3Dプリンターの登場により設計、製造の現場は大きく変化しています。 商品の企画、試作、量産までの流れを変えるだけでなく、製造現場の環境をも変えるようになりました。近年、商品開発のサイクルは以前と比べて遥かに短くなっています。 それに対応するためにも、3Dプリンターの利用は製造業にとって欠かせないものとなっています。 そこで、本記事では3Dプリンターの最新事情や、利用による効果などを紹介していきます。
3Dプリンターが開発されたのは1980年代になります。それから1990年代にかけて各種方式による3Dプリンターが開発されました。3Dプリンターの方式には大きく分けて以下のようなものがあります。
3Dプリンターは、2000年代中ごろまで、1台数百万円するなど高価格なものが一般的でした。 しかし、基本特許が切れた2009年ごろから安価な製品が出始めます。今では家庭でも使用できる、 小型で数万円程度のモデルも発売されています。造形精度も年々上がり、金属材料やエンジニアリングプラスチックによる造形も可能になってきました。
また、3Dプリンターで造形するモデルデータを作ることに欠かせない3DCADについても、以前と比べて大きく変わっています。 PCの処理性能が上がり、高性能でありながら安い導入コストで使用できるソフトが増え、気軽に利用できるようになっています。 今や、各自の机の上で3Dモデルを設計し、それをそのまま自らの机の上で造形して試作品、もしくは完成品を造ることが可能になってきているのです。
何か新たな製品を作ろうとした場合、製品の種類や企業によっても異なりますが、企画、仕様検討、試作、量産試作と進んでいくのが一般的です。 まず、ラフスケッチや参考資料を基に製品企画が練られ、価格や搭載する機能、数値的なスペックなどの仕様が検討されます。 続いて、決まった仕様を基に試作品の設計、製作が行われ、テスト、仕様の再検討が繰り返し行われます。 試作で問題がなければ、金型を設計するなどして実際の製品に近い量産試作の段階に入ります。ここでもテストは繰り返し行われ、場合によっては試作段階に差し戻されることもあります。 こうして全て問題がなければ、新たな製品として世に出ていきます。 このような一連の製品開発のサイクルで、試作品の製作には多くの時間が必要となります。試作品用の図面を作成した後、内容の承認を受けて製作工場へ送付。 でき上がってきた部品を取り付けてテスト。その結果を基に新たに設計して再度部品の製作が繰り返されます。 部品の製作は、簡単なものならば数日でできますが、複雑な物になると数週間かかるような場合もあります。その間は試作品のテストも止まり、その分開発期間が遅れていきます。
同様なことは、生産ラインでも起こります。例えば、製品の加工や組み立ての際には、加工位置や取り付け位置の決定や、安全に作業が行えるように部品を固定する治具が多く使用されます。 治具はキズや摩耗などにより使用できなくなるので、新たに製作しなければなりません。予備の治具がない場合は新たに発注するので、製作に時間がかかります。 また、仕様の変更があった場合は治具そのものが変わることになるので、治具用の新たな図面を作成して製作することとなります。 新たな治具ができるまで生産ラインは停止し、生産計画に大きなズレが生じることになります。
3Dプリンターがあれば、このような問題を解決できます。3Dプリンターなら、簡単なものなら数時間、複雑な物でも1日ほどあれば3Dデータから部品を造形できます。 試作用の部品であっても、生産ラインに使用される治具であっても、従来とは比べものにならない早さで用意できます。 コストについても、一つ一つ製作を依頼して作るのに比べて低く抑えることができます。精度に関しても、そのままでも十分な精度で製作可能であり、より高精度を求める場合も追加工を施せば対応可能です。
また、製品企画の段階においても、ラフスケッチではなく3DCAD上で360度方向からバーチャルに考え、実際に3Dプリンターで造形することで、見て触りながら企画を練ることができます。 企画段階からより現実的な製品開発が可能となります。これにより、試作段階で検討する項目を減らし、試作回数を削減できる可能性もあります。 3Dプリンターにより、設計開発、製造の現場が大きく変わることになるのです。
近年、製品の開発サイクルは、以前とは比べものにならないほど短期間になってきています。この早さに対応するためには、3Dプリンターはなくてはならないものです。 3Dプリンターにより試作開発の時間を短縮し、生産ラインの停止を最小限に抑えることは、これからの製造業にとって生き残るための必要不可欠な策といえるでしょう。 今こそ3Dプリンターの導入を検討するときです。また、今すぐ導入ができないとしても、業務用ハイエンドクラスの3Dプリンターを使用した3Dプリントを外注するサービスも各種あります。 レンタルで3Dプリンターを導入して、その効果を試すことも可能です。さまざまな方法で3Dプリンターの積極的な利用を検討してみてください。