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3Dプリンター Insight

「3Dプリンター造形による風洞実験ソリューションサービス」がもたらす「一気通貫」と「精度向上」

レンテックインサイト編集部

3Dプリンター Insight 「3Dプリンター造形による風洞実験ソリューションサービス」がもたらす「一気通貫」と「精度向上」

2022年10月、パーソルグループで技術系エンジニアリング事業を手掛けるパーソルR&D株式会社(現パーソルクロステクノロジー株式会社)はオリックス・レンテック株式会社との協業による「風洞実験ソリューションサービス」開始を発表しました。

パーソルクロステクノロジー社が持つ3Dモデリングや実験、解析ノウハウとオリックス・レンテックの3Dプリンター造形技術。2社の得意分野を掛け合わせることで誕生したこのサービス。

その特長やメリット、モノづくりに与えるインパクトは何なのか。また、風洞実験ソリューションはなぜ今、自動車業界など産業界から必要とされているのか。
あらゆる現場で活用されるその可能性について、パーソルクロステクノロジー株式会社、技術開発統括本部の桑村 孝氏、高橋 英之氏に伺いました。

クロステクノロジーは、“「エンジニアリング」×「IT」で社会に提供できる範囲を広げ、価値を高める”こと

2023年1月1日、技術系エンジニアリング事業を手掛けるパーソルR&D株式会社が商号を変更する形で、パーソルクロステクノロジー株式会社は誕生しました。

その背景には、これまでメインだった自動車や航空機、家電などのエンジニアリングにITを掛け合わせることで、社会に提供できる範囲を広げ、価値を高めようという意図があると桑村氏。

設計・開発~実験、システムの運用まで一気通貫で提供することで、生産性向上やより幅広い技術の提供ができるようになるということです。

「これまで難しかったIoTや通信領域のご提案も可能です」(高橋氏)。

さらに、同社の特長として挙がったのが、設計・開発に加え解析、実験を専門に行うグループを保持しているということ。CAE(※)専門のサーバーを構え、流体、熱、衝突など幅広い分野の解析に対応する技術力が自慢と高橋氏は語ります。解析と実験の両方を一気通貫で行うと、解析結果をシームレスにフィードバックし試行錯誤のサイクルをスムーズに回せるようになります。それにより、円滑に精度の向上を図れるようになるのです。

また、モデルベース開発(MBD)、サイバーセキュリティなど講師レベルの経験者による人材育成も提供可能とのこと。

パーソルクロステクノロジー株式会社の創設にあたっては、エンジニア・クリエイターの派遣事業を行うパーソルテクノロジースタッフ株式会社、および両社の親会社であったパーソルプロフェッショナルアウトソーシング株式会社の吸収合併も行われました。

その結果、請負、フリーランス、派遣、などさまざまな形での機械、電気・電子、制御、実験のエンジニアやIT技術者の紹介が、それまでの約4倍の規模で可能になったということです。

※…CAE:Computer Aided Engineering。コンピュータを利用した実験・解析・シミュレーションおよびそのためのソフトウエア

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風洞実験ソリューションサービスがもたらす「一気通貫」と「精度向上」の威力

パーソルクロステクノロジー社とオリックス・レンテックが共同でスタートした「風洞実験ソリューションサービス」。
2020年、「省エネ法(※)」において乗用車やトラックの製造事業者が達成すべき新たな燃費基準が定められました。重量区分ごとの各目標年度(乗用車:2030年度、重量車:2025年度)における燃費改善率を達成するにあたって、空力特性の向上は大きく貢献します。

今回の「風洞実験ソリューションサービス」の特性は、3Dモデリングから模型の製作、実際の風洞実験、さらにその後の空力解析まで一気通貫で行えるという点にあります。実験の準備から解析までワンストップで任せることで、複数社とコンタクトを取る手間や工数を削減可能。国内に3、4カ所と風洞実験場は数が少なく、実験の日程は限られます。そこで大幅なスケジュール短縮につながるこのサービスがものをいう、と高橋氏。

