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2021年度のFA・自動化市場の景気はどうなる?

レンテックインサイト編集部

根強いスマートファクトリー需要

2020年はコロナ禍で世界的に厳しい1年となりましたが、2021年は少しずつ回復に向かっています。設備投資は冷え込んだままとは言え、FA・制御機器の主戦場となる工場や倉庫等の人手不足、自動化の需要は根強く残っています。コロナ禍で3密の回避やリモートワークが推奨され、各種装置や人の配置の仕方も含めた新たな形の工場・倉庫の模索が続く状況も追い風です。DXやニューノーマルと言っても、工場の目指すべき姿はスマートファクトリーであることに変わりはありません。その市場は今後も堅調に進むと見られています。

それを裏付けるデータとして、富士経済の調査によると、2025年のスマートファクトリー関連システム・製品の世界市場は、19年と比較して2.4倍の5兆5446億円に拡大する見込みと予測しています。
20年はコロナ禍の影響を受けつつも市場は堅調に伸び、特にMESやPLMなどインテリジェント生産システム、IoTやSCADAなどの見える化・活人システムといった製造業向けのITシステムが好調でした。21年以降はIT関連投資や機器・装置などへの設備投資が再開し、工場DXに必要なスマートファクトリー関連システム・製品の市場拡大が期待されます。
製品別では、産業用PCやエッジコントローラ等のインテリジェントコントローラは20年の1853億円から25年には2倍強となる3858億円へ。協働ロボットやリニア搬送システム、アーム付AGVなどインテリジェント製造・搬送装置は20年の1939億円から25年には2.5倍となる5483億円まで拡大すると見込まれています。またローカル5Gはこれから環境整備と利用が本格化し、25年には20年の112倍の4500億円まで成長すると見られています。

人手不足で自動化ニーズの高い物流倉庫

物流関連もFA・自動化の重要市場です。ネット通販の拡大で物流市場はとても活況ですが、一方で人手不足がとても深刻化しており、自動化ニーズは非常に高いものがあります。既存施設へのロボットや自動化設備の導入・置き換えはもちろん、新たな物流施設の新設も増加しています。富士経済の調査によると、次世代物流システム・ビジネス市場の市場規模は、20年の3823億円に対し、25年には71.2%増となる6468億円まで拡大する見通しとなっています。
多品種、多頻度、小口配送への対応が主な課題となっていて、倉庫ではそれに対応するための自動化需要が大きいとのこと。ピッキングやデパレタイズなど自動化が難しかった工程へのロボット導入や、多品種少量生産や季節変動への対応としてガイドレスAGVや無人フォークリフト、また立体自動倉庫システムの規模も大きくなっており、ソーティングロボットシステムや棚搬送AGVにも注目が集まっています。

自動化・省力化を支えるFA機器

こうしたスマートファクトリーや物流関連の回復はFA機器にも良い影響を及ぼすことが期待されています。
日本電気制御機器工業会(NECA)の電気制御機器の21年度出荷見通しによると、21年度の出荷総額は6520億円で、前年度比8%増となると見られています。21年度は19年度並みか少し良い程度と考えてもいいでしょう。
国内・輸出ともに好調の見通しで、国内は7.5%増の3760億円。新型コロナウィルスのワクチン接種が進むことによって市場環境が改善し、さらにDX拡大や環境対策への投資が増えることで半導体製造装置や工作機械、ロボット、自動車といった産業の回復が期待されます。
輸出も好調で、8.7%増加の2760 億円となる見込みです。昨年から中国市場は回復が顕著ですが、欧米も回復してきているのが追い風です。
日本電機工業会(JEMA)の電気機器見通しでも、やはり同様の見通し。21年度の重電機器の国内生産は前年度比1.5%増の3兆1035億円と見ています。中国やアメリカの半導体と電子部品産業向けの設備投資が見込まれ、国内外での設備投資も緩やかに回復すると予測しています。
電子部品や半導体産業向けの好調さが続くサーボモータは、7.2%増の860億7200万円。交流電動機は国内の設備投資が回復して2645億5000万円(4.2%増)。小形電動機は3110億円(5.2%増)の見通しで、モータ関連は好調となりそうです。
開閉制御装置も2.6%増の1兆3620億円。監視制御装置は国内製造業向けが回復し、2%増の2397億円。低圧開閉器・制御機器もアジアの設備投資回復が追い風となり、4511億円(4.1%増)と順調に進む見通しです。

半導体製造装置、ロボットは堅調。工作機械は回復期待

リーマンショック並みの厳しさに見舞われた機械産業ですが、すでに景気は底を打ち、少しずつ回復してきています。特に中国向けが絶好調で、急速な回復が期待されています。
コロナ禍でも影響が少なく、逆に好調となっているのが半導体業界。半導体製造装置は、テレワークや巣篭もり需要の増大でデータセンター向けの半導体需要が急増し、さらに5GやAI、IoT、自動運転などの需要がますます高まっています。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると、半導体製造装置の出荷額は21年度に2兆9100億円、22年度は4.5%増の3兆422億円となり、統計市場初の3兆円突破になると見込んでいます。
産業用ロボットもそれほど悪い状況にはなく、日本ロボット工業会の会員ベースでは、20年の受注額(同会会員ベース)は7255億円で、19年の6682億円を572億円上回っています。コロナ禍でロボットを使った自動化・省人化への関心がさらに高まるなか、普及ペースは早くなるかもしれませんね。
20年の工作機械は大打撃を受け、受注総額は10年ぶりに1兆円を下回りました。それでも5月を底に回復してきていて、11月からは5カ月連続で前年を上回っています。

いまだコロナ禍はおさまらず、市場環境は厳しい状態が続いているとは言え、製造業の市況は着実に回復基調に戻りつつあります。特にFA・自動化市場は人手不足、スマートファクトリー、DXと好材料が多く、ニーズも強くあります。いまは多くの人が変革を意識している時であり、状況としてはチャンスが来ています。

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