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アフターコロナを見据えて考えておきたいSCM(サプライチェーンマネジメント)

レンテックインサイト編集部

IT Insight アフターコロナを見据えて考えておきたいSCM(サプライチェーンマネジメント)

SCM(サプライチェーンマネジメント)があらためて注目を集めています。

コロナ禍では部品の供給停止や需要急減によって製造業は大きな打撃を受けることになりました。しかし、多くの企業が苦しむ中であっても、強固なサプライチェーンを構築していた企業は影響を抑えて、早期に復旧することができています。コロナ禍でSCMの重要性を認識したことから、アフターコロナを見据えて自社のSCMについて考えておきたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、SCMとは何かを解説するとともに、アフターコロナを見据えた新しいSCMの形や、SCMへの取り組みによってコロナ禍を上手く乗り越えた企業の事例などをご紹介します。

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、サプライチェーン全体を一元管理して情報を共有し、個別のプロセスの効率化だけでなく全体最適を図ることを指します。

ここでいうサプライチェーンとは、製造業における生産・流通プロセスのことです。具体的には、次のような一連の流れを指します。

  1. 原材料や部品の調達
  2. 生産
  3. 在庫
  4. 物流
  5. 販売

ある製品が顧客の手に届くまでには、さまざまなプロセスを経ています。しかし、各プロセスは別々の企業や部門が担当することが多いため、上手く情報が共有されずにムダが発生しやすい傾向にあります。

SCMでは、製品が顧客の手に届くまでのサプライチェーン全体を、ITツールなどを用いて管理します。そして、各プロセスが持つ情報を共有・連携させることにより、需要予測に応じた生産計画の立案、最適な調達先の選定、在庫の適正化、リードタイムの短縮、コスト削減、といったようにサプライチェーン全体を最適化することを目指しているのです。

SCMへの取り組みが重要な理由

2021年現在、SCMへの取り組みが注目を集めています。実は、SCMは2000年代にもトレンドになったことがあり、多くの企業が強固なサプライチェーンを構築しようとプロジェクトを立ち上げました。しかし、当時はIT技術が今ほど発達しておらず、多くの企業のSCMプロジェクトは中途半端なままに終わってしまったという経緯があります。

今、あらためてSCMが注目を集めているのはなぜなのでしょうか。ここでは、主な理由として3つのことをご紹介します。

グローバル化によるサプライチェーンの複雑化

SCMが再注目される理由の一つに、グローバル化が更に進んでサプライチェーンがより複雑化したことが挙げられます。

現在は、調達先、生産現場、販売先のすべてにおいてグローバル化が進んでおり、世界中にまたがる膨大な情報をアナログな手法では管理しきれなくなっています。また、企業間のグローバルな競争が激化しており、リードタイムの短縮やコスト削減に取り組まないと競合企業に負けてしまう可能性があります。

そのため、あらためてSCMに取り組み、サプライチェーンの強化を図る企業が増加しているのです。

ビジネス環境の変化への対応

SCMが再注目される理由の二つ目は、ビジネス環境の変化への対応が企業に求められていることです。

顧客ニーズが多様化し、需要変動の激しさが増している昨今では、変化に柔軟に対応できるサプライチェーンを構築しなければ損失が発生してしまう可能性があります。実際に、コロナ禍では物流や人の移動が極端に制限されたことによって製造業のサプライチェーンが寸断され、大きな打撃を受けることになりました。

コロナ禍は極端な例ではなく、今後も別の要因によって一瞬のうちにビジネス環境が変化する可能性があります。そのため、アフターコロナを見据えてサプライチェーンの再構築に取り組もうと考えている企業が増加しています。

IT技術の革新

IT技術の革新も、SCMが再注目されるようになった理由として挙げられます。

SCMがトレンドになった2000年代と異なり、現在はIT技術が大幅に進歩しています。IoTによるリアルタイムな情報収集、ビッグデータの分析、AIによる需要予測など、SCMに生かせるさまざまなIT技術が実用化されているため、過去のSCMの手法を見直すきっかけとなったのです。

