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3Dプリンターを用いた義手や義足の製作について、メリットや課題を解説

レンテックインサイト編集部

3Dプリンターを用いた義手や義足の製作について、メリットや課題を解説

3Dプリンターの技術の進化により、手足を失った人々に新しい可能性を提供できるようになってきています。本記事では3Dプリンターの技術による義肢の製作について、メリットや課題を解説します。

3Dプリンターで製作する義手、義足

手足を失った人が装着する義手や義足は一般的に義肢と呼ばれており、3Dプリンターの技術を用いて義肢を製作する試みが進んでいます。3Dプリンターは複雑な形状でも容易に製作できるため、義肢のように各個人で仕様が異なっても短期間かつ低コストで製作できます。

義肢を製作するには、3Dスキャナで身体の切断部位を正確にスキャンし、3D CADを用いてスキャンデータを補正し、3Dプリンターで造形する、という流れになります。3Dプリンターを用いると、身体の切断端の形状に合わせた製作や特殊な形状への対応も比較的容易に行えます。また、高剛性が必要な部分と柔軟性が必要な部分で異なる素材を使用することも可能です。

3Dプリンターを活用するメリット

一般的な製作方法と比べると、3Dプリンターを用いることでより低コストで義肢を製作できます。また3Dプリンターは少量多品種の製作に適しており、個人に合わせたデザインやカスタマイズも容易です。

低コストで提供しやすい

3Dプリンターによる製作は従来の方法に比べてコストを削減できる可能性があり、一般的な義肢の約10分の1まで価格を抑えられるケースもあります。製作にかかるコストが抑えられるため、これまで高額な義手や義足の購入を控えていた人にも手が届きやすくなるでしょう。また、3Dモデルのデータがあれば製作が可能となるため、幅広い地域への展開がしやすくなります。

デザインが豊富になりカスタマイズも可能

3Dプリンターを用いることで、形状の異なる複数パターンの義肢を短時間で製作できるようになります。実際に、3Dプリンターで製作することを前提としてデザイン性に富んだ義肢も生み出されています。

3Dプリンターであればカスタマイズがしやすく、ユーザーのニーズに応じた義肢も作成できます。効率的な物のつかみ方ができたり、特定の作業に適した動きができたりする義肢もあります。材料として樹脂のみを利用することで、金属探知センサーに反応せず、水に濡れても錆を生じないなど、日常生活での利便性を高めるような特徴を持つ義肢も製作できます。

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3Dプリンターによる製作の課題

義肢はオーダーメイド品が一般的であり、品質の安定性が課題となります。3Dプリンターによる義肢の製作においては品質を担保するため、通常の義肢製作を行う義肢装具士に加えて、3Dプリンターを扱うスキルのある人材が必要です。

品質の安定性

義肢は個人に合わせた形状のオーダーメイド品であるため、品質の安定化が困難です。また、3Dプリンターでは多くの場合PLAやABSなどの樹脂素材を使用していますが、これらの素材で製作された義肢は、耐久性や強度が一般的な義肢よりも低くなる可能性があります。強度を重視するなら金属製を検討するのもよいでしょう。ただし、材料によって価格が異なり、樹脂製は比較的安価ですが金属製の義肢は高価になりやすいのでご注意ください。

3Dプリンターの技術を持つ人材が必要

患者の採型や採寸を行い、義手や義足といった義肢を製作する専門家を義肢装具士と呼びます。3Dプリンター製の義肢を製作する場合、義肢自体の知識のある義肢装具士に加えて3Dプリンターの操作やメンテナンス、機械設計などの知識を持つ人材も必要です。

製作した義肢は実際に患者が試着して細かい修正を行います。3Dプリンター製の義肢であれば、試着した結果に合わせて3Dデータを修正し、再製作するという手順を踏まなければなりません。義肢の調整の手間を削減するため、患者の体をスキャンしたデータを元にAI技術を用いて義肢のデータを補正する試みも行われています。

3Dプリンターの活用で幅広い人へ義肢を提供できる

身体の失われた部分を3Dスキャンし、そのデータに基づいて個別に調整された義肢を3Dプリンターで製作する試みについてご紹介しました。従来の製作手段と比べて、低コストで多様なデザインの義肢を製作できることがメリットです。ただし、3Dプリンター製の義肢の品質や専門的な技術者の需要などの課題も存在します。

高額であるために義肢を購入できなかったり、義肢を入手できる環境がなかったりといった理由で、義肢を利用できない人が多く存在します。3Dプリンターを用いた義肢が普及すれば、義手や義足を必要とする多くの人に届けられる可能性があります。3Dプリンターを用いた義肢製作の試みについて、今後もぜひ注目してみてください。

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