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3Dスキャナによる製造業のデジタル化

レンテックインサイト編集部

3Dプリンター Insight 3Dスキャナによる製造業のデジタル化

製造業のデジタル化を支える技術として、3Dスキャナが注目を集めています。設計や検査で3Dモデルを活用する機会が増えている昨今の製造業において、現物を3Dモデルに変換できる3Dスキャナの導入メリットは大きいでしょう。

この記事では、3Dスキャナの仕組みや製造業での活用方法を紹介します。

3Dスキャナとは?

3Dスキャナとは、現実の立体物の表面形状を計測することで3Dモデルに変換する技術や装置のことを指します。

3Dスキャナ自体は真新しい技術ではなく、2000年代から活用されていました。しかし、近年になって3Dモデルから現実の立体物を出力する3Dプリンターの需要が高まった影響もあり、3Dスキャナの普及が進んでいます。3Dモデルをアウトプットする技術が3Dプリンターであり、インプットする技術が3Dスキャナだといえるでしょう。

3Dスキャナには大きく分けると接触式と非接触式の2つの方式があります。昔の3Dスキャナは接触式が中心でしたが、現在では取り扱いのしやすい非接触式の技術が発展してきました。さらに、計測精度がアップしたり、持ち運びしやすいハンディタイプが登場したりするなど、3Dスキャナは進化を続けています。

3Dスキャナで計測する仕組み

上述した通り、3Dスキャナには接触式と非接触式の2つの方式があります。各方式でどのように計測が行われるのかを紹介します。

接触式では、センサや探針(プローブ)を計測対象物に接触させて表面の凹凸を検知し、接触点の3次元座標を取得することで3Dモデルに変換します。非接触式に比べると計測精度が高いのが特徴です。

しかし、基本的に人がセンサや探針を持って計測対象物に当てながら動かす必要があるため、計測に時間がかかる、人によって結果が変わりやすい、といった点がデメリットです。他にも、微細な形状や入り組んだ形状などセンサや探針が入り込めない形状は測定できないことや、サイズが大きすぎると測定が難しいことなど、接触式にはさまざまな課題があります。現在は使いやすい非接触式の技術が進化しているため、接触式の需要は徐々に少なくなっていくでしょう。

非接触式は、レーザー光などを計測対象物に照射し、反射した光をセンサで取得して距離を測ることで3次元座標を取得します。この時の距離の測定には、三角測量の手法がよく用いられています。三角測量は、一辺の長さとその両端にある二つの角度が分かれば三角形が成立し、測定したい点の距離が分かるという性質を利用したものです。

非接触式の3Dスキャナは、直接計測対象物に触れる接触式に比べて精度面での課題がありましたが、近年では高精度化しています。取り扱いがしやすく、計測対象物の制限も少ないことから、3Dスキャナの主流は非接触式になっていくでしょう。

非接触式には据え置き型とハンディ型の2種類があり、用途によって使い分けられています。例えば、検査工程で使用する場合、初品検査のように高精度な計測が求められる状況では据え置き型を採用する傾向にあります。一方で、工場の生産ラインで動きながら計測する用途ではハンディ型が採用されています。据え置き型は精度が高いが取り回しがしにくい、ハンディ型は取り回しがしやすいが精度は少し低くなる、と覚えておきましょう。

非接触式の3Dスキャナは優れたものですが、いくつか注意点もあります。光を使って計測するため、黒色や透明で光を反射しないものや、光沢があるものを計測するためには除光液などを塗布しなければなりません。また、非接触式であっても操作する人のスキル次第で計測結果は大きく異なります。3Dスキャナを最大限に活用するためには、計測対象物に合わせたマニュアルの整備や3Dスキャナの特性の理解といった、運用システムを確立することが重要だといえます。

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製造業における3Dスキャナの活用方法

3Dスキャナは製造業のさまざまな場面で活用されています。

代表的な用途が、検査工程です。立体物の製品の寸法を計測するために、3Dスキャナの技術が使われています。3Dスキャナであれば複雑な形状の製品であっても効率よく正確に計測できるため、品質管理をする上で欠かせない技術となっています。最近では、設計時に作った3Dモデルと3Dスキャナで計測した現物の3Dモデルを重ね合わせ、差異を見ることで不具合要因を素早く特定するという使い方もされています。

また、3Dスキャナの用途として注目を集めているのが、設計のデジタル化です。例えば、2D図面しかない製品や図面が残っていない製品を3Dスキャナによって3Dモデル化するというもので、既製品の分析によって技術ノウハウを蓄積したり、新製品開発に生かす目的で行われています。これはリバースエンジニアリングとも呼ばれる開発手法であり、製造業の課題である技術ノウハウの継承を解決できるかもしれません。

3Dスキャナは3Dプリンターを組み合わせることでより効果を発揮します。3Dスキャナによって作成した3Dモデルを基に設計を行い、3Dプリンターですぐに出力して評価するというサイクルを回せば、開発スピードは飛躍的に早まります。3Dスキャナを導入することで、企業の設計業務は進化を遂げることができるでしょう。

3Dスキャナの活用が製造業のデジタル化に役立つ

この記事では、3Dスキャナの技術や製造業での用途などについて紹介しました。3Dスキャナは検査や設計といった製造業の業務で活用でき、それぞれの業務を進化させられる可能性があります。製造業にとって3Dモデルの活用が今後重要になってくると予想できるため、3Dスキャナの導入を検討してみてはいかがでしょうか。高精度でかつ導入しやすい価格の3Dスキャナも登場しているため、活用していきたいものです。

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