本記事では3DプリンターがSDGsの達成にどう貢献するのかについて、実際の導入事例とともに解説します。
3Dプリンター技術は、非常に高価で未来のテクノロジーとされることもありましたが、実用化が進みプリンター本体やその材料を以前よりも安価に手に入れることができるようになり、今では身近な技術となりつつあります。企業での導入実績も増えており、その生産性の高さに注目が集まる一方、持続可能な社会を形成する上でも期待されています。
3Dプリンターは、プラスチックなどの原材料を使用して、あらかじめ設計した好きな形状の3Dモデルを現実世界に印刷できる技術です。立体物をプリンター一台で造形できるので、製造業や建設業など、多様な領域で活躍しています。
3Dプリンター導入のメリットは業務負担の改善や品質向上など、多岐にわたります。3Dモデルをあらかじめ作っておくだけで、あとはプリンターが自動で立体物を生成してくれるため、人間のようにケアレスミスの心配がありません。
また、生成にかかる時間も近年の3Dプリンターでは短縮が進み、短期間で複雑な形状のオブジェクトを生成することも可能です。従来の工法よりも費用が安価になるケースも増えており、今後はさらに導入の幅が広くなっていくことが期待されます。
このように、3Dプリンターはものづくりに革命を起こす技術であると考えられてはいますが、近年の各企業に求められているのはSDGsの達成です。企業のサステナビリティはもちろん、社会や地球のサステナビリティにも貢献できるビジネスモデルを立ち上げることが、各企業には求められています。
そのため新技術を導入するにしても、企業は環境への負荷が小さく、なおかつ将来性に優れた技術でなければ、ビジネスとして有効活用されることは難しいでしょう。
3Dプリンターに求められているのは、そのような条件下でも導入に値する技術であることですが、結論から言うと、3DプリンターはSDGsの達成に貢献できる技術といえます。
廃材が出ないものづくりを実現するので、廃棄物が少なくなるのはもちろん、廃棄物を再利用する3Dプリント技術も登場しています。
また、最近は食品業界における3Dプリンター活用も進み、フードロスの削減はもちろん、自然環境への負荷を抑えて食品を生成できる技術にも注目が集まっているところです。
まだまだ発展途上の技術ではありますが、今後は3Dプリンターをフル活用しなければ、社会が求めるようなサステナビリティを企業が維持することが難しい時代になっていくかもしれません。
3DプリンターがSDGsに貢献している事例として、今回は三つのケースをご紹介します。廃棄物を使ったものづくりができる技術や、介護食を印刷する技術、環境負荷の低減と性能向上を実現するパーツ製造と、近未来の技術が活躍しています。
アメリカの3DプリンターメーカーであるDesktopMetal社は、木製のオブジェクトを製造する過程で発生するおがくずを再利用し、ラグジュアリーな木製品をカスタム製造するサービスを提供しています。
アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)と呼ばれる技術を採用しており、加工や仕上げのディテールも自在にコントロールできるのが強みです。
環境への負荷も考えられた、おがくずの再利用を高いレベルで実現し、新しい市場の開拓と環境保全の両立に向けて取り組んでいます。
山形大学では、見た目の美味しさを損なわない介護食の開発を、3Dプリンターで進めています。飲み込みやすさを重視した介護食は、ペースト状など見た目に食欲をそそるものではない場合が多い点が課題とされていました。しかし同大学の3Dプリンター技術によって、介護食としての食べやすさは残しつつ、見た目の美味しさを損なわない介護食の開発が可能になりつつあります。
この技術を使えば、要介護者の食欲増進だけでなく、材料を粉末保存ことによる期限の問題が解消される事でのフードロスの削減にもつながると期待されています。
航空機メーカーの米エアバス社は、3Dプリンター製の機体パーツを採用することで、パーツ製造に必要な原材料の消費量を90%も削減することに成功しています。
1機体を製造するときの総エネルギー消費量も、従来の方法と比べて90%減少し、明らかなコスト削減と環境負荷の低減が実現しています。
また、機体に使用するパーツの重量は、最小30%から最大50%まで軽量化しており、機体の速度改善や燃費向上にも貢献している点が驚異的です。
環境に配慮したものづくりは、環境負荷を抑える代わりに性能や生産性を低下させる、という固定観念がこれまでありました。しかし3Dプリンター技術の発展は、環境負荷の低減と性能向上を両立させる可能性があることを、エアバス社は証明しています。
3Dプリンターは業務効率化の側面が強調されていますが、実はSDGsの達成においても無視できない技術となりつつあります。
建設や製造はもちろん、医療や食品の領域においても一定の成果が見られており、将来的には3Dプリンターがあらゆる領域でなくてはならない技術として浸透するかもしれません。