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4Dプリンターとは? モノづくりの可能性はどう開かれる?

レンテックインサイト編集部

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ビジネス、個人利用を問わず、3Dプリンターがものづくりに与えたインパクトが大きいことに異論がある方はいないのではないでしょうか。
では、そんな3Dプリンターの「先」にある可能性、4Dプリンターについて皆さんはご存じでしょうか?
本記事では4Dプリンターの概要、そのものづくりに及ぼすであろうインパクト、現在の4Dプリンター・3Dプリンターを取り巻く状況についてご紹介します。

4Dプリンターは「時間によって変化する」 立体成型技術

4Dプリンターは平たく言うと、3Dプリンターに「時間によって変化する」という概念を取り入れた成型技術のことを指します。
縦・横・奥行に「時間」を加えた4次元(Dimension)に関わるため4Dプリンターといわれています。
例えば熱を加えることで元の形状に戻る形状記憶ポリマーを素材として用いるのが、4Dプリンティングの手法です。ほかにも水分や圧力、磁力、時間経過など何らかの外部環境の変化に対応して変化する「知能材料(インテリジェント材料)」を用いるのが4Dプリンティングの手法の一種です。

4Dプリンターの技術は2013年、マサチューセッツ工科大学(MIT)所属の研究者、スカイラー・ティビッツ氏が、あらゆる専門家がプレゼンテーションを行うTEDトークにて「The emergence of “4D Printing”(世界を変える4Dプリンティング)」という演題で紹介し、広く知られることになりました。

それから8年。3Dプリンティングが市場、そして個人にとって身近なものになるとともに4Dプリンティングの実用化もどんどん進んできています。

4Dプリンターの持つ4つの可能性

「4Dプリンターは実際のところ何の役に立つのだろうか」と疑問に思った方もいるでしょう。その可能性は想像以上に多岐にわたります。

環境に適応する

例えば太陽の方向に応じて角度を変える太陽電池や、生体に吸収される医療器具、周囲の環境によって剛性を変える自動車の外装などが4Dプリンターによって可能になるかもしれません。このように環境に適応して変化する新しいものを生み出せるのが4Dプリンターの最もユニークな可能性です。そのため、宇宙開発や医療、軍事といったさまざまな環境への適応を目指す分野からの注目を集めています。

自己保全・修復する

以前から形状記憶の性質を持つ素材は製品に応用されており、例えば衝撃を受けても元の形に戻る形状記憶メガネなどが代表的な例として挙げられます。そのように変化する性質を自己修復に応用するのが4Dプリンターの可能性の一つです。それらを4Dプリンターによって簡単に生み出せるようになれば、大きな実用性につながると言われています。

勝手に組み立てられる

自動的に組み立てられる家具、というのは4Dプリンティングのイメージで最も身近なものとしてよく例に出されます。組み立ては20世紀から続くものづくりにおいてロボットに代替されつつも多くの場合当たり前の工程として存在しました。4Dプリンターはその概念を覆すかもしれません。そしてそれはものづくりにおける生産性を大きく高める可能性につながります。

動力を生み出す

環境に適応し、変化する性質をさらに応用して、動力を生み出す可能性についても4Dプリンターでは言及されています。例えば水温の変化によって収縮、膨張を繰り返し、推力を生み出す潜水艦などはその可能性の一つです。他にも磁力を応用する、水分を吸って膨張する性質を利用するなど、変化を動力へつなげる手法はさまざまに研究されています。

第五次産業革命と4Dプリンティング

みなさんは第五次産業革命という言葉をご存じでしょうか。
軽作業の機械化による第一次産業革命、重工業の機械化による第二次産業革命、コンピューターの登場による第三次産業革命、人工知能やIoTを応用した現在進む第四次産業革命の先にある産業革命のことで、コンピューター技術とバイオテクノロジーを融合した技術がその中心となると言われています。

それによって生み出されているのが、クモの糸の遺伝子情報を応用した多様な特性を持つ繊維や、これまでにない衝撃耐性を持つ樹脂など。4Dプリンティングを前提として、例えば特定の環境下で指定の変化を起こす素材を生み出すことなども今後可能になってくるかもしれません。

これが、時代の流れと4Dプリンターがマッチしていると言われる理由です。実際、先に挙げた4Dプリンティングの先駆者であるスカイラー・ティビッツ氏も、生物の形態や機能にヒントを得る生物模倣(バイオミメティクス)をヒントに、変化を人間がプログラミングできる素材の開発・実用化に取り組んでいるそうです。

4Dプリンティングは日本の強みとなるか?

