ホーム3Dプリンター3Dプリンターの市場動向および今後の見通しについて解説

3Dプリンター Insight

3Dプリンターの市場動向および今後の見通しについて解説

レンテックインサイト編集部

3Dプリンター Insight 3Dプリンターの市場動向および今後の見通しについて解説

3Dプリンターは医療や自動車、建築、食品、航空宇宙などさまざまな業界で活用されています。本記事では最新の市場動向および今後の見通し、業界ごとの活用事例について解説します。

3Dプリンターの世界市場動向

3Dプリンターの世界出荷台数は2017年で27万台、2020年には36.4万台に達しています。2020年は新型コロナウイルス感染症の流行のため出荷台数が減少して伸び悩んでいました。
ただコロナ禍による影響は悪い部分だけではなく、サプライチェーンの分断の影響もあり、近場で部品製造ができる3Dプリンターが評価されるきっかけにもなっています。

樹脂3Dプリンター市場は主に2013年以降に形成されており、世界市場規模は2020年度の実績で680億円となりました。自動車や航空宇宙の分野では、試作品および最終製品の製作に活用されています。医療分野では、歯科インプラントや手術練習用の臓器の製作などでが活用されています。

金属3Dプリンターの世界市場規模は2019年度の実績で1300億円に達しています。欧米が60%以上の割合を占めており、日本は10%未満です。金属加工で一般的な切削や鋳造では実現できない形状を造形でき、少量多品種生産が容易になります。また部品点数を削減したり、リードタイムの短縮できたりすることも、3Dプリンターで製造する利点です。特に自動車や航空宇宙分野における高単価部品、医療分野での人工関節の部品の製造に活用されています。

IT Insight 3Dプリンターの世界市場動向

3Dプリンター市場の今後の見通し

産業用3Dプリンターの市場は2021年の21億米ドルから成長し、2026年には52億米ドルに達すると予想されています。その場合、年平均成長率は20.0%となります。樹脂向け、金属向けのどちらも市場規模が拡大すると期待されています。業界別では特に医療業界向け市場が高い成長率を遂げると予想され、3Dプリンターの低コスト化および医療用CAD/CAMソフトウエアの普及で多くの病院が3Dプリンターを導入するでしょう。医療以外の分野でも、産業グレードの軽量部品の製造にはプロセス特有のニーズに対応できるソフトウエアが必要となるため、専用CAD/CAMソフトウエアの市場も拡大すると予想されます。

3Dプリンターの加工方法別にみると、現在主流となっているPBF(粉末床溶融結合)方式のうち、電子ビームを使用するEBM方式が高い成長率を遂げると予想されています。設計の自由度が高く、高強度の部品を製造でき、不純物も少なくなるという利点があり、航空宇宙や医療などの部品の製造で実証されています。今後は装置の精度向上および高速化、材料開発の技術進歩に伴い、製造現場での量産化対応に向けた3Dプリンターの導入が進むでしょう。サポート材の除去などの後工程を省力化できる製品やサービス、高額な初期投資を必要としない3Dプリントサービスにも需要があります。

業界ごとの3Dプリンター動向

3Dプリンターを活用する業界として代表的な、医療業界、自動車業界、建設業界における、3Dプリンターの市場規模と活用事例をご紹介します。

医療業界

医療業界における市場規模は2021年に20.8億ドルに達し、2027年には55.9億ドルに達すると予想されています。主に外科用の切削器具、人口装具、骨や臓器などのレプリカの作成に使用されます。ほかにも再生医療における細胞の作成、医薬品の製造にも利用できると期待されています。高齢者人口の増加および癌や呼吸器および心血管障害の増加による有病率の上昇、再生医療や癌治療薬に対するニーズの高まりも、市場の拡大要因となるでしょう。

自動車業界

自動車業界における市場規模は2022年に29億ドルに達し、2027年には79億ドルに達すると予想されています。自動車に用いる複雑な部品について、複数部品の一体化による低コスト化、デザイン見直しによる軽量化、開発期間の削減といったメリットがあります。自動車業界は3Dプリンターによる製造に多額の投資をしており、3Dプリンター市場をけん引すると期待されています。

建設業界

建設業界における市場規模は2020年に3700万ドルに達し、2027年には32.0億ドルに達すると予想されています。モルタルや金属、樹脂を積層して建築物や家具を造形する建設用途の3Dプリンターが開発され、競争が激化しています。国内では主に大手建設会社を中心に研究開発が進んでいる段階です。欧米を中心とした海外でも開発が進められ、住宅団地を丸ごと建設するプロジェクトも立ち上がるなど、実用化に向けた取り組みが進んでいます。

幅広い業界において3Dプリンターの普及が見込まれる

樹脂向け、金属向けともに3Dプリンター市場は今後も拡大すると予想されています。新型コロナウイルスの影響で市場が伸び悩む時期があったものの、コロナ禍は3Dプリンターのニーズが見直されるきっかけにもなりました。今後はさまざまな業界で3Dプリンターが導入されるでしょう。これまでは試作品などごく一部での活用が主流でしたが、これからは3Dプリンターを用いた量産化も期待されています。3Dプリンターに馴染みがなかった方も、ご自身の業界での活用を検討してはいかがでしょうか。

3Dプリンター Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next