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3Dプリンター Insight

3Dプリンターの精度を左右する要素

レンテックインサイト編集部

3Dプリンター Insight 3Dプリンターの精度を左右する要素

3Dプリンターを導入するときに注目するポイントの一つは、造形物の精度ではないでしょうか。3Dプリンターの精度は積層ピッチのみによって決まると思っている人が多いですが、実際は材料の収縮率や造形方法といったさまざまな要素が関わって3Dプリンターの精度が決まっています。

この記事では、3Dプリンターを活用するのであれば知っておきたい基礎知識として、3Dプリンターの精度に影響する主要な要素を4つ紹介します。

積層ピッチ

積層ピッチは、一般的なイメージの通り3Dプリンターの精度に大きく影響します。

3Dプリンターの造形方式はいくつかありますが、ほとんどの場合は材料を一層ずつ積み重ねることで徐々に形を造っていきます。その過程での一層あたりの厚みが積層ピッチです。Z方向(高さ方向)の厚みのことだと考えるとよいでしょう。

積層ピッチが大きいと造形物の密度が低くなるため、表面が粗く仕上がり均一な面を得られなくなります。寸法を測定するときには測定箇所によってバラつきが発生しやすく、寸法精度が悪くなりやすいです。

反対に、積層ピッチが小さければ表面が滑らかになり、均一な面を得やすくなります。どこを測定しても同じ寸法が出るので、寸法精度が良くなるのです。

積層ピッチが小さければ小さいほど表面は滑らかになりますが、一定の数値以下になるとほとんど違いが分からなくなります。また、積層ピッチが小さいと造形に時間がかかるというデメリットもあるので、高さのある造形物を造るのに適さない場合もあります。積層ピッチが小さい3Dプリンターが必ずしも優れているというわけではないので、覚えておきましょう。

積層ピッチは、3Dプリンターのスペック表では積層ピッチ0.01〜0.4mmといった形で明記されています。積層ピッチという表現ではなく、層の厚さ、Z軸解像度、レイヤー高さなど別の表現がされていることもあるので、注意してください。

X-Y方向の精度

上述した積層ピッチはZ方向(高さ方向)の精度に関わるものですが、X-Y方向(縦-横方向)の精度も重視しなければなりません。

積層ピッチと同様にX-Y方向の精度が高ければ均一な面を得やすくなり、寸法精度が良くなります。いくら積層ピッチが小さくても、一層ずつのX-Y方向がずれていると表面が滑らかには仕上がらないため、積層ピッチとX-Y方向の精度は密接に関わっています。

X-Y方向の精度も3Dプリンターのスペック表に明記されているケースがほとんどです。機種によってDpiやmmで表現されており、Dpiの場合は数値が高い方が、mmであれば数値が小さい方が精度は高くなります。

ただし、積層ピッチと同様にX−Y方向の精度が高くなると造形に時間がかかるというデメリットがあることは覚えておきたいです。

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材料の収縮

多くの3Dプリンターでは樹脂を材料として用いていますが、樹脂は熱による収縮が発生するので、造形物の精度に大きく影響します。

樹脂の体積は温度が高いほど膨張し、低いほど収縮するという特徴があります。3Dプリンターでは樹脂を高温で溶かしてから積み重ねていくので、膨張した状態で造形が行われますが、造形後には樹脂が冷えて収縮します。その結果、造形中と造形後で寸法が変化してしまうのです。

樹脂の収縮は累積していくので、大きい造形物の方が寸法の変化が大きい傾向にあります。また、樹脂の収縮は寸法に影響を与えるだけでなく、造形物の形状によっては反りなどの変形を引き起こす可能性も高いです。

樹脂加工では、それぞれの樹脂の収縮率を考慮した上で加工が行われています。例えば、金型を用いた射出成形の場合、金型のサイズは樹脂の収縮率を考慮して製品サイズよりも若干大きめに設計されており、収縮後に狙い通りの寸法に近づける工夫がされているのです。

3Dプリンターで高精度に造形するためには、樹脂の収縮率を考慮して収縮を抑制する工夫が求められます。次に挙げる方法が一般的です。

  • 収縮率の小さい材料を使用する
  • 精密な温度管理ができる機種を選定する
  • 大きい造形物は分割して造形して後で組み立てる

造形方法

3Dプリンター自体のスペックだけでなく、造形する人の工夫次第でも精度は高められます。

例えば、3Dプリンターの動く速度を落とせばブレが小さくなるので、造形物の精度が高くなる傾向にあります。現状、3Dプリンターの用途は試作開発用が主流のため、造形速度が多少遅くなっても大きな影響はないというケースも多いでしょう。あえて速度を落として造形することで精度を高めるというのは、簡単かつ効果的な手段だといえます。

その他にも、造形する向きを変えるだけで精度が高くなることもあります。例えば、土台との設置面積が広い方が造形時に安定して変形などのリスクを抑えられるでしょう。また、3Dプリンターでは造形物を支えるサポート材が付きますが、サポート材の除去に失敗して表面が粗くなることもあります。サポート材がなるべく付かない形状に設計変更する、サポート材が少なくなる向きで造形する、除去しやすいサポート材を使う、といった工夫でも、仕上がりの精度が大きく変わる可能性があります。

3Dプリンターの精度を高める要素を抑えましょう

3Dプリンターの精度は積層ピッチだけで決まるのではなく、さまざまな要素が影響しています。従来の工法に比べると3Dプリンターでの造形はまだまだ精度が悪い傾向にありますが、工夫次第では十分な精度で造形できるでしょう。

この記事で紹介した3Dプリンターの精度を高める要素を抑えて、自社のモノづくりに役立てていただきたいです。

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