また、模型の製作に用いられているのは3Dプリンター造形です。「従来のFRPハンドレイアップ造形では、樹脂を手作業で含浸させていくという特性上、どうしてもヘッドライトの角やフロントグリルの格子など細かい部分の精度が低くなりがちでした」と桑村氏。3Dプリンター造形を用いることで精度が飛躍的に向上し、計測結果の信頼性の水準を一段上のレベルへ高められるということです。

造形された模型は高精度3Dハンドスキャナーで測定され、模型の製作時に用いた「3D CADデータ」と精度が比較されることになります。さらに、実際の風洞実験で得られた計測データもフィードバックしながら模型の精度を改善することで、風洞実験の信頼性をさらに高めることが可能になります。

※…「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」の略称。工場等、輸送、建築物および機械器具等におけるエネルギー使用の合理化を推進するため、1979年に制定された。

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航空機、鉄道、自転車、ビル、ドローン……あらゆる現場で風洞実験が効力を発揮

風洞実験ソリューションがメリットを発揮するのは、自動車やトラックだけではありません。航空機、鉄道、自転車、ビル、橋……など、空力特性の観点は、空気中のものすべてに関係します。

例えば、倉庫や工場内でどのようにほこりが流れているのか、ドローンやオスプレイのような双発機は特定の風向きではどのような影響を受けるのか、姿勢制御は可能かを確認するためにも風洞実験は役立ちます。高層ビルのビル風問題や突風時に陸橋が受ける影響などにも国内のいくつかの風洞実験施設は対応可能。自動車においても車外だけでなく、車内冷暖房における温風・冷風の流れの検証なども行えます。

また、模型のサイズも原寸大から4分の1、8分の1など要望に応じて提案可能ということです。

風洞実験をしたいと思いつつも、実験設備への設備投資となるとコストの高さに躊躇される方は少なくありません。しかし、ソリューションとしてスポットでの利用が可能ならば、ハードルは大きく下がります。そのノウハウやベストプラクティスを知るために、風洞実験ソリューションサービスを利用してみるのも良いでしょう。

3Dプリンターによる造形を経て模型の精度や大きさを目の前で確認し、解析結果のフィードバックを繰り返すことで、実験のアウトプットは大きく向上するはずです。先行事例では、大型トラックの部品開発において3Dプリンターによるテストピース造形&フィードバックを繰り返すことで工数を削減しつつ品質を高める、樹脂クリップを直接モデルから製造することで金型製造のコストを丸ごとカットする、といった成果が得られているといいます。

「日本の3Dプリンター市場はまだまだこれから伸びていく段階です」(高橋氏)。

日本では既存の金型成型や部品加工において高度な技術力を持っているからこそ、3Dプリンター市場が伸び悩んだという事情があるとのこと。しかし、その技術力や手先の器用さは模型造形において大きなアドバンテージとなります。今回の風洞実験ソリューションサービスにおいても、その模型の精度は世界トップクラスです。

グローバルな市場で競争力を持つソリューションとして海外進出もしやすいと、桑村氏は意欲を示しました。

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風洞実験をいろいろな分野でもっと気軽にご活用いただきたい

多品種少量生産の需要増や開発スパンの短期化、カーボンニュートラルの義務化といった時代背景に、風洞実験ソリューションサービスは合致します。

設計から造形、解析まで一気通貫で行うことで工数は大幅に削減され、デザインをモデルとして再現することで根拠を伴った設計が可能になる、と高橋氏は語ります。

「風洞実験をいろいろな分野でもっと気軽にご活用いただきたい」(桑村氏)。

自社製品には関係がない、あるいはコストが高すぎて難しい。そんなイメージが3Dプリンター造形を活用した風洞実験ソリューションサービスにより覆る可能性は少なくありません。

今まで風洞実験に触れてこられなかった方も、ぜひ一度3Dプリンター造形による風洞実験ソリューションサービス活用の道を探ってみてはいかがでしょうか。

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