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金属3Dプリンターの強度、実態は?

レンテックインサイト編集部

3Dプリンタ Insight 金属3Dプリンターの強度、実態は?

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金属3Dプリンターを導入するにあたって、多くの方が気にしているのが造形物の強度です。金属3Dプリンターの技術が発達した現在でも、造形物の強度が低いというイメージが根強いようです。

金属3Dプリンターには「形状の自由度が高い」「1個からでも手軽に造形できる」など多くのメリットがありますが、実用化できない強度であれば用途が限定されてしまうため、不安に感じるのも仕方がないかもしれません。

そこで本記事では、金属3Dプリンターの造形物の強度は実際に弱いのか、実際の強度はどうなっているかを解説します。

金属3Dプリンターで使われる材料の強度

まずは、金属3Dプリンターで使われる材料に目を向けてみましょう。

金属3Dプリンターにはさまざまな造形方式がありますが、ほとんどの場合は粉末材料が使われています。例えば、最も主流であるPBF(粉末床溶融結合)方式は、素材となる金属粉末を敷き詰めてレーザーや電子ビームを照射し、熱で溶かした後に固めていく仕組みです。機種によって数値は異なりますが、0.02mm〜0.05mm程度の極めて薄い金属を積層しながら造形物を仕上げていきます。

金属3Dプリンターで使用されている主な金属材料は、以下の通りです。

  • マルエージング鋼(高強度特殊鋼)
  • SUS316L(耐食性ステンレス鋼)
  • インコネル718・インコネル625(ニッケル系耐熱特殊鋼)
  • AlSi10Mg(鋳造用アルミニウム合金)
  • Ti6Al4V(チタン合金)
  • Cu(純銅)

金属3Dプリンターや金属粉末のメーカーはこれらの材料の材料特性値を公表していますが、ほとんどの材料の特性値は従来の工法で使用する展伸材や鋳造材と同等です。したがって、使用する材料による強度への影響は少ないといえるでしょう。ただし、従来の工法に比べると材料の選択肢はかなり狭まってしまうため、用途や形状に応じて材料を選定しにくいという点はデメリットといえます。

金属3Dプリンターによる造形品の強度

次に、金属3Dプリンターによる造形後の強度を見ていきましょう。

金属3Dプリンターのメーカーは、他工法で作った製品との比較をデータシートとして公表していることがあります。それらを見ていると、金属3Dプリンターによる造形品の引張強度・耐力・伸びといった機械的特性は鋳造品や鍛造品と同等であることが多く、場合によっては上回ることもあるようです。金属3Dプリンターによる造形品の強度は、一般的な用途であれば量産品として十分に使用できるレベルに達していることが分かります。

一方で、繰り返し応力を受けた場合の疲労強度についてはデータとして現れていないことが多く、実際に他工法に比べると弱いケースがあることが指摘されています。金属粉末を熱で溶かして固めるという金属3Dプリンターの仕組みは溶接によく似ていますが、溶接部分の疲労強度が母材のままの部分に比べて弱い傾向にあるのと同じ理由です。そのため、長期間にわたって使用する部品や、過酷な環境で使用する部品のように、用途によっては既存工法からの置き換えが難しい場合があるといえるでしょう。

金属3Dプリンターによる造形品の強度は積層方向や残留応力によっても影響を受けることがあります。例えば、積層方向と同じ方向からの力には強く、横方向からの力には若干弱くなるといった形です。また、造形途中に熱収縮によって大きな応力が発生するため、熱変形によって造形物に割れが生じてしまうこともあります。

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金属3Dプリンター造形品の強度を高める方法

上述したように、金属3Dプリンターの強度は一般的な用途であれば十分に使用できるレベルに達しています。しかし、より用途を広げるためには、さらに強度をアップさせたり、安定した強度を確保したりしなければなりません。金属3Dプリンターによる造形品の強度を高める方法は、大きく二つあります。

一つ目は、後処理によって強度を高める方法です。よく使用されるのはHIP処理(熱間等方圧加圧)と呼ばれる熱処理で、高温環境下で圧力を加えることによって造形品の密度を高めたり、残留応力を除去したりできます。HIP処理は火力発電のタービンブレードやジェットエンジンのブレードを作る際にも行われており、金属3Dプリンターによる造形品の強度を高める場合にも役立ちます。

二つ目は、造形方法を改善して強度を高める方法です。金属3Dプリンターで造形する際に、向きを変えたり、形状を工夫したりするだけでも、強度がアップすることがあります。また、品質のバラつきを抑えるために、造形状態をモニタリングするのも効果的です。最近では、AIが造形中に品質を診断してリアルタイムでフィードバックすることによって、金属3Dプリンターの品質を改善する方法も開発されています。

金属3Dプリンターにおける強度の課題は解消されつつある

金属3Dプリンターの技術革新によって、造形品の強度は一般的な用途であれば問題なく使用できるレベルになっています。今後、より多くの製品が作られてデータが集まってくれば、強度が弱いというイメージは払拭されていくでしょう。

一方で、用途によっては強度に不安があることも事実であり、さらなる改善が求められています。より優れた特性を持つ材料が登場したり、金属3Dプリンターの性能が上がったりすることで、さらに用途が広がっていくのを期待しましょう。

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