するとき、加工組立製造では、製造段階ごとのサイクルタイムや不良率を計測することが、業務効率化に直接つながります。仕掛品とGPSやビーコンなど位置情報を発信できる指示書などをセットで動かすことで、現在の在庫状況や作業の進捗を詳細に把握することも可能になります。

一方、プロセス製造では温度・湿度や振動、画像など、工場内・製品のリアルタイムの状況をセンシングによって把握することが品質向上や工場の安定稼働に大きく寄与します。また、原材料ごとの有効期限や連産品を適切に管理するにあたって、生産管理システムやERP(統合基幹業務システム)が力を発揮します。

これはプロセス製造に限ったことではありませんが、両者の特徴を踏まえて適性に目を向けることは、ゴールの設定やツール選定において有効なヒントとなります。

DXに対する現在・未来の意識・意欲にも違いが

加工組立製造とプロセス製造の違いは、「DXに対する現在の意識・今後の意欲」にも違いがでています。
矢野経済研究所が2020年に実施したDXに関する国内企業の取り組み状況に関する業種別アンケートによると、下図のように、加工組立製造業は現在のDXに対する意識はやや、今後の取り組み意欲はそれ以上に高くなっています。
一方、プロセス製造業は現在の意識、今後の意欲ともにやや低いです。

加工組立製造ではIoTを生かしたプロセス改善が利益につながった成功事例が多く報告されており、また長く日本のものづくり産業を牽引してきたことが意欲につながっているのではないかと考えられます。プロセス製造のDXは現在が黎明期であり、今後、現在の意識・未来の意欲ともに伸びていくことが予想されます。

“違い”を意識することはDXの成功においても重要

加工組立(ディスクリート)製造、プロセス製造の違いという観点から製造業DXについて考えました。
両者の違いに合わせてこれまでも業界文化や業務プロセスに工夫が施されてきました。それはDXにおいても変わりありません。
もちろん、これらの分類の先に製品の違い、さらに企業の違いがあり最終的な成果につなげるにはそれらすべてを踏まえることが求められます。
その解像度を高めるための第一歩目として、本記事をご活用ください。

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