新型コロナウイルスの流行により、産業を問わずテレワーク(リモートワーク)の普及率が高まりました。とはいえ、「三現主義」が重視され、現場業務の欠かせない製造業ではテレワークの導入は難しいと最初からあきらめてしまっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、製造業ではテレワークの導入は可能なのか、可能だとすればどのようなポイントを押さえるべきかをわかりやすくご紹介します。
製造業とリモート化の近況についてもう少し詳しく見てみましょう。
パーソル総合研究所が2020年5月に発表した「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、同時点での製造業におけるテレワーク実施率は26.2%と全体の平均25.7%をわずかに上回っています。意外に感じられた方も少なくないのではないでしょうか。
もっとも、職種別に見たテレワーク実施率は、製造(組立・加工)が3.4%と報告されているため、やはり実際に手を動かす業務ではテレワークの導入がなかなか難しいことが推察されます。裏を返せば経営・営業・企画・マーケティングなど他部門でテレワークは思っている以上に普及しているということです。また、3.4%とはいえ製造(組立・加工)でもテレワークが可能だということでもあります。
同調査ではテレワークの非実施理由も集計されており、製造業で最も多くの割合を占めた回答は「テレワークを行える業務ではない(52.6%)」でした。続く2番目が「テレワーク制度が整備されていない(33.3%)」で3番目が「テレワークのためのICT環境(機器・システム)が整備されていない(13.9%)」です。業務の特性上やむをえない箇所はあるものの、制度や環境整備はどの企業も可能なはず。これらの要素に、製造業でリモート化を実現するカギがありそうです。
製造業でテレワークを実現するためにまず行うべきなのが「テレワークが可能な業務と難しい業務を仕分ける」という作業です。
前述の通り、試作品や材料、工具など実物が必要になる業務や、生産ラインのトラブル対応などどうしても現地に足を運ばなければできない仕事はあります。それらを無理にリモート化しようと頭を悩ませず、まずは以下のような業務からテレワークで行える制度・環境を整えることが求められます。
これらを実施するうえで注意すべき点が三つあります。
一つは、テレワークの導入目的やルールについて全社員に周知することです。強権的に制度が導入されれば、現場の作業員に不満が生じモチベーションの低下などの問題につながりかねません。新しい制度の導入時はトップダウンでスピード感を持って進めることも求められますが、同時に説明の機会をしっかりと設けてください。
二つ目が、セキュリティ管理についてきちんと設計しておくことです。例えばセキュリティ設定を施したデジタルデバイスを貸与する、ファイルの共有やデバイス利用のルールをその必要性やペナルティとともに周知するといった対策が挙げられます。ルール設計の参考資料としては、総務省の策定した「テレワークセキュリティガイドライン」を活用することをおすすめします。
最後に意識していただきたいのが、社内コミュニケーションを活発にすることです。テレワークが開始してから直接のやり取りがなくなり部下や同僚の様子が把握しにくくなった、チームとして一体感が感じにくくなったという声は少なくありません。幸いチャットツールやビデオ会議ツールなどは非常に充実してきています。たとえたわいのない雑談であっても、従業員のモチベーションや充実感に大きく寄与しているのです。
テレワークを導入するからこそ、コミュニケーションについて見直す機会としていただくとよいでしょう。
「製造業でテレワークは可能か?」という観点からデータをご紹介してきました。結論から言えば、事務作業や会議が発生する以上、製造業でもリモート化の余地は必ずあります。そして、実施することによって、思わぬ発見や企業の課題が見えてくるかもしれません。「まずはできるところから」導入することを検討してみてはいかがでしょうか。