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製造業の製品開発を強化するエンジニアリングチェーンマネジメント

レンテックインサイト編集部

IT Insight 製造業の製品開発を強化するエンジニアリングチェーンマネジメント

製造業におけるエンジニアリングチェーンマネジメントの重要性が増しています。開発スピードの高速化や製品の多様化が進行している昨今では、エンジニアリングチェーンの強化が求められているためです。

日本政府も「製造業DXレポート 〜エンジニアリングのニュー・ノーマル」の中で、コロナ禍で深刻な影響を受けたサプライチェーンのみではなく、エンジニアリングチェーンにも注目する必要があると発信しています。

本記事では、エンジニアリングチェーンの概要や、エンジニアリングチェーンを強化するためのマネジメントの方法などについて解説します。

エンジニアリングチェーンとは?

エンジニアリングチェーンは製造業における上流プロセスであり、具体的には企画構想・研究開発・製品設計・工程設計・製造準備といった一連の業務のことを指します。エンジニアリングチェーンで製品の価値が決まるといっても過言ではなく、製造業にとっては極めて重要なプロセスだといえます。

そして、エンジニアリングチェーンマネジメントとは、上述したエンジニアリングチェーンの各業務を効率化しつつ、全体の最適化と製品開発力の向上を目的として実施する取り組みです。

かつての日本では、有能な現場の人材が活躍することによって高い生産性を実現し、国際的な競争力を高めていました。しかし、近年ではデジタル技術を上手に活用する欧米やアジア企業の競争力が急激に高まっており、日本の製造業が相対的に弱体化する傾向にあります。

日本の製造業が国際的な競争力を高めるためには、デジタル技術を活用してエンジニアリングチェーンを再構築していく必要があると考えられています。

エンジニアリングチェーンとサプライチェーン

昨今では、サプライチェーンの強化も製造業の課題として頻繁に挙げられています。サプライチェーンとエンジニアリングチェーンは密接に関わっているため、どちらか一方だけではなく、両方に注目する必要があるでしょう。

サプライチェーンは、受注・生産計画・調達・製造・物流・アフターサービスといった生産・流通プロセスのことです。基本的には、エンジニアリングチェーンを通じて決定された製品仕様や製造工法に従ってサプライチェーンが構築されます。そのため、エンジニアリングチェーンを強化することは、同時にサプライチェーンを強化することにもつながると考えられます。

ただし、エンジニアリングチェーンだけを強化しても競争力を高めることはできません。激しい需要変動やサプライチェーンの寸断にも柔軟に対応できなければ、不確実性の高いこれからの時代で大きな損害を受けてしまう可能性があります。エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの両方を強化していくことが、製造業には求められているといえるでしょう。

エンジニアリングチェーンのよくある課題

多くの製造業のエンジニアリングチェーンには、共通する課題があります。エンジニアリングチェーンを強化する方法を検討する上で、どのような課題があるのかをみてみましょう。

エンジニアリングチェーンの中心になるのは開発・設計部門であり、図面や仕様書といった技術情報を扱って製品設計や工程設計を行っています。設計部門はCADなどのITツールを導入して図面や仕様書をデータ化しているものの、そのデータは各担当者や部門ごとに個別で管理されるケースが多いのが実情です。

その結果、エンジニアリングチェーン内の各プロセスでの情報共有が上手くいかない、エンジニアリングチェーン(設計部門)とサプライチェーン(製造部門)の連携が上手くいかない、といった課題を生んでいます。

また、データ化されているとはいっても図面や仕様書のほとんどは図と文字で形成されており、人が目で見て理解しなければ使えない状態になっています。

開発サイクルの高速化や、顧客ニーズに合わせた個別カスタマイズが求められている状況下において、データをすぐに活用できないというのは問題です。ちょっとした設計変更にも時間がかかってしまい、円滑な製品開発を阻害する要因になりかねません。

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エンジニアリングチェーンを強化する方法

エンジニアリングチェーンマネジメントの方向性として、データの統合と活用という二つのテーマが挙げられます。

サプライチェーンにおける基幹システムのように、一連の業務プロセスを統合して管理できるインフラがエンジニアリングチェーンには少ない傾向にあります。その結果、部門ごとに個別のデータ管理をするようになり、円滑な情報共有を阻害する要因となりました。

IT投資によってクラウド上にデータプラットフォームを構築するなど、エンジニアリングチェーンにまつわるデータを統合しておき、各部門が自由に利用できるようにする取り組みが求められています。サプライチェーンの持つデータとも連携できれば、より全体最適に近づけられるでしょう。

また、データを活用しやすくするためには、3DCAD化を進めることが有効です。3DCADは必ずしもすべての企業で活用が進んでいるとはいえませんが、次に挙げるようにさまざまなメリットがあり、エンジニアリングチェーンの強化に役立ちます。

  • 直感的に理解できるので、情報共有がしやすくなる
  • 質量や体積などより細かい製品仕様もデータ化できる
  • CAEによるシミュレーションなどを活用することで、製品開発を効率化できる
  • 3Dプリンタなどで試作品をすぐに製作できるため、製品開発のスピードを早められる

既に自動車業界では、3Dモデルによるシミュレーションを基本としたモデルベース開発が一般化しています。今後は他の業界にも広がっていくのではないでしょうか。

いずれにしても、エンジニアリングチェーンを強化するためにはデジタル技術の活用が必須であり、優先度を付けてIT投資を行っていかなければならないでしょう。

強固なエンジニアリングチェーンの構築が企業の競争力を高める

国際的な競争が激化する中で、エンジニアリングチェーンマネジメントへの取り組みが製造業に求められるようになりました。

日本政府も、製造業のDXと深く関わるテーマとしてエンジニアリングチェーンの強化を掲げており、サプライチェーンとともに強化していく必要があると発信しています。

エンジニアリングチェーンを強化するためにはデジタル技術の活用が有効であり、IT投資が不可欠になるでしょう。サプライチェーンの強化にも意識を向けつつ、エンジニアリングチェーンにデジタル技術を導入して競争力を高めていきたいものです。

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