3Dプリンター Insight

製造業を大きく変える可能性を持つ3Dプリンターの最新動向

レンテックインサイト編集部

3Dプリンター Insight 製造業を大きく変える可能性を持つ3Dプリンターの最新動向

製造業のプロセスに革新を与える技術として注目されている3Dプリンター。低価格の3Dプリンターが登場した2013年頃から注目され続けている一方で、2021年になった今でも、試作品向け、一品物向けといった限定的な使い方しかできないイメージが強いように感じられます。

この記事では、3Dプリンターの市場動向や技術の発達、3Dプリンター関連の新たなサービスなど、製造業における3Dプリンターの最新動向について解説していきます。

3Dプリンターの市場は順調に成長する見込み

IDC Japanの調査によると、2019年の国内3Dプリンター市場は前年比3.6%増の約170億円と増加傾向にありました。しかし、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う販促機会の減少などの要因によって2019年の実績を大幅に下回ると予測しており、市場規模は約160億円まで縮小するとみています。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大は、3Dプリンターの今後の利用範囲を広げる要因にもなりました。1ステップで製品や部品を製造できる3Dプリンターは、サプライチェーンの断絶といった緊急事態への柔軟な対応力を発揮します。

例えば、コロナ禍では医療現場への支援としてマスクやフェイスシールド、人工呼吸器の部品などを製造するために3Dプリンターが活用されました。また、3Dデータを渡すだけで製造を開始できる3Dプリンターで部品調達を行ったり、一時的な代替部品を製造したりといった活用事例が国内外で多数みられました。

IDC Japanの調査では、3Dプリンターの有用性が再認識されたことによって2021年以降の3Dプリンター市場は順調に成長すると予測しており、2024年には約240億円になるとみています。

国外に目を向けると、3Dプリンター市場はアメリカが牽引していますが、今後は中国や韓国などのアジアでの急成長が期待されています。特に自動車分野で3Dプリンターの需要が高まると予想されており、試作品や治具だけでなく、量産品に使用される事例もみられるようになってきました。

多品種少量生産に適しており、変化への対応力も併せ持つ3Dプリンターの市場は今後も順調に成長していくと見込まれています。

3Dプリント技術の発達

3Dプリンターの技術的課題としては、造形スピードが遅い、精度が悪い、強度が低いなどが挙げられます。既存の製造技術に比べるとまだまだ劣っている部分もありますが、3Dプリント技術の発達によって課題を克服するものも登場しています。

精度が悪いという課題に関しては、アメリカのBMF社が開発した3Dプリント技術が高精度の造形を実現しています。一般的な3Dプリンターでの造形精度は加工公差で±100μ程度ですが、BMF社は樹脂部品の加工公差を±10μから25μまで大幅に縮小することに成功しました。その上で、実用的な造形サイズと造形スピードを保っており、精密な医療機器や電子部品、マイクロ機器の製造を目指しています。

強度が低いという課題に関しては、アメリカのCarbon社が開発した新たな造形方式が高強度の造形を実現しています。一般的な3Dプリンターは積層方式であり、上からの力には強いが横からの力には弱いため、部位によって強度が異なるという問題がありました。Carbon社は独自の3Dプリント技術「DLS(デジタル光合成)プロセス」によって異方性がなく均一な強度の造形物を作り出すことができます。また、「プログラマブル液状樹脂」と呼ばれる材料を用いて造形後に熱を加えることで、さらに強度を高めることができます。

Carbon社は3Dプリント技術を発達させているだけでなく、3Dプリンターの稼働状況や異常検知といった見える化やリモートメンテナンスのサービスをサブスクリプションモデルで提供するなど、サービス面も充実させています。

金属3Dプリンターにおいては、従来の造形方式では造形が難しかった銅やタングステンを造形する技術が開発されています。導電性の高い銅は電子部品として、高融点のタングステンは耐熱部品としてそれぞれ需要が高く、3Dプリンターでの造形が実現すれば広範囲で活用されることが予測できます。

また、金属3Dプリンターの品質保証技術を高めることも重要なテーマとなっています。特に航空・宇宙分野では高品質かつ高歩留まりの部品製造が求められるため、製造プロセスのモニタリングと製造条件へのフィードバックが必要です。レーザー照射による金属溶融・凝固現象の観察やシミュレーション技術、組織・熱変形予測の理論構築などの基礎研究が進められています。品質保証技術が確立されれば、自動車分野などへの展開も期待できます。

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3Dプリンター普及のためのサービス

製造業全体で3Dプリンターの有用性は認知されつつありますが、高性能な機器だと非常に高価であり、自社で導入するとなるとハードルが高いのが実状です。また、3Dプリンターで製造できる形状や品質が自社の求めるレベルに合致するかを確かめたいという要望も強くあります。

3Dプリンターが広く普及するためには、これらの課題を解消する必要があるといえるでしょう。そこで、オリックス・レンテック㈱では、3Dプリンター事業として造形受託サービスと導入支援サービスを提供しています。

造形受託サービスは、お客さまから頂いた3Dデータを基にして試作品を受託製造したり、研究開発を支援するサービスです。金属と樹脂の高性能な3Dプリンターを保有しており、造形から後処理まで一貫して対応しています。お見積もり時に造形検討結果連絡書を作成し、あらかじめどのような仕上がりになるかを把握することができるので、安心してご利用いただけるサービスです。

導入支援サービスでは、お客さまが自社に3Dプリンターを導入する上で必要な技術や作業を技術員専属で体験していただけます。導入後に使いこなせないといったことがないように、3Dプリンターを活用するための基礎知識を身に着けることが可能です。また、3Dプリンターのレンタルサービスも提供しており、リーズナブルな料金で3Dプリンターを提供しています。

製造業での3Dプリンター活用は確実に進んでいる

この記事で見てきたように、製造業における3Dプリンターの市場は拡大傾向にあり、量産品としての採用事例や3Dプリンター関連サービスも徐々に登場しています。試作品や一品物にしか使用できないというイメージを改めて、3Dプリンターを活用して自社の製造プロセスに革新を与えることができないかを検討してみるのはいかがでしょうか。

3Dプリンターの動向は日々変化しています。この記事を参考にしつつ、製造プロセスを大きく変える可能性のある3Dプリンターの最新動向に注目していただきたいです。

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