新たなIT技術を活用して、今まで以上に強固なサプライチェーンを構築しようという動きが企業の中で高まっています。

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アフターコロナで重要な新しいSCMの形

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は、各企業のサプライチェーンに大きな影響を与えました。この経験を踏まえつつ、アフターコロナを見据えて新しいSCMの形を考える必要があります。

まずは、コロナ禍で明確になった既存のサプライチェーンの課題を振り返ってみましょう。

  • 急激な需要減少による在庫の蓄積
  • 需要予測ができず、最適な生産計画が立てられない
  • 調達先の稼働停止や、国際的な人やモノの移動制限によるサプライチェーンの寸断
  • 属人的な管理のため、他の人が素早く対応できない
  • 非対面での業務に慣れておらず、効率が悪くなる

アフターコロナでは、これらの課題を克服できるようにサプライチェーンの在り方を変える必要があります。また、リモート勤務の増加など、コロナ禍で人々の働き方が大きく変化したことも考慮する必要があるでしょう。

これからの時代に合ったサプライチェーンを再構築する上で、求められるであろう要件をいくつかご紹介します。

  • IoTなどを用いてサプライチェーン全体をリアルタイムで可視化すること
  • サプライチェーン全体を統括して管理できる組織体制を構築すること
  • AIなどを用いて需要予測の精度を向上させること
  • ロボットなどを用いて各プロセスの効率化を進めること
  • 調達先や物流網を切り替えられるように、代替候補を確保しておくこと
  • ITツールなどを用いて業務の標準化・効率化を行い、属人的なプロセスを排除すること

サプライチェーンを一から作り直すことは現実的ではないため、自社にとって特に重要な要件を見極めることが重要です。デジタル技術を活用するなどして、少しずつでもサプライチェーンを再構築することを目指すのがよいでしょう。

強固なサプライチェーンを構築した事例

コロナ禍という非常事態の中にあっても、SCMに取り組んで強固なサプライチェーンを構築していた企業が強さを発揮したという事例があります。

自動車メーカーであるA社は、自社で開発したサプライチェーンの情報システムを活用することで、強固なサプライチェーンを構築していました。システム内には、自動車の製造に必要な部品や部材の品目数や国内外の部品メーカーの情報が管理されており、数十万件のデータが保有されていたといいます。それらのデータを元にして非常事態にも部品生産の流れを早急に把握でき、代替生産の対応も可能でした。

また、A社はサプライヤーの支援にもすぐに取り組みました。新型コロナウィルスの感染が拡大した時点でインターネットを通じて部品メーカー各社の課題のヒアリングを行い、ティア1メーカーだけでなく、1万社以上のティア2メーカーにもコンタクトを取ったといいます。A社はサプライヤーへの生産性改善や物流費用の調整などの支援を行ったとのことです。

結果として、他の自動車メーカーの多くが苦境だった2020年4月から6月期でも、A社は営業黒字を確保することに成功します。また、一時期は全世界の工場が稼働停止に追い込まれますが、部品調達が原因の生産停止はごく一部を除いてなく、代替生産の対応などによってサプライチェーンの寸断を未然に防ぐことができました。

A社でのSCMの要点

  • 自社開発した情報システムで、サプライチェーンに関する数十万件のデータを管理
  • サプライチェーンの問題点を早急に把握し、代替生産やサプライヤーの支援を実施
  • コロナ禍においても営業黒字を確保し、サプライチェーンの寸断を未然に防ぐことに成功

SCMへの取り組みが企業の成長を後押しする

SCMに力を入れて強固なサプライチェーンを構築できていた企業は、コロナ禍においても柔軟に対応することで、影響を最小限に抑えることに成功しました。これからの変化の激しい時代においては、いつ、どんな要因で今回のコロナ禍のようなことが発生するか予測できないため、常に備えておく必要があるでしょう。

SCMの重要性を認識した今こそ、企業の競争力を維持して継続的に成長するために、サプライチェーンの再構築に取り組んでおきたいものです。

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