3Dプリンターの先にある技術、4Dプリンターの概要や意義、第五次産業革命との関係性についてご紹介しました。まだまだ実用化というよりは研究の段階にある技術ですが、世界的に論文数は増加しています。機能性材料の研究開発で国際競争力を持つ日本の産業にとって強みを発揮できる分野ではないかとも考えられます。
今のうちにぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

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3Dプリンター Insight

航空宇宙業界での3Dプリンター活用

レンテックインサイト編集部

2021年現在、多くの業界が3Dプリンターに興味を示しています。その中でも、3Dプリンターをいち早く活用しているのが航空宇宙業界であり、3Dプリンターのメリットを最大限に得ることに成功しました。

この記事では、航空宇宙業界で3Dプリンターが活用されている理由や活用事例を紹介します。

航空宇宙業界で3Dプリンターが活用されている理由

航空宇宙業界は3Dプリンターと相性がよく、他の業界よりも3Dプリンターの活用が進んでいます。なぜ航空宇宙業界で3Dプリンターの活用が進んでいるのか、理由をみていきましょう。

主な理由として、航空宇宙業界の部品は小ロット生産が多いことが挙げられます。たとえば、航空機やロケットは多種多様な部品で構成されていますが、各部品の必要量はそれほど多くありません。オーダーメイドで一つだけ作るといったことも頻繁に起こりますが、それらの部品を大量生産と同じ工法で作ろうとすると多額のイニシャルコストがかかります。また、航空宇宙業界の部品は高精度かつ複雑な形をしていることが多いですが、従来の工法で作ろうとすると生産工程が膨大になりやすいという課題もありました。

しかし、3Dプリンターであれば部品一つだけでも簡単に作ることができ、金型などのイニシャルコストも不要です。また、複雑な形をしている部品であっても、3Dプリンターだけで生産を完結することができます。精度に関しては、かつては3Dプリンターで造形した部品が航空宇宙のように過酷な使用環境に耐えられるのかと懸念されていましたが、3Dプリンター技術の進歩によって現在では十分な強度と精度で造形できるようになっています。

航空宇宙業界で3Dプリンターの活用が進んでいるもう一つの理由は、製品開発や保守管理サービスの課題を解消できることです。3Dプリンターを使えば新しく設計した部品を短期間で作って評価できるので、製品開発をスピーディに行えます。

また、航空機メーカーは航空会社などへの保守管理サービスのために部品の在庫を持っておく必要がありましたが、3Dプリンターであれば必要な時にだけ部品を作ればよくなります。さらに、特定の工場で作って輸送をしなくても、3Dデータさえ共有しておけば現地の3Dプリンターを使って部品を作れるため、輸送にかかる時間とコストが削減できるのです。

航空宇宙業界での3Dプリンターの活用事例

航空宇宙業界での3Dプリンターの活用事例を3つに分けて紹介します。上述したように、航空宇宙業界と3Dプリンターは相性がよく、メーカー各社はいち早く3Dプリンターを導入してきました。その結果、航空宇宙業界には3Dプリンターの活用方法を学ぶ上で参考になる事例が数多くあります。航空宇宙業界の方はもちろん、他の業界の方もここで紹介する事例を参考にして、自社のビジネスでも3Dプリンターを活用できないか検討していただきたいです。

航空機のさまざまな部品を3Dプリンターで製作

アメリカの大手航空機メーカーは、3Dプリンターで作った300個以上の部品を組み合わせたエンジンタービンを製造しています。使用する材料や構造を大胆に見直すことでエンジンタービンの軽量化を実現し、従来モデルと比較すると20%も燃費が向上したとのことです。

同社ではほかにも、従来工法では20部品で構成されていた燃料ノズルを3Dプリンターで作った一体型の部品に置き換えることに成功しています。それにより、部品の靭性は5倍以上になり、コスト効率は30%向上、重量は25%削減という高い成果を出しました。

地球環境への配慮やコスト削減の要求が厳しくなっている状況において、従来の工法を大幅に見直して3Dプリンターを有効活用する同社の取り組みは高く評価されています。

宇宙開発における3Dプリンターの活用

アメリカでは、宇宙開発において3Dプリンターが積極的に活用されています。たとえば、過酷な環境で稼働する火星探査機に3Dプリンターで作った約70個の部品を採用していることが発表されました。十分な耐久性を持たせるために設計されたオーダーメイドかつ複雑な形状の部品を作るためには、3Dプリンターが最適な工法だという判断です。

宇宙開発の分野では、宇宙ステーション内で必要な部品を現地で造形する実験や、ロケットの部品を3Dプリンターで作って低コスト化する実験が進められています。これらが実現すれば、宇宙が私たちにとって、より身近なものになるかもしれません。

3Dプリンターを活用したジェットエンジンの開発

日本国内でも、ジェットエンジンを開発する時に3Dプリンターが活用された事例があります。ジェットエンジンの部品は微妙な形状の違いで大きく性能が変わるため、最適な形状を導き出すためには膨大な数の試作評価をしなければなりません。従来は切削加工などの工法で部品を外注しており、仕様によっては100万円単位で費用がかかっていました。しかし、3Dプリンターを導入して部品を内製することで、外注にかかっていた膨大なコストを削減することに成功しました。また、3Dプリンターなら短時間で部品が作れるのでさまざまな形状を試しやすく、開発期間を大幅に短縮できたといいます。

ほかにも、部品の外注は情報セキュリティの観点から考えるとリスクですが、内製に切り替えることで機密情報が漏れる可能性が低くなるというメリットもありました。

航空宇宙業界の3Dプリンター活用事例から学びましょう

航空宇宙業界では、他の業界に先駆けて3Dプリンターが活躍しています。航空宇宙業界が3Dプリンターを活用して得られたメリットは、他の業界にも共通するものが多いです。自社の属する業界だけでなく、航空宇宙業界のように3Dプリンターの活用が進んでいる業界から学ぶことで、自社でも3Dプリンターを活用できないか考えてみてはいかがでしょうか。

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