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3Dプリンターはなぜ精密な動作ができるのか?

レンテックインサイト編集部

近年の3Dプリンターは解像度が高く、精緻な造形が可能になっています。これはアクチュエーターによるノズルやステージの移動が精密に行われていることを意味していますが、このアクチュエーターの精密な動作を可能にしているのがステッピングモーターです。ステッピングモーターを使用するとなぜ精密な動作が行えるのか、また3Dプリンター以外では身の回りのどのような機器にこのステッピングモーターが使用されているのかについて解説します。

3Dプリンターはなぜ精密な動きができる?

3Dプリンターは3Dモデルを精密に出力することが可能ですが、この精密な動きを行うためにステッピングモーターが使用されています。

ステッピングモーターの構造は単純であり、動作はパルス電流により行われ、1パルス入力すると回転子が決まった角度だけ動きます。つまり、電流のオンとオフの信号であるパルス信号の制御を行うだけで高い動作精度が得られます。

3Dプリンターで出力する際には、x軸、y軸、z軸の三つの軸を動かしますが、この三つの軸はステッピングモーターにより動かされています。ノズルを3方向に動かす場合や、ノズルをx軸とz軸方向のみに動かし、y軸方向はステージを動かすなど3Dプリンターの種類により動作は異なりますが、基本的に1台の3Dプリンターには、動作用にステッピングモーターが三つ、さらにフィラメントの引き込み用にもう一つ、合計四つ使用されています。

3Dプリンターで使用される形状のデータは座標データの集合であり、溶けたフィラメントをノズルから押し出しながら指定された座標へとノズルが移動していきます。つまり、指定された座標へと正確に移動することが3Dプリンターの精度と直結しています。

このステッピングモーターの回転はノズルやステージを動かすためのアクチュエーターへと伝えられます。簡易的な3Dプリンターはベルトで力を伝え、ローラーによりヘッド部をアルミフレームに沿って移動させるという非常に簡素な構造をしていますが、この方式でも高い解像度が得られています。

ステッピングモーターは単純な構造をしているので価格も安く、一方で高精度な動作ができるために3Dプリンターには不可欠なパーツとなっています。

ステッピングモーターが精密な動作を行える理由

ステッピングモーターはパルス信号により回転子の角度が制御できるために、精密な動作を行うことができます。

ステッピングモーターは一般的なモーターと同様にモーター中のコイルに電流を流すことで動きますが、パルス電流により決まった角度だけ回転子が回転します。ステッピングモーターは巻線の巻き方により2相、3相、5相に分けられます。回転子の回転角度は相の数により異なり、1パルスで動かせる基準ステップ角は2相が1.8°、3相が1.2°、5相が0.72°となっており、相の数が増えるほど基準ステップ角は小さくなり制御は複雑になりますが、その分動きは滑らかになっていきます。

ステッピングモーターは回転角をパルス制御でき、パルスをカウントすることでどれだけ動いたかを知ることができます。もちろん、回転力が強い場合や急停止した場合に脱調が起こってしまい回転子が回転しすぎる恐れがありますが、基本的に脱調は起こりにくいといわれています。そのため何回転したかを確認するセンサーは必要ありません。ステッピングモーターは安価で信頼性の高いモーターとしてさまざまな分野で使われています。

パルス制御により回転数が正確に分かるということは、ステッピングモーターにより動くアクチュエーターの移動距離が正確に分かるということです。このときの移動精度は基準ステップ角により決まり、この精度が3Dプリンターの解像度に影響を与えます。

さまざまな分野で使用されているステッピングモーター

ステッピングモーターは3Dプリンターのほかにもさまざまな機器に使用されています。

例えば、3Dプリンターに似た機器にCNCマシンがあります。CNCとはコンピューター数値制御のことを指し、レーザーカッターやフライス加工機などさまざまな機器があります。一昔前の金属加工は職人の手作業により行われていましたが、近年ではデータを入力するだけで機器が自動的に加工を行います。この際の刃物やステージの移動にステッピングモーターが用いられており、3Dプリンター同様にステッピングモーターにより正確な動きがなされ、精密な加工を行うことができます。


ロボットの場合は、搬送、組み立て、塗装などさまざまな用途ごとに専用のロボットが作られており、関節や回転を行う部分には多くの場合ステッピングモーターが使用されています。

ロボットのように複数の関節を同時に動かすことで複雑な動きを生み出す一方で、ベルトコンベアの動作やコピー機におけるコピー用紙の紙送り用など、ローラーの動力にも使用されています。これらの用途では正確な搬送のための回転や、イレギュラー時の急停止する場合まで、ローラーのあらゆる動きに正確性が求められています。

ステッピングモーターを知れば3Dプリンティングがより面白くなる

ステッピングモーターはパルス信号により回転角を制御します。これにより、回転子をプログラミングされたパルス信号に応じた角度だけ回転できるので、正確な動作が可能になります。

3Dプリンターに限らず、プログラムに応じた正確な動作が要求される部分にはステッピングモーターが使用されています。ステッピングモーターを知れば3Dプリンティングをより深く理解できるとともに、3Dプリンティングがさらに面白くなります。

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