3Dプリンター Insight

Afterコロナの世界で、3Dプリンターがサプライチェーンを変える~Markforged社レポート~

レンテックインサイト編集部

3Dプリンター Insight Afterコロナの世界で、3Dプリンターがサプライチェーンを変える~Markforged社レポート~

マークフォージド・ジャパン社ショールーム

 3Dプリンターで最終製品を出力する際に課題となるのが、「強度」「重量」「コスト」のバランスです。Markforged社は、連続炭素繊維を芯材として出力する独自の特許技術により、安価な素材で強度と軽量性を兼ね備えた造形を実現しています。その魅力についてマークフォージド・ジャパン・3Dプリンティング株式会社【 ストラテジック・セールスマネージャー】工藤信男氏にお話を伺いました。

3Dプリンターでものづくりの革新を目指す

Markforged社は、2013年に現CEOのグレッグ・マーク氏により設立されました。

グレッグ氏が過去に設立した会社で、海軍向けのソーラー電池システムの試作を任され、スピーディーな納品のために3Dプリンターを利用したのがきっかけです。 試作品だけでなく、最終製品も3Dプリンターで作れるのではないかと考えたグレッグ 氏は、プラスチックの弱点である強度の課題を解決するために、合成樹脂にF1レースカーや航空機に使用される炭素繊維を入れることを考えました。この製品に手ごたえを感じたため、同社を設立しました。

同社は幅広い素材と連続炭素繊維を組み合わせて出力できるコンポジット3Dプリンターと金属3Dプリンターをラインアップとして取り揃えています。それに加えて「ONYX(オニキス)」をはじめとした幅広い材料、スライシングができる専用のソフトウエア「Eiger」をトータルで提供できるという特徴があります。

「価格が50万円以上の工業向け3Dプリンターにおいて、ストラタシス社についで2位、金属プリンタでも3位のマーケットシェア」(工藤氏)と、老舗メーカーに交じって高いマーケットシェアを獲得している秘密は、金属並みの強度と軽量性、そして低コスト・短期間で製造できるというメリットを併せ持つソリューションにあると言えます。

連続炭素繊維の素材で金属並みの強度を実現

同社の最大の特徴は、連続炭素繊維をそのまま使用して造形できる技術です。炭素繊維は連続した一続きの状態で初めて強度が高くなりますが、普通のFDM(熱溶解積層)方式用出力ノズルでは、連続炭素繊維をそのまま出力することができません。そのため従来型の3Dプリンターは、短繊維をプラスチックに練りこんだ素材を使用していますが、強度には依然として課題がありました。

同社製3Dプリンターは、長いままの炭素繊維と他の素材を組み合わせて造形する独自特許技術の方式「コンポジット造形」によって、強度の課題を解消します。「例えて言うなら、連続炭素繊維は鉄筋コンクリートの鉄筋の役割を果たしています。ONYXやナイロン樹脂が連続炭素繊維を覆う形で造形することで、内部の構造を強化できるのが、他社にはない強みです。」(工藤氏)

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コンポジットプリンターの特徴

以下の動画では、連続炭素繊維とONYXで造形したもの(動画・左)と一般的な樹脂の材料であるPLA(動画・中央)、ABS(動画・右)の強度を試験しています。細いピンのような形状をしたものが、5kgの重りを下げても耐えられるほどの強度を備えています。

連続炭素繊維とONYXによる造形物をPLA・ABSの造形物と比較

同社で取り扱う連続炭素繊維には4種類あり、強度が最も高く軽量の「カーボンファイバー」、コストを重視した「ファイバーグラス」、耐衝撃性を強化した「ケブラー」、高温環境下での使用を想定した「HSHT ファイバーグラス」から、特性に応じて選ぶことができます。また、連続炭素繊維と組み合わせる素材もONYXのほかに、難燃性を備えた「ONYX FR」があります。 (ONYX FRはハイエンドのXシリーズでのみ使用可能) 連続炭素繊維と他の素材を組み合わせることにより、多様な環境での使用に耐えうるスペックで出力でき、用途の幅を格段に広げることができます。

幅広い用途で活用される「Mark Two」

Markforged社のラインアップのなかで、連続炭素繊維に対応した3Dプリンターは数 種類あります。今回はその中でも はじめての導入に おすすめのモデルを紹介していただきました。

それが、デスクトップタイプの「Mark Two」です。

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Markforged社独自の長繊維によって高強度の3Dプリントが可能な「Mark Two」

ビルド容積が大きくレーザーレベリング・スキャン機能が付いたハイエンド機「Xシリーズ」もありますが、「Mark Twoも幅広い材料をカバーしているため、Xシリーズ同様、Mark Twoを導入されるお客さまも非常に多いです。」(工藤氏)

Mark Twoは、工場内の生産設備・治具に多く活用されています。今までこうしたものは金属で作られていましたが、弊社のコンポジット3Dプリンターで作ると本体側に傷がつきにくいという利点があります。

また、複雑な形状の部品を挟み込む治具の場合、今まではいくつかの治具を組み合わせる必要がありましたが、3Dプリンターで製作する場合は、製品を反転する形状で出力すればよいため、リードタイム、コストが劇的に削減できます。

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ロボットアームのグリッパー

Mark Twoは他にも設計段階で動作させて負荷などを検証する機能試作や、ドローンの筐体、サーフィンのフィンといった最終製品の製造にも活用されています。

Mark Twoは、日本では製造業を中心に大手メーカーから中小企業まで、幅広く導入されています。「機能試作において、金属で作っていた試作の部品を置き換えたところ、約2カ月かかっていたリードタイムが1日となり短縮に成功したお客さまもいます。」(工藤氏)

また、スライシングソフト「Eiger」が標準で搭載されています。Eigerは設計モデルを積層用にスライスするソフトで、クラウド版とオフライン版(有償)が提供されています。「他社製品では、ユーザーが別途ソフトウエアを用意する場合もあります。その点、当社3Dプリンター製品ではその必要がないため、お客さまにはメリットを感じていただいていますね。」(工藤氏)

デジタル製造革命を見据えた3Dプリンターの進化

今後の3Dプリンターの課題として、工藤氏は三つのポイントを挙げました。それが「強度のシミュレーション」「導入時の予算確保」「設計と造形物の誤差」です。

素材のバリエーションや連続炭素繊維の選択による強度の変化が非常に重要になります。そこで、Markforged社はMSC Software Corporation社と提携し、CADデータ上で材料の条件を指定して、強度シミュレーションができるCAE解析が可能になるソフトウエアを開発しています。※Xシリーズのみ対応の予定

二つ目に挙げられた導入時の課題については、特に日本の企業では固定資産となる設備の即時の導入が難しいという側面があります。「この課題に対応する手段として、予算を確保するまでの期間に、例えばオリックス・レンテック社のレンタルサービスとして提供するということができればと考えています。」(工藤氏)

三つ目の課題は、設計モデルのデータと実際に造形したものとの間で生じる誤差です。この課題を解決するために、Markforged社ではプラットフォーム「Blacksmith (ブラックスミス)」を開発しています。 これは、3Dスキャナで造形物を計測し、計測した結果をAI学習することで、自動的に設計モデルとの誤差を調整し、仕様を満たさない部品を製造するロスを防ぐことができます。 「計測したデータはナレッジベースに蓄積され、他の企業と共有することで、最終的に世界中の工場が効率化され、デジタル製造革命が実現する足掛かりになるでしょう。」(工藤氏)※BlasksmithはハイエンドのX7・金属3DプリンターMetalXにのみ対応予定

移動の制約を受けるwithコロナの時代、3Dプリンターがサプライチェーンを変える

「人類の歴史の中で、ものを作る技術は大きく分ければ『たたく』『削る』『溶かす』の三つしかありませんでした。インダストリー4.0の時代を迎え、3Dプリンターの『積む(積層)』がもう一つの技術として更に確固たる位置づけがなされるでしょう。」と工藤氏は3Dプリンターが果たす役割について語ります。

3Dプリンターがもたらす革新として、工藤氏は「デジタルインベントリーを挙げます。今後あらゆるものが3Dプリンターで出力できるようになれば、直接モノを輸送する必要がなくなります。つまり設計データと材料さえあれば、モノ自体が移動しなくても必要とされる場所へモノを届けることができるということになります。これは大企業にとってカーボン・オフセットへの貢献という環境的側面も含んでいます。

例えば海外製品を購入して故障した場合、今までは部品を海外から取り寄せる必要がありましたが、現地の営業所で部品を製造することも可能になるかもしれません。

「新型コロナウイルスの影響で、サプライチェーンが断絶する現象が起きています。この断絶を埋めるべく、サプライチェーンの一翼を3Dプリンターで担っていきたいですね。」と工藤氏は締めくくりました。

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