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今さら聞けないデジタルトランスフォーメーション

レンテックインサイト編集部

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このコラムでは、デジタルトランスフォーメーション時代のシステム導入方法論やマネジメント方式およびIT部門の役割などについて書いてまいります。

今回は初回ということで、デジタルトランスフォーメーションとは何かについて解説したいと思います。

デジタルトランスフォーメーションとは何か?

デジタルトランスフォーメーションとは、「ITの浸透が、人々の生活や仕事をあらゆる面で良い方向に変化させる」という意味です。 2004年にスウェーデンのウメオ大学のリック・ストールマン教授が提唱したとされています。


しかし、この定義ではピンとこないのではないでしょうか。 なぜならITは1950年頃から存在しており、既に60年以上かけてじわじわと浸透し、その間に人々の生活や仕事は見違えるように変わっているからです。
では、なぜ今、デジタルトランスフォーメーションなのでしょうか?

デジタル化とは?

デジタルトランスフォーメーションと似た言葉に、「デジタル化(デジタライゼーション)」があります。実際にはあまり区別せずに使われているようですが、厳密には違うものです。

 

デジタル化とは、アナログなプロセスをデジタルなプロセスにすることを言います。 例えばものを買うことを考えてください。今までは、物理的なものであるお金を使って支払いをするのが普通でした。 しかし今はスマートフォンの電子マネーでも支払えます。 お金のような「アナログ」なものを使わなくても、「デジタル」データの交換だけで支払いが済むようになったわけです。

 

実はこのような仕組みは昔からあります。 オンラインバンキングでの決済もデジタルデータが動くだけです。 電車や飛行機の座席予約システムは、座席というアナログなものをデジタルデータ化したものだと言えます。

 

最近になって「デジタル化」ということが盛んに言われるようになったのは、物理的なものがどんどんデジタルに置き換えられているからです。 UberやAirbnbも配車や空きスペースといったアナログなものをデジタル化しているのです。 今流行りのシェアリングサービスのほとんどがデジタル化によるものです。

 

デジタル化が進展していくと生活は便利に、すなわち良い方向に変化します。 つまりデジタル化は手段であり、デジタルトランスフォーメーションはその結果だということです。
ただ両者は密接に結びついていますので、あまり厳密に使い分けなくてもいいのかもしれません。

攻めのITと守りのIT

これも最近よく聞かれる言葉に、「攻めのIT」と「守りのIT」という言葉があります。 経済産業省のサイトでは、攻めのITとは「ITの活用による企業の製品・サービス開発強化やビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出やそれを通じた競争力の強化を目指す」もの、 守りのITとは「社内の業務効率化・コスト削減」を目的としたものと説明されています。

 

「これからは攻めのITだ」という言い方がされますが、それは守りのITが不要になったという意味ではありません。 サッカーでも将棋でも攻めと守りの両方が重要であり、企業経営でも全く同じです。
ただ、日本では今までは攻めのITへの投資があまりにも少なかったのと、コスト面も含めた現実的な手段が登場してきたため、 攻めのITの重要性が強く言われるようになったのです。

 

デジタルトランスフォーメーションも「生活や仕事を良い方向に変える」という未来志向のものであり、攻めのITと相性が良いことはお分かりいただけるでしょう。 また攻めのITは、デジタル化が前提になることが大半です。
そこで攻めのITの例をいくつか見ていきましょう (経済産業省の「攻めのIT経営 中小企業百選」を基にまとめました)。

 

新潟県にある、そうえん農場では農地を増やしつつ、高品質のコメ作りを維持しました。 具体的な手段としては、今までノートに記載していた作業記録をクラウドシステムに変更、水田に水位や水温、気温などを計測できるセンサーを設置して自動送信し、タブレットで閲覧できるようにしました。 設定値を超えた場合にはアラートが出るので、水管理の作業時間は従来の半分になり、それでいて出荷米は100%一等米、同じ人数で生産量20%増という成果を達成しました。

 

長崎県のメトロ書店では、入荷した書籍のバーコードをハンディーターミナルで読み取ることで陳列のための工数を大幅に削減し、POSシステムとも連携して、入荷、販売、在庫管理を効率化しました。 必ず置いておきたい本の自動発注、および売れ行き動向に基づく提案でのリピーター増を実現しました。

 

築地市場で卸業を営む築地太田は、これまで顧客がFAXや電話でしか発注できなかったものをインターネットからも発注できるようなシステムを構築しました。 当初は国内だけでしたが、海外取引も実現し、SNSなどを通じて海外に築地市場内の様子を発信することで海外取引が大きく伸びています。

 

これらの事例では、センサー、ハンディーターミナルおよびSNSなどを活用したデジタル化により、売上増や顧客増を実現しています。
素朴な事例に見えるかもしれませんが、企業の中にはまだまだ膨大なアナログプロセスが存在しています。 デジタルトランスフォーメーションを進めるには、アナログプロセスをじわじわと少しずつデジタル化していくことが大切です。

システム導入のアプローチが大きく変わる

 デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、システム導入のアプローチが大きく変化していきます。

 

従来のシステム導入ではプログラム開発が中心でした。DOA(Data指向アプローチ)という方法論もありましたが、これはデータに着目してプログラムの機能や作り方を考えるというものでした。
プログラム開発がなくなるわけではありませんが(特に守りのITでは)、現在ではサンプルデータを見ながら、データをどのように使って業務をAIに自動化させるかというアプローチが現実のものになりつつあります。

 

またクラウドをどれだけ有効利用するかが重要になっています。膨大なデータを蓄積しておくにはクラウドの方がコスト面で有利だからです。 ビジネスのスピード感が高まるため、仮説を素早く検証することが必要になりますが、そのための環境もクラウドならすぐに用意できます。
物理的なものをデジタル化するにあたってはIoT(モノのインターネット:Internet of Things)を活用しなければなりません。IoTデータを収集する際にもクラウドは必須になります。

 

システム導入および改良のスパンがどんどん短くなっていくため、DevOps(開発と運用の一体化)を実現するための仕組みおよび体制作りも重要になっていきます。

 

データ指向でシステム導入をするためには、今までのようにIT部門が主導でシステム導入を進めるのではなく、データの内容すなわち業務が分かる現業部門が主導していく方が効率的になります。 これはIT部門も現業部門もIT導入における役割が大きく変わっていくということです。 具体的にどのように変わるかについては、次回以降詳しく解説していきます